2008/04/15号 ◆AACR年次総会報告 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/04/15号 ◆AACR年次総会報告

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2008/04/15号 ◆AACR年次総会報告

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月15日号(Volume 5 / Number 8)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

____________________

米国癌学会(AACR)年次総会報告

APC試験5年目の結果:腺腫の再発は減少、心リスクがより明確に

セレコキシブによる腺腫予防(APC)試験の5年目の結果によれば、セレコキシブ(セレブレックス:日本での商品名セレコックス)の連日投与終了から2年後も、大腸ポリープの再発はわずかながら減少し続けているということである。

2006年のAACR年次総会で発表された当初の試験結果では、プラセボと比較して、3年間セレコキシブを連日服用した参加者においては、腺腫の再発および進行腺腫の再発が著しく減少していることが明らかにされた。参加者は、その全員が事前に病変を摘出されていたが、3年後の時点で腺腫および進行腺腫の合計は対照群よりも著しく少なかった。

本試験の主任責任医師であるDr. Monica Bertagnolli氏は、昨日カリフォルニア州サンディエゴで開催された2008年AACR年次総会で発表を行い、薬剤の使用中止後その効果は弱まるが治療効果は5年後の時点でも持続していると報告した。しかしながら、セレコキシブの使用には、心臓発作や脳卒中を含む重篤な副作用のリスク増加が伴った。安全性を解析したところ、これらの重篤な有害事象は既存の心血管系リスク因子を有する参加者で最も多くなっている。

総体的に、プラセボ投与群と比較して、進行腺腫のリスクは、1日400 mgを服用した患者で41%および1日800 mgを服用した患者で26%低下した。

心血管系イベントは、試験開始時点で既存の心血管系リスク因子(例えば、高血圧、糖尿病、年齢65歳以上)を少なくとも2つ以上有する参加者において発生の可能性がはるかに高かった:心血管系有害事象の報告は、1日400 mg投与群の8.2%および1日800 mg投与群の11.2%と比較して、プラセボ投与群では5.9%であった。対照的に、試験開始時点で心血管系リスク因子を持たないAPC試験参加者では、心血管系有害事象発生率は、それぞれ、3.9%、1.9%、および0.9%であった。

Brigham and Women’s HospitalのDr. Bertagnolli氏は、今回の結果はCOX-2阻害剤が「ある患者にとってはリスクを伴う」ことを示すものであると述べた。しかし、同氏は「主要な心血管系リスク因子を持たない患者では、低用量のセレコキシブが、大腸癌を引き起こす可能性があるハイリスクの病変を防ぐ、ということも今回の試験で明らかになっています」と続けた。

セレコキシブが関わる6つのプラセボ対照試験についての、NCIの資金援助によるより大規模な交差試験(cross-study)の安全性解析後に、これらの結果が判明した。データは、米国心臓病学会の年次総会で3月末に発表されたものである。その解析から、最高用量のセレコキシブを投与された患者において心血管系イベントのリスクが3倍高くなることが明らかになったが、さらに心血管系リスク因子が内在する試験参加者においてリスクが著しく高くなることも明らかになった。

膵癌幹細胞の発見および研究

膵臓腫瘍の癌幹細胞を分離するための正確な戦略およびこれらの稀な細胞が患者の生存率に影響を及ぼす可能性を示唆する予備的な証拠が、2008年のAACR年次総会で報告された。今回の結果は、この致死の病における膵癌幹細胞の潜在的役割を理解することを目的としてジョンズホプキンス・キンメルがんセンターで実施された一連の研究成果である。

癌幹細胞仮説とは、腫瘍を形成する間存在し続ける能力を持つこれらの特殊な細胞によって多くの癌が発生し増殖する、というものである。

2003年、主任試験責任医師のDr. William Matsui氏とその研究チームは、骨髄の癌である多発性骨髄腫患者の癌幹細胞を同定した。この研究を基に、現在では、さまざまな研究で使用されたマーカーを統合する潜在的膵癌幹細胞分離戦略を開発した。

その戦略では、表面タンパク質CD44とCD24(膵癌幹細胞を同定するためにミシガン大学チームが昨年用いた)を、ホプキンスの多発性骨髄腫試験でマーカーとして使用されたアルデヒド脱水素酵素と組み合わせている。

3つすべてのマーカーを一緒に使用することにより、いずれかのタイプのマーカーを単独で使用するよりも2~10倍の濃度の幹細胞集団が生成された、とジョンズホプキンスのDr. Zeshaan Rasheed氏はAACR総会で報告した。

