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2008/04/29号◆癌研究ハイライト

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2008/04/29号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年04月29日号(Volume 5 / Number 9)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

肛門癌に対するシスプラチンは標準療法に及ばず

肛門癌に対する化学放射線療法においてマイトマイシンの代わりにシスプラチンを投与したところ、無病生存率や全生存率は改善されず、結腸瘻造設が必要となる患者が多くなった。この試験結果は、Journal of the American Medical Association誌4月23日号に掲載されている。

肛門癌に対する現在の標準療法は、フルオロウラシル+マイトマイシンと放射線療法である。これまでの試験にて、化学放射線療法が小さな腫瘍に対してより有効であると示されている。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Jaffer A. Ajani氏らは、フルオロウラシル+シスプラチンと放射線療法を行う前に、同薬で初回化学療法を行って腫瘍を縮小させれば転帰が改善されるのではないかと考えた。

本ランダム化第3相試験では、肛門癌患者644人に対し、標準療法であるフルオロウラシル+マイトマイシンと放射線の同時併用、またはフルオロウラシル+シスプラチンの導入化学療法に続きフルオロウラシル+シスプラチンと放射線の同時併用療法を実施した。

追跡期間中央値2.5年後の推定5年無病生存率は、マイトマイシン群で60%、シスプラチン群で54%であった。全生存率、局所再発率および遠隔転移率に関する推定値は、シスプラチン群ですべて低かった。さらに、5年経過時点において、結腸瘻造設を必要としたのは、シスプラチン群で推定19%であったのに対し、マイトマイシン群で10%であった。

本試験の試験責任医師であるAjani氏らは、「これらの所見は、肛門癌の治療でフルオロウラシルと放射線療法を併用する際、マイトマイシンの代わりにシスプラチンを用いる根拠とはならない」と述べている。

卵管から発生する卵巣上皮癌

ダナファーバー癌研究所のDr. Keren Levanon氏らは、卵巣癌のうち最も悪性度の高いタイプ(漿液(しょうえき)性癌)の大半が卵巣ではなく卵管采から発生することを発見した。Levanon氏は、4月14日に行われた米国癌研究会議(American Association for Cancer Research)年次総会にてこれらの所見を報告した。

同総会にてLevanon氏は、「現在まで、[卵巣]漿液性癌の基本的な病因や発癌について不明であった」と述べている。さらに、卵巣癌は進行段階で診断される場合が多いことを指摘し、「初期段階の癌病変や前駆体病変の実態が明らかになっていなかったため、その原因を分析することができなかった」と続けている。

ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者らによる本研究チームは、これらの初期病変について研究し、卵巣癌やその他の癌の発症リスクが高いために当人の意思で卵巣および卵管の除去手術を受けた女性の細胞にて、「p53の変化」(p53遺伝子の変異および細胞内におけるp53タンパク質の蓄積)を伴う細胞を同定した。

同研究チームは、卵管先端で連なる指状の突起物(卵管采と呼ばれる)の分泌細胞内にp53サインを多く発見した。その際に、ex vivo(生体外)モデルを開発し、これらの細胞や癌の原因となる分子事象を研究している。この研究が標的療法や早期発見のためのバイオマーカーの先駆けとなることが期待される。

Levanon氏の説明によると、今回の所見には驚いたが、卵巣癌が卵管から発生し得るということには驚かなかったという。「進行段階の卵巣癌と診断された患者をみると、約100%の症例で卵管に病変部が認められる」と同氏は述べている。また、「卵巣を摘出するための予防的手術を受けた患者では、腹部の他の部位に腫瘍が発生することがある。卵管に異常がない場合、それは剥れた癌細胞に起因すると考えられる」とも述べている。

乳癌の予後検査法によって腫瘍環境が明らかに

乳癌の間質(腫瘍周辺の結合組織)における26の遺伝子の活性に基づいて、乳癌に対する実験的な予後検査法が開発された。同検査法によって、その他の予後標識(臨床検査や腫瘍遺伝子特性など)以外の情報が得られる。この研究結果は、マギル大学のDr. Morag Park氏らによって4月27日付けでNature Medicine誌オンライン版に掲載された。

癌が進行する際の局所的腫瘍環境の役割は非常に興味深い。しかし、腫瘍間質の変化がどのように転帰に影響するかを扱う研究はほとんどない。

Park氏らは、組織検体と3つの大規模な乳癌データベースの臨床データを用いて、26の遺伝子について研究を行った。その結果から、乳癌間質の変化は同疾患の予後や転帰に重要な役割を担っていることが示唆された。

同氏らはある分析にて、「良好な転帰」と判定された患者の間質検体にて、ある免疫関連性遺伝子の活性が亢進していることを発見した。当該患者らでは、免疫反応を介して腫瘍を標的とする治療法(補助的なワクチン療法など)が有益であると考えられる。

間質の26の遺伝子パターンとその他の遺伝子パターンを合わせると、 個々の分子に基づくよりも臨床転帰の予測が改善された。これらの所見から、腫瘍の微小環境に関するあらゆる側面を予後予測に取り入れる必要性が浮き彫りになった。

農薬が精巣癌リスクに関与

Journal of National Cancer Institute誌4月29日オンライン版に掲載された試験結果によると、農薬DDTの副産物に曝露した男性では精巣癌のリスクが高くなりうる。DDE(残留毒性を有するDDT主要代謝物)の血中濃度が、精巣胚細胞腫瘍(TGCT)を有する米国人男性の検体にてその他の男性と比較して高かった。比較的稀な同癌は、特に早期に発見された場合、治療可能である場合が多い。

米国では1973年にDDTが禁止されたが、他の国で農薬は使用し続けられている。化学物質やその代謝物は脂肪組織に蓄えられるが、ヒトや魚類では蓄積される可能性がある。NCI癌疫学・遺伝子学部門のDr. Katherine A. McGlynn氏は、「1970年代以降、米国人で検出されるDDE濃度は低下しているが、大半の米国人にて認められている。本試験から、環境内に残留する化学物質は使用中止後も数年間にわたって影響を及ぼしていると考えられる」と述べている。

農薬と精巣癌との関連性は数十年前に取り上げられたが、同仮説に関する検証は困難であった。精巣癌が稀であったためである。McGlynn氏らは、TGCTを伴う米国軍人739人および健康男性915人を対象として、本解析前の平均14年間米国国防総省に血液検体を提供させて試験を実施した。

血中DDE濃度が最も高い群の男性では、濃度が最も低い男性と比較して、TGCTを発症する確率が1.7倍高くなった。このリスク推定が正確であれば、DDT曝露は本試験におけるTGCT症例の15%を占めることとなる。

DDTは有機塩素系農薬に属し、生体の内分泌系を阻害し得る。「TGCTは若齢期に発症することを示すエビデンスがあるため、胎児期や母乳を介してこれらの農薬に曝露することで、若年男性においてTGCT発症リスクが増加する可能性がある」とMcGlynn氏らは述べている。

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斉藤 芳子 訳
小宮 武文(NCI研究員・肺癌) 監修
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