2008/05/13号◆スポットライト「古い画像診断技術から興った新治療」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/05/13号◆スポットライト「古い画像診断技術から興った新治療」

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2008/05/13号◆スポットライト「古い画像診断技術から興った新治療」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年05月13日号(Volume 5 / Number 10)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

古い画像診断技術から興った新治療

高周波音波を体内組織に反射させ、ソノグラムと呼ばれる画像を形成するエコーを発生させる超音波は、この何十年もの間、癌の診断における有用な撮画手法となっている。1990年代、研究者らは体内に集束熱を発生させる、音波の能力を利用した腫瘍焼灼に超音波の使用を研究し始めた。現在彼らは、進歩した超音波技術と、実験的癌治療の新たなカテゴリーであるナノテクノロジー、薬物送達を促進するマイクロバブルとを組み合わせている。

「集束超音波に関して有望な点は、温熱療法から低侵襲手術、また薬物送達と活性化まで、超音波で可能な癌の治療範囲にある」と、学術研究費および中小企業研究費を通して本分野の研究を支援したNCI癌画像診断プログラムの画像ガイド下介入療法支部長代理を務めるDr.Keyvan Farahani氏は述べる。「このプロセスは様々な画像診断技術、とりわけ超音波と磁気共鳴画像法(MRI)で誘導され、観測することができる」と、Farahani氏は説明する。

マイクロバブル媒介超音波療法は、画像診断の際、超音波造影剤に基づいており、ターゲット組織を周辺臓器と識別しやすくするために開発されたものである。超音波造影剤はマイクロバブルと呼ばれるナノスケールの脂質コーティーング物に入ったガスから成り、平均的なヒトの血管細胞の約1/10程の大きさである。

マイクロバブルを画像診断で用いるときよりもわずかに長く超音波に曝露すると、泡は拡大・縮小し周辺組織に小さな力を及ぼしながら、安定したキャビテーションと呼ばれる状態で振動する。さらに曝露すると、隣接した細胞内で、高いずり応力、温度、圧力および衝撃波が発生し、泡は崩壊する(慣性キャビテーションと呼ばれる)。

キャビテーションの治療可能性はすぐに、化学療法薬や他の治療を原発および転移性脳腫瘍に送達するために血液脳関門の迂回方法の究明に取り組んでいる研究者たちの眼を引いた。脳に至る血管内に上皮細胞が緻密に並んだ血液脳関門は、治療薬など、ほとんどの大きな分子が血流から脳に到達するのを阻止している 。

研究者らは、一時的に血液脳関門の一部を小さく開かせるよう超音波の使用を試みていたが、一貫した結果は得られなかった。彼らは、マイクロバブルが、集束超音波エネルギーを正確に腫瘍組織だけに集中させることで、周囲の脳組織を曝露させず、健康な細胞の損傷を最小限に抑えるのに使用できると気づいた。

「マイクロバブルを(超音波で)使用し始めたとき、われわれは、確かな窓、つまり、血液脳関門に薬剤が通過するのに十分な『開口部』を開くことができ、それは繰り返し可能であった」と、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の超音波治療研究科の研究責任者であるDr. Nathan McDannold氏は言う。

興味深いことに、マイクロバブル媒介の超音波が実際にどのように血液脳関門を開くのかは明確になっていない。「これがただの微小血管の物理的変化であるとは思っていない-われわれは単に血管に穴を突きあけたり、密着結合を伸ばし広げたりしているわけではない」と、McDannold氏は説明する。

「おそらくマイクロバブルの安定したキャビテーションに関係している」と彼は続ける。

研究者らが電子顕微鏡検査により観察したところ、マイクロバブル媒介の超音波を照射した後、振動による身体的刺激に反応するかのように、血液脳関門を通過する薬の能動輸送が増加した。

現在のところ動物モデルにおいては、この方法で化学療法薬とトラスツズマブ(ハーセプチン)は血液脳関門の小さな一時的な断裂を通りうまく送達された。この断裂は自然治癒し、数時間でほとんど閉じ、1週未満で完全に閉じる。

関連した分野で、研究者らは標的指向性の薬物送達のために慣性キャビテーションの使用に目を向けている。研究者らは、薬剤をマイクロバブルに詰めたり表面に付けたりして、血流に注入し正確に適切な時刻に正しい場所で集束超音波によって衝撃を与えられると、薬剤を放出する送達キャリアを作成している。

—Sharon Reynolds

これらのプロジェクトおよびその他の研究は、3月10日、11日にメリーランド州ロックヴィルで行われた第1回NIH後援Image-Guided Interventions Workshop年次会議にて発表された。

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入江 瑞穂  訳
中村 光宏  (医学放射線)  監修
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