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2008/04/01号◆癌研究ハイライト

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2008/04/01号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月01日号(Volume 5 / Number 7)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

ホルモン補充療法による乳癌の再発増加が臨床試験で示唆

乳癌治療を受けた患者におけるランダム化臨床試験の長期追跡データにより、ホルモン補充療法(HRT)を実施すると乳癌の再発リスクまたは対側乳癌(反対側の乳房にできた新しい癌)のリスクが有意に上昇することが示された。3月25日にJournal of National Cancer Institute (JNCI)誌オンライン版によると、更年期症状の治療目的でHRTを受けた患者は、同症状に最良の非ホルモン性治療を受けた患者に比べ、乳癌再発または対側乳癌のリスクが2.4倍となることが分析で明らかとなった。

これはスカンジナビアで行われたHABITSと呼ばれる臨床試験で、中間報告でHRT群の患者における乳癌リスクが3.5倍と示されたことから2003年に中止となった。この長期分析は442人の患者について行い、追跡期間の中央値は4年であった。HRT群は221人で、39人に「乳癌イベント」が発生した。一方、対照群221名では17名であった。

研究の主著者であるロンドン大学キングスカレッジ医学部のDr. Lars Holmberg氏と共同研究者らは、この結果より、「(HRTが)乳癌を誘発・悪化させるだけでなく、乳癌生存者における微細な腫瘍の成長を刺激してしまうことが示唆される」と結論づけた。

いくつかの観察研究ではHRTを受けた乳癌生存者における乳癌再発率の上昇は認められていない。しかしながら著者らは「そういった観察研究の大部分は、バイアスや交絡を十分にコントロールできるような正規の研究と言えない」と主張している。

さらに、HABITSとほぼ同時期にスウェーデンで実施された同様のランダム化臨床試験では、HRTと関連して乳癌の再発リスクが減少することが示された。HABITSに参加した患者の多くでHRTレジメンでは強力な黄体ホルモン薬が使用されているなど、2つの臨床試験には研究デザインの相違がいくつかあり、そのことが結果の相違につながっているだろうと研究者らは述べている(本試験ではHRTのタイプについてまったく指示されていない)。

JNCIの関連解説記事において、カナダ・トロントのサニーブルック・オデットがんセンターのDr. Kathleen Pritchard氏は、HABITSのデータには説得力があると指摘している。

「(乳癌生存者における)HRTの有害な副作用が、今日のスタンダードである小規模のランダム化臨床試験、それも比較的小さないくつかの国で実施された試験により、ついに明らかになった」とDr. Pritchard氏は書いている。

ワクチンを用いたマウスの乳癌治療

人体の免疫システムを刺激して癌を侵入者と認識させるようデザインされた治療ワクチンが、マウスにおけるある種の進行乳癌の腫瘍根絶に効果を発揮した。この研究結果は3月15日付けCancer Research誌で発表された。

NCI癌研究センターのワクチン科のDr. Jay Berzofsky氏率いる研究チームは、neuと呼ばれるタンパク質の一部を発現するよう改造したアデノウイルスを用いてワクチンを設計した。Neuはヒト上皮増殖因子-2(HER2)に対応するタンパク質で、乳癌患者の20~25%で過剰に発現される細胞表面レセプターである。

高レベルのneuタンパクを発現する腫瘍を形成させる目的で、TUBOというマウスの乳癌細胞をマウスに接種した。TUBO細胞およびワクチンを同時に接種すると腫瘍は形成されなかった。TUBO細胞接種後にワクチンを接種した場合は小規模の腫瘍が形成されたが、45日以内に消失し、再形成されることはなかった。

腫瘍が大きいほど、ワクチンが誘導する免疫応答により腫瘍を縮小・消失させることが困難であった。2cm3までの腫瘍はワクチン接種後1週間のあいだ成長を続けたが、その後1カ月以内に消失した。3.5cm3の腫瘍でも最終的には消失した。だがワクチン接種時に5.5cm3の大きさであった腫瘍はいったん縮小したものの再び成長した。

同様に、TUBO細胞の接種後にワクチンを早く接種するほど肺への転移率が低くなった。転移がある場合、腫瘍が多数存在していると免疫反応が癌を排除するのに長い時間を要した。200カ所以上の転移がみられたマウスでは腫瘍フリーとなるまで最大38日であった。

「レセプターの一部分だけを標的にするモノクローナル抗体による治療に比べ、ワクチンにはいくつか有利な点があります」とDr. Berzofsky氏は語る。「ワクチンならばいくつかの異なる抗体の産生を誘導して、レセプターの様々な部分を標的にしますから、腫瘍が変異により治療効果から逃れることは難しくなります」。

