2008/04/15号 ◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/04/15号 ◆癌研究ハイライト

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2008/04/15号 ◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月15日号(Volume 5 / Number 8)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

進行の早い白血病に突然変異遺伝子が関与

フィラデルフィア染色体(BCR-ABL1)陽性の急性リンパ球性白血病(ALL)という予後不良をきたす進行の早い白血病においてよくみられる遺伝子変化が同定された。この遺伝子変化がタンパク質イカロスを生成する遺伝子IKZF1を変化させ、このALLサブタイプにとって重大な病変と考えられる、と研究者らはオンライン版Nature誌(4月13日号)で報告した。

イカロスは、リンパ球の正常な発育を制御する上で主要な役割を果たしている。IKZF1遺伝子の変化は、ALLにおける遺伝子異常を同定するために現在進められている取り組みの一環として発見された。聖ユダ小児研究病院のDr. James Downing氏らは、ALL304例(BCR-ABL1陽性ALLの小児21例、成人22例を含む)を対象としてDNAコピー数の変化を分析した。

BCR-ABL1陽性ALL例の80%超において、IKZF1遺伝子が欠失していた。この遺伝子欠失によってイカロスの発現が減少、あるいはこのタンパク質の異常形態が発現するようになった。「この分子レベルの病変の発見によって、われわれはBCR-ABL1陽性ALLにおいて、破壊される遺伝子経路について重大な洞察を得ることができる。これらの結果は、最終的にはより効果の高い治療法へと結びつくであろう」と、Dr. Downing氏は述べている。

研究者らは、慢性骨髄性白血病(CML)23例についても分析した。この疾患もBCR-ABL1と関係があり、イマチニブ(グリベック)が投与されることが多い。未治療のまま放置すると、CMLは無症候期から急性転化として知られる急性白血病へと進行する可能性がある。研究者らは、CMLからリンパ性急性転化への進行時にイカロスが欠失されることを確認し、イカロスの変異がBCR-ABL1白血病の挙動を決定するのに一役を担っていると示唆した。

「BCR-ABL1はCMLの特徴だが、この疾患は複雑である。われわれの結果によれば、CMLから急性転化への進行および新規のBCR-ABL1陽性ALLには他の遺伝子病変が関与している。このさらなる病変は、これらの疾患の治療への反応において極めて重要であると考えられる」と、聖ユダの筆頭著者Dr. Charles Mullighan氏は語っている。

染色体部位が肺癌に関与

15番染色体部位に肺癌の危険因子が含まれている可能性があることを、3つの研究チームが今月のオンライン版Nature誌およびNature Genetics誌において報告した。この結果は、強い環境因子と密接に関係している疾患の遺伝成分の同定を試みる最初のゲノムワイド関連研究からのものである。しかし、以前より研究者らの間では肺癌リスクに対して遺伝因子が役割を果たすことが知られており、最近の研究で肺癌についてはこの15番染色体部位が示唆された。

この部位のどのDNA塩基配列が本試験で確認された高リスクの原因であるか同定するには、さらなる研究が必要である。もっとも疑わしいのは、細胞表面上でニコチンと結合するタンパクを生成し、一連の細胞変化(癌関連の細胞変化など)を引き起こす3つの遺伝子である。ニコチンへの曝露がない場合でも、これらのタンパクが癌の一因となることもある。

これらの研究は、deCODE Genetics(アイスランド)のDr. Kari Stefansson氏the International Agency for Research on Cancer(フランス、リヨン)のDr. Paul Brennan氏、およびテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Christopher Amos氏が主導した。その結果から、15番染色体上のDNAの突然変異と肺癌の間の関係について強いエビデンスが得られたが、Nature誌に付随コメントによれば、その関係が直接的なのか、あるいは喫煙行為が仲介するのかについては、試験によって異なっている。

「これらの発見が喫煙リスク、肺癌リスク、またはその両方のリスクと関連がある」のか否か確認するには、喫煙パターンおよび常習行為に関して詳細な情報が得られる、より規模の大きい試験も必要になる、と国立癌研究所(NCI)の癌疫学・遺伝子学部門のDr. Stephen Chanock氏とハーバード公衆衛生大学のDr. David Hunter氏は書いている。

化学療法による貧血の治療に鉄静脈内投与が有効

Journal of Clinical Oncology(JCO)誌4月1日号に掲載されている2つの試験によれば、化学療法誘発性貧血に対しエリスロポエチン刺激薬(ESA)を服用している患者に対する鉄の静脈内(IV)投与は、ESA単独またはESA+経口鉄投与と比較して、ヘモグロビン値を著明に改善することが確認された。

臨床試験では、化学療法または放射線治療を受けている癌患者の最大75%に貧血が発症している。ESA療法によって血液の状態が矯正されたのは、患者の50~70%のみであった。

最初のJCOの試験では、ESAダーベポエチンアルファ(アラネスプ)+鉄静脈投与を受けている患者の86%が、12 g/dL以上のヘモグロビン値またはベースラインのヘモグロビン値よりも2 g/dL以上増加のいずれかを達成したのに対し、ESA単独またはESA+経口鉄投与を受けた患者では73%であった。鉄静注を受けている患者はESA療法に対してより速やかに反応し、中央値50日で目標ヘモグロビン値を達成した。これに対し、鉄静注を受けていない患者では64日であった。

2つ目の試験では、ダーベポエチンアルファおよび鉄静注の投与を受けている患者の76.7%が目標ヘモグロビン値を達成したのに対し、ESA療法単独投与を受けている患者では61.8%であった。

先月、米国食品医薬品局(FDA)の抗腫瘍薬諮問委員会は、ヘモグロビン値12 g/dL以上を達成するために臨床試験においてESAを使用している患者で死亡率が増加したことから、癌患者に対し貧血治療のためのESA使用は実質的に制限するよう推奨した。

しかし、JCOの記事に付随する論説において、ジョージタウン大学のDr. Michael Auerbach氏は次のように述べている。「これら2つの試験は、適切に選択された癌患者における鉄静注の定期使用を支持するものであり、急増しているデータに独自性の高い有用な情報を加えてくれた」。

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Oyoyo 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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