追加試験では、腫瘍に癌幹細胞マーカーのない患者は他の患者よりも2~3ヵ月長く生存することが判明した。診断から1年以内にほとんどの患者が死亡する疾患において、この差は重要となる可能性がある。

「私たちはこれらの細胞が臨床的にこの疾患に関連していると感じ始めています」と、Dr. Matsui氏は語った。同氏の研究チームは癌幹細胞が転移の一因となっているかどうかの調査を実施しており、試験のすべてを発表することを予定している。

合成ビタミンDがマウスやラットにおいて毒性なく抗癌作用を示す

ラトガーズ大学の研究者らは、ER陽性およびER陰性の両方の乳癌細胞の増殖を劇的に抑制しラットやマウスに毒性を示さない、Gemini 0097と呼ばれる活性型ビタミンDを開発した。Dr. Nanjoo Suh氏は、昨日AACR総会で同氏のチームによる試験の結果を発表した。

活性型ビタミンDは、食事由来の前駆体から皮膚、肝臓、および腎臓で合成されるホルモンである。疫学的研究により、活性化ビタミンD不足の人は結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、及びその他の癌に罹るリスクが高くなることが明らかになっている。

癌を予防するビタミンDサプリメントを使用する臨床試験ではさまざまな結果がもたらされたが、理由の一つは、活性型のビタミンDを高用量摂取すると、血中カルシウム濃度が毒性レベルに達するなど、他の電解質の不均衡を引き起こす可能性があるという事実による。このため、研究者らは、分子構造がわずかに異なるビタミンの化学修飾型であるビタミンD類似体を検討している。

ラトガーズ研究チームは、乳房に発癌物質を投与してきたラットで、活性化ビタミンDの新たな類似体60個をプラセボと比較して試験を行った。類似体の1つのGemini 0097は腫瘍の増殖を阻止することに優れており、ER陽性乳癌の増殖を60%減らした。ER陰性乳癌のマウスモデルにおいて、Gemini 0097は腫瘍の増殖を50%抑制した。類似体による治療を受けたマウスやラットでは、血中カルシウム濃度に異常は認められなかった。

「類似体には側鎖がありますので、分子は天然に存在するビタミンDよりもはるかに大きくなります。このため、分子の受容体との結合はわずか40%ですが、とにかく活性はより優れています」とDr. Suh氏は説明した。同氏は、この優れた活性はビタミンD受容体への共同因子の取り込み方が変化することに起因するのかもしれない、と推測した。同氏はまた、Gemini 0097のヒトでの試験を実施する前に動物実験からより多くのデータを入手する必要がある、と言及した。

乳癌発生率の低下は人種によって異なる

最近の研究報告によれば、20年間上昇を続けた後、米国の乳癌発生率は2002年~2003年の間に急激に低下し2004年も下がり続けた、ということである。しかしながら、2008年AACR年次総会で4月15日に発表された新たな研究では、この低下は全人種グループに等しく見られるものではなかったことを明らかにしている。

シカゴ大学の試験責任医師らは、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムに登録された癌患者17人のデータを用いて、50歳~69歳の女性で人種および腫瘍病期による2000年~2004年の浸潤性および非浸潤性乳癌発生率の変化を割り出した。

非浸潤性癌の発生率はほとんどの女性グループで一定であった。しかしながら、白人女性における浸潤性乳癌発生率は2003年末までに著しく低下した一方で、アフリカ系アメリカ人、アメリカインディアン/アラスカ先住民、もしくはアジア系アメリカ人/太平洋諸島系の女性における発生率に著しい変化は認められなかったことが判明した。

「このような人種差は、ホルモン補充療法(HRT)の中止が劇的な低下の原因となることがある、という仮説と一致しています」とAACR総会で発表した要約の中で著者らは述べた。

「更年期のホルモン使用が広範囲にわたって中止されたことが白人により大きな影響を及ぼしたのではないかと見ています」とDr. Dezheng Huo氏はシカゴ大学のプレスリリースで語った。

アフリカ系アメリカ人がエストロゲンに感受性が高い乳癌を発生する可能性は高くないことから、ホルモン摂取による害はより少なくなりまた中止による恩恵もより少なくなった、とDr. Huo氏は説明した。

さらに、アフリカ系アメリカ人については、「ホルモン療法で同程度の低下が認められました」とDr. Huo氏は述べた。「それにもかかわらず、そのことによって効果が現れることはなかったことから、エストロゲンおよびプロゲステロン代謝における遺伝的変異が関与していると考えられます。」

******
豊 訳
島村義樹(薬学)  監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  9. 9ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨
  10. 10ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず

お勧め出版物

一覧

arrow_upward