2008/05/27号◆スポットライト「新たな癌専門領域:癌長期生存者のフォローアップ」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/05/27号◆スポットライト「新たな癌専門領域:癌長期生存者のフォローアップ」

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2008/05/27号◆スポットライト「新たな癌専門領域:癌長期生存者のフォローアップ」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年05月27日号(Volume 5 / Number 11)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

新たな癌専門領域:癌長期生存者のフォローアップ

1978年に21歳で切除不能ホジキンリンパ腫と診断されたEileen Gouldさんは、胸・腹・骨盤部に放射線の大量照射を行うという当時最先端の治療を受けた。さらに彼女の脾臓は摘出された。治療によりリンパ腫は治癒し、その後再発しなかった。

年月が過ぎ、長引く倦怠感と持久力不足に悩まされたことを、今、彼女は語る。階段を上ると息切れした。複数の医師に診せても悪いところは見つからなかった。彼女はその後、インターネットでホジキンリンパ腫の長期生存者支援団体を発見したが、患者の多くが彼女と似たような症状を訴えていた。

「ああ、私は頭がおかしい訳ではなかったのだ、と思った」とニューヨーク市在住で51歳のEileenさんは語る。胸部への大量照射によって彼女の心臓がダメージを受けたと、心臓専門医が診断を下したのはリンパ腫の診断からほぼ20年後であった。現在Eileenさんは早期閉経や、甲状腺機能低下症、起立性低血圧、脾臓摘出による免疫機能低下など、彼女の命を救った治療を原因とする複数の慢性疾患や遅発性副作用を抱えて暮らしている。皮膚の基底細胞癌や非浸潤性(非侵襲性)乳癌にも罹患した。

Eileenさんは20年以上前に癌と診断され、生存している推定150万人のアメリカ人の1人である。癌の診断後5年以上生存しているのはおよそ700万人。生存者はさまざまな割合で、彼らが受けた癌治療が直接関与する慢性心疾患をすでに1つ以上発症しているか、あるいはその疾患の発症可能性を有しているとデータは示唆している。彼らのニーズに対応するため、癌治療および癌研究の新たな専門分野として「長期生存者のためのフォローアップケア」の構築が国内各地の多くの癌治療施設において始まっている。

数十年にわたり小児癌生存者を研究した結果、癌や癌治療の影響は一生涯続く可能性があることが示された。これらの影響はその本質が大きく異なり、治療した癌種や治療の方法、治療時の年齢などさまざまな要因が関与している。最近になって、成人後に癌と診断され治療を受けた生存者の長期的かつ遠隔期の癌治療の影響を記録する複数の研究が始まった。Institute of Medicine報告:From Cancer Patient to Cancer Survivor: Lost in Transition(癌患者から癌サバイバーへ:道を見失って)2005では、包括的で調和のとれた長期フォローアップケアを今現在受けている生存者はわずかであると記されている。検査および適切な予防的介入や早期介入を行うことによって、遅発性副作用発生を減少させたり、重症度を低減させることが長期フォローアップケアによって可能となるであろう。

小児癌プログラムを備える小児医療病院や小児癌センターの多くは、小児・青年癌生存者のフォローアップ診療に力を入れてきたが、これらのプログラムの多くは患者が20代前半に至るまでのフォローアップにすぎない。今日までに、生存者研究の拠点としてランス・アームストロング基金の助成を受け、年長の生存者のニーズや成人してから癌と診断された生存者の長期追跡に着目した8件以上の新プログラムが国内各地で生み出された。Eileen Gouldさんはスローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)でこのような医療プログラム受ける患者の1人である。

プログラムが持つ構造はさまざまであるが、癌の遅発性副作用に関する知識のある医師の指導体制や、各患者の遅発性副作用リスクに合わせた最新検査、適切な専門家への紹介、健康教育、さらに癌長期生存者が求めるフォローアップケアを明らかにするだけでなく、フォローアップケアを提供する上でもっとも効果的なアプローチを探るための研究などを主な特徴とする。

「治療後のケアは発展途上にある新たな研究分野である」とNCI癌生存者オフィスの室長であるJulia Rowland氏は語る。「今はまだ長期フォローアップケアはどうあるべきかという課題に関し、エビデンスの基礎を作っているにすぎない。このプログラムが治療費に及ぼす影響や、生存者の健康関連アウトカムや生活の質に最終的に及ぼす影響を調査することが、本研究の重要な課題である」。

多くの癌長期生存者が抱える悩みには、治療記録の入手不能がある。Eileenさんは幸いにも、彼女の癌治療担当医が一線から退いたときすべての記録を彼女に渡したことから記録を得ることが出来た。小児・青年期に発症した癌の生存者である成人を対象としたMSKCCプログラムの責任者であり彼女の担当医でもあるDr. Kevin Oeffinger氏は、この記録を用いて彼女の癌種や照射線量、その治療により起こりうる長期的影響や遠隔期副作用、彼女が受けたほうがよい検査やモニタリングの種類・頻度について記録し、彼女のためのフォローアップ治療プランを作成した。このアプローチは、一次治療を終えた全癌患者に対し推奨されるIOM報告書の「生存者治療プラン」に基づいている。

「私が他の医師にかかる時に、非常に役立つ記録です」とEileenさんは話す。

癌の診断前は熱心なテニスプレイヤーであったEileenさんは、今でもたまにダブルスの試合を楽しむことがあるという。健康上の問題を数多く抱えてはいるが、長期にわたり生存できたことに感謝していると彼女は話す。「50歳の誕生日を迎えられるとは考えたこともなかったので、そうなった時はとても嬉しかった」。

—Eleanor Mayfield

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Okura 訳
九鬼貴美  (腎臓内科)  監修
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