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2008/05/27号◆癌研究ハイライト

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2008/05/27号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年05月27日号(Volume 5 / Number 11)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

社会的繋がりが喫煙習慣に大きく影響

喫煙をやめるかどうかには友人や家族が大きく影響しており、禁煙への決断は社会のネットワークの中で人から人へと「広がっていく」と最近の研究は示唆している。このことは、フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の一環として1971年から2003年までの32年間、追跡調査された12,000人を超える人の喫煙行動を詳細に分析した結果から明らかになった。

社会の中の喫煙者と非喫煙者の居場所は1971年には入り交じって区別がつかなかった。しかし30年経ってみると、禁煙に対する社会の見方が変わり、喫煙者は徐々に社会の周縁部で主に他の喫煙者とつながるようになった。この研究結果は5月22日のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

この研究を行ったハーバード大学医学部のDr.Nicholas Christakis氏およびカルフォルニア州立大学サンディエゴ校のDr.James Fowler氏は、社会的繋がりが肥満に大きく影響することを昨年報告した。さらに彼らはタバコをやめるという決断に、周囲の人々の変化が直接的間接的に反映することが多いことを現在実施中の試験で示している。例えば、妻か夫がタバコをやめた場合、その配偶者の喫煙率は67%減少するし、ある人がタバコをやめるとその友人の喫煙率は36%低下する。

「人は繋がっているし、健康も繋がっている」と、彼らは述べ、「誰かがタバコをやめることは、その周りの人達の喫煙行動に大きく関係する。」と付け加えた。さらに、最近数10年で喫煙が顕著に減ってきていることのひとつの要因は人から人へと禁煙が広がっていることであると示唆した。

このネットワーク現象は、健康にプラスになる行動を広めるのに大いに利用できる可能性があるとこの研究は結論づけている。この考え方でいくと、集団的な介入は、個人的な介入よりもよほど有効な可能性があり、禁煙促進のための政府の健康政策のコストが当初考えられていたよりも低くなる可能性がある。なぜならひとりの健康改善行動が周囲の人に広がっていくためである。

MRIが乳房切除手術率上昇に寄与

ミネソタ州メイヨークリニックで早期乳癌で乳房切除手術を受けた人の数が、2003年から2006年にかけて30%から43%へ13%も増加した。最新の研究から、従来の乳房X線診断よりも感度が高い胸部磁気共鳴画像診断法(MRI