Dr. Berzofsky氏は「マウスにおけるこれらの結果により、乳癌患者に対し、HER2のような過剰に発現された細胞表面レセプターに対する抗体を誘導するようなワクチンを生産できる可能性が示されました」とも付け加えた。

大腸内視鏡による追跡検査ガイドラインの評価

大腸内視鏡下で切除したポリープの大きさと数から癌に進展するような再発を予想することには限界がある、と新しい研究は示唆している。3月18日付けAnnals of Internal Medicine誌に掲載されたこの知見は、現在の大腸内視鏡による追跡調査ガイドラインに疑問を投げかけている。現在のガイドラインでは、検出されたポリープおよび腺腫をもとにサーベイランス検査のスケジュールを決定している。

ガイドラインでは、進行した腺腫を有する患者、すなわち癌化するリスクが高いとされる患者、もしくは3つ以上の腺腫がみられる患者では3年以内の追跡検査が推奨されている。ポリープの数が2以下であり、進行していない患者では5~10年以内の追跡検査とされている。しかし調査の結果、多くの医師がガイドラインの示す大腸内視鏡の追跡調査時期を前倒ししていることがわかった。

理由の1つとしてガイドラインが前向き研究によって評価されていないことが考えられる。この問題を探求するため、NCIの癌予防部門のDr. Adeyinka O. Laiyemo氏は共同研究者らとともにPolyp Prevention Trial(ポリープ予防臨床試験)の患者1905人を調査した。臨床試験の参加者は試験開始時点で腺腫の切除を受けており、その後1年と4年目に再度大腸内視鏡検査を受けている。

研究の結果、現在のガイドラインで用いられているリスク階層化モデルは、進行した腺腫の再発予測の手段として信頼できるものではなかった。全体として臨床試験に参加した患者の6.6%は4年以内に進行した腺腫の再発があった。進行した腺腫の再発率は、最初の内視鏡検査で高リスクの腺腫とされた患者で9%、低リスクとされた患者で5%であった。

記事に不随した同誌論説では、再発率の相違は統計学的には有意だが、現在のリスクモデルにおける予測的中率が71%では患者や医師にとって意味をなさないだろうと述べられている(対照的に、コインの表裏の予測的中率は50%もある)。

Dr. Laiyemo氏は、進行した腺腫の再発リスクが最も高い患者を識別するような、信頼性が高いツールを開発する必要性を強調している。症例の分類ミスがあると、予防できるはずの大腸癌を見落としたり、医療行為の必要な人への分配がなされないといったことになりかねない。

研究者らはまた、2つ腺腫があり、一方が大腸の右側で小腸に近いところにあるような患者は高リスクであることを発見した。この明らかな関連については他の研究でも示されているが、その理由はいまだ明らかになっていない。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で癌遺伝子を同定

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中でも予後不良のタイプである活性化B細胞様(ABC)DLBCLにおいて、癌細胞の生存にCARD11という遺伝子の変異が関わっていることが発見された。この研究の結果は3月21日付けScience誌に掲載され、CARD11遺伝子が将来、新治療法の標的になるとみている。

細胞死を防ぐため、悪性のABC DLBCL細胞は核因子カッパB(NF-κB)シグナル経路に依存する。この経路は細胞の増殖、分化、生存に重要な役割を持つ。NCIの研究者らは以前にCARD11がABC DLBCLにおけるNF-κBシグナル経路の異常な細胞シグナルを刺激することを報告している。だが異常な細胞シグナルを発するメカニズムについては知られていなかった。

CARD11遺伝子が癌とどのように関係しているか調べるため、研究者らはABC DLBCLの生検および細胞株から得られた試料より遺伝子配列の決定を行った。その結果、変異したCARD11遺伝子はCARD11タンパクのコイルドコイルと呼ばれる部分のドメインをコードしていることがわかった。

蛍光顕微鏡で解明されているとおり変異型CARD11タンパクは凝集(束になる)しやすく、凝集の程度は、タンパク質のNF-κB経路を活性化することで癌細胞が生存する能力と関連している。ヘアピンRNAを用いてCARD11遺伝子の機能をノックアウトした変異型に対し、いくつかの実験で、変異型CARD11遺伝子を有するABC DLBCL由来の細胞株の遺伝子発現を阻害すると細胞株は死滅した。これらの細胞は正常型CARD11遺伝子を追加導入しても死滅したことから、変異したシグナル経路に「傾いてしまった」ことが示されている。

本研究の筆頭著者でNCI癌研究センターのDr. Louis Staudt氏は、「われわれの研究結果によりCARD11遺伝子がまさにDLBCLにおける癌化遺伝子であることが示され、CARD11の経路を阻害する薬物を開発する遺伝子学的な論拠となりました」と結論した。

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橋本 仁 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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