2008/04/29号◆スポットライト「アルコールと乳癌リスクの新たな研究結果」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/04/29号◆スポットライト「アルコールと乳癌リスクの新たな研究結果」

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2008/04/29号◆スポットライト「アルコールと乳癌リスクの新たな研究結果」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月29日号(Volume 5 / Number 9)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

アルコールと乳癌リスクの新たな研究結果

適度なアルコール摂取は健康増進効果をもたらしうるとして大いに注目を集めている一方、アルコールの癌リスクへの影響はほとんど注目されない。過度の飲酒が肝臓癌、頭頸部癌、食道癌のリスクを高める可能性があることは疫学研究によって一貫して明らかにされており、適度な飲酒でさえ乳癌リスクを高めると示されている。

サンディエゴで開かれた米国癌研究会議(AACR)年次総会では、アルコール摂取と最も一般的なタイプの乳癌の有意なリスク増加とを関連付けた研究はじめ、アルコールと乳癌の関係をさらに解明する2つの新たな研究が発表された。

これらの研究は注目を集めたが、飲酒するどの女性が最もリスクが高いのか、どのような生物学的メカニズムでアルコールが乳癌を引き起こすのかといった重要な問題にはまだ答えが得られていないと研究者らは強調する。つまり、研究者らは個々に応じた臨床勧告の基礎となりうるエビデンスをまだ集めている段階にあるということである。

しかしながら、いくつかの勧告は既に行われている。昨年発行されたはるかに大規模な報告の一部で、米国癌研究協会(AICR)の組織したコンセンサス委員会は、「癌に関するエビデンスは、アルコール飲料を摂取しないようにという勧告の妥当性を示している。」と結論づけた。

また一方で、AICRの報告は、適度なアルコールの摂取が心臓病を予防する可能性があるという一貫した研究結果も認めており、アルコールを摂取する場合は、女性は1日に1杯、男性は2杯のアルコール飲料にとどめるべきであると提案している。

しかし、アルコール摂取と乳癌リスクとの極めて一貫した関連性ですら「因果関係が証明されたと言えるわけではありません」と米国立癌研究所(NCI)癌疫学・遺伝子学部門、栄養疫学支部のDr. Arthur Schatzkin氏は述べている。心臓病の予防効果についても同じことが言えると彼は付け加えている。

「喫煙と肺癌、またはHPVと子宮頸癌の関連リスクとは異なり、アルコールに関連した乳癌リスクは実にわずかなものです。そのため、乳癌の本当の病原因子が、適度な飲酒と関連する他の何らかの生物学的要因または行動要因ではないのだと、これまでの研究から断定するのは難しいのです。」とDr. Schatzkin氏は続ける。

「重要な点は、飲酒は特に乳癌の家族歴などの確立したリスクのある女性にとって、全面的に回避しうる危険因子だということです」と彼は強調する。1920年代にまでさかのぼった研究では、アルコールの摂取と死亡リスクはJ字形曲線で表されると示されている。つまり、死亡リスクは飲酒をしない人ではいくぶん上昇し、適量の飲酒をする人ではわずかに減少し、その後摂取量の増加に伴い徐々に上昇する。

カイザーパーマネンテ保険会社(カリフォルニア州オークランド)のDr. Arthur Klatsky氏らによる長期研究によれば、軽度から中程度のアルコール摂取のベネフィットは、主に中年層の心疾患に対する明確な予防効果に因るところが大きい。

AACR総会でNCIの研究者らが発表した罹患率データは、少なくとも過度のアルコール摂取に関しては、Jカーブと多少一致していた。NIH-AARP Diet and Health Study(国立衛生研究所-AARP食生活と健康試験)に参加した18万人以上の女性の分析に基づけば、1日に3杯以上のアルコール飲料を摂取する女性は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)陽性の乳癌リスクが50%以上増加し、一方、これより少ない量のアルコールを摂取した女性も、アルコールの種類にかかわらずリスクが増加したことが分かった。

この結果は彼の研究データとほぼ一致し、アルコールはエストロゲンへの影響によって乳癌リスクを増加させる可能性があるという仮説を裏付けるとKlatsky氏は述べている。しかし、結果は全面的には一致しておらず、危険閾値を確立することの難しさを浮き彫りにしているとKlatsky氏は説明する。

「私たちのデータでは、週に数杯しかアルコールを摂取しないと報告している女性では(乳癌)リスクの増加はみられず、週に数杯~1日に2杯のあたりでリスクが増加し始めると示されています」と彼は述べている。

アルコールとエストロゲンの相互作用に加え、アルコール代謝と関係するアルコール脱水素酵素(ADH)をコードする遺伝子が研究で注目されている。ADHはアルコールを、エタノールの最初の代謝物であり、動物モデルで発癌性が確認されているアセトアルデヒドに分解する。

AACR総会でジョージタウン大学ロンバルディ総合がんセンターとバッファローのニューヨーク州立大学の研究者らは、Western New York Exposure and Breast Cancer Study(ニューヨーク西部・暴露と乳癌試験)のデータを用いて、飲酒習慣があり、かつADHをコードする遺伝子に変異のある閉経後女性において乳癌リスクの増加が判明したと報告した。飲酒量が多くなるほどリスクは増加した。

「これは私たちが現在解明しようとしていることです。私たちは特定の遺伝的感受性があると仮定しています。それに対していくらかエビデンスがありますが、飲酒する女性にとって特定の遺伝子が乳癌リスクを増加させると言えるだけの研究はありません」とロンバルディの副センター長Dr. Peter Shields氏は述べている。

しかし、他の分子が作用している可能性がある。Dr. Shields氏の研究室は国防総省から資金提供を受け、これまでの研究で示唆された4つの潜在的な原因機構をより系統的に考察している。これらの研究にはアルコールとエストロゲンの関連、アセトアルデヒドの役割、アルコール性酸化的障害や葉酸経路の破壊が含まれる。

「私たちは、多くの女性が摂取するこの種の飲料についてさらに調べ、どの段階でリスクに曝されるのかを解明したいと思っています」とShields氏は述べている。

—Carmen Phillips

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吉田 加奈子 訳
上野 直人(乳癌/M.D.アンダーソンがんセンター准教授)監修
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