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2008/04/01号◆スポットライト「平坦および陥凹型大腸腫瘍がスクリーニングを変える」

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2008/04/01号◆スポットライト「平坦および陥凹型大腸腫瘍がスクリーニングを変える」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月01日号(Volume 5 / Number 7)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

平坦および陥凹型大腸腫瘍がスクリーニングを変える

大半の癌と異なり、結腸直腸癌は多くの症例で予防可能であると考えられている:すなわち結腸や直腸にみられる多くの悪性腫瘍は、これらの臓器の上皮や粘膜に腺種、つまり非癌性腫瘍として何年も前から発生していたものというのが一般的に考えられている見解である。これらの腺種を早期に発見して切除することが結腸直腸の新生物(癌)に対するスクリーニングの基本である。

これまで、医師は内視鏡による大腸スクリーニングにおいて腺種性ポリープ(粘膜から隆起した腫瘍)の発見とその切除を重要視して来た。しかし、平坦な(高さが直径の半分以下)、または陥凹型腺種(後で登場する非ポリープ型腫瘍を指す)のほうがむしろ前癌病変や癌を発生しやすく、そして、この病変はこれまで考えられていた以上に一般的であることが最近のエビデンスによって示唆されている。

(画像省略)

Journal of the American Medical Association (JAMA)誌に掲載された最近の研究で、研究者らは、結腸直腸腫瘍のスクリーニング、精密検査、または症状のために大腸内視鏡検査を受けた1,819人の患者について調査を試みた。平坦あるいは陥凹型病変(非ポリープとして知られる)の比率は発見された腺種全体のわずか9%強であったが、発見された新生物(癌)の約15%にのぼり、さらに一連の患者におけるハイグレード異形成と粘膜下浸潤腺癌の54%を占めていた。

一般的に非ポリープ型腺種から発生した進行癌は、ポリープから発生したものと見分けがつかない。「もしわれわれが検査をしなかったら、もし[非ポリープ型腺種]を見逃していたら、その中の一部は浸潤癌となっていただろう。そして、それらは大きな浸潤癌に変貌していった可能性があり、そのときにはすでに癌がどこから発症したものかもわからないだろう」と、JAMA誌の研究の代表著者であるVAパロ・アルト・ヘルスケアシステムおよびスタンフォード大学のDr. Roy Soetikno氏は述べる。

一般人における非ポリープ型結腸直腸新生物(NP-CRN)の全有病率は明らかでなく、これらの病変が一般的なポリープよりも増殖や再発が早いかどうかは研究者らに知られていない。JAMA誌の総評においてオレゴン健康科学大学のDr. David Lieberman氏は、スクリーニングで見落とされたポリープ型および非ポリープ型腫瘍は「中間期癌についての最も一般的な説明の典型であるかもしれない」と記している。中間期癌とはつまり、大腸内視鏡または他のスクリーニング検査のスケジュールの間をぬって発症する癌である。

しかしながら、国立衛生研究所の疾患予防の副所長であるDr. Barry Kramer氏はこう説明する。「われわれには本当にわからないのです。なぜかといえば、これらの病変の自然史(発生の経緯)を明らかにする手がかりすらないからです。現時点でのデータはすべて横断的研究によるものです。要するに、大腸内視鏡やS状結腸鏡を行った時にはじめて認められた目の前の腫瘍についてのデータしか持っていません。もし我々がそれらを見つければ、[スクリーニングと同時に]切除してしまうでしょう。するとわれわれは、学ぶすべを失うことになります。少なくとも、切除することで、どこから発生したものかを突き止めることはできなくなります」。

「それが、現時点でわれわれの知識におけるギャップです」と彼は続ける。「陥凹型病変と、普通の[ポリープ型]腺種の遺伝子型に相違が存在するかどうかを知ることも有用でしょう。もし相違があるなら、病変の性質を予測するのに役立つかもしれません。そして、それは重要な研究領域です」 。

研究者が共通して認識しているNP-CRNの2つの特徴とは、それらを発見することが困難である、そして切除はより困難であるということである。腸壁からきわめて容易に切り取ることが可能なポリープとは異なり、NP-CRNの切除においては粘膜切除(EMR)と呼ばれる複雑な手技を経る必要があるのです。

日本人の内視鏡医と共に訓練することと、NP-CRN症例のビデオを見て学ぶことにより、Dr. Soetikno氏のチームはNP-CRNの特徴的な所見を探す方法を学んだ。その特徴とは、少し赤みを帯びている、血管網が変化あるいは消失している、出血しやすい、そして腸管壁の変形を認める事である。興味を持つ医師であれば誰でもその病変を認識することができると彼は確信している。「その色や形の変化を自分に染み込ませなければなりません。もし、[トレーニング]ビデオを見る時間を取り、その特徴を自ら徹底的に覚えようという気持ちがあれば、誰でも身につけられます」 。

彼の研究グループは、米国消化器内視鏡学会を通して、興味のある内視鏡医にトレーニング教材を無料で提供できるように計画中である。「これらの平坦な病変を見つける事の恩恵を受ける為には、粘膜切除(EMR)の技術もまた広く行き渡らせる必要がある」と彼は述べた。

もう一つのスクリーニングテストであるバーチャル内視鏡(CTコロノグラフィーとしても知られている)も近年臨床試験で検証されている。それはCTを用いて消化管を侵襲なく画像化するものである。

全く平坦あるいは陥凹型病変の発見において、どのようにCTコロノグラフィーを最適化できるかについて研究者らのあいだでは議論されている。一方、ウィスコンシン医療センター放射線科准教授Dr. Perry Pickhardt氏は「JAMA誌の論文は、平坦あるいは陥凹した病変は我々が日常的に目にしているものであり、現在の技術を用いれば発見はそれほど難しいことではないということを述べています。必要なことは意識を持つことである、それが非常に重要なメッセージなのです。このことを知ってください」 。

「われわれは、まだ大腸内視鏡とCTコロノグラフィーの両方を最大限に活用する技術を開発している途上です。[非ポリープ型病変]が存在すること、そして、それが比較的多く発生することが認識されつつあります」と、Dr. Kramer氏は述べる。

「未来の結腸直腸腫瘍のスクリーニングとは、すべてのポリープ型、非ポリープ型腫瘍病変を発見し切除することです。米国における平坦あるいは陥没型病変の存在と重要性を示すデータを得ることによって、われわれはすべての内視鏡医に警鐘を鳴らすことができるのです」と、Dr. Soetikno氏は述べた。「患者、その紹介医、そして保険会社は、われわれが患者に健康証明書を手渡す際、いかなる悪性腫瘍の見落としもないことを期待しているのです」 。

— Sharon Reynolds

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野中 希 訳
鵜川邦夫(消化器科・内視鏡) 監修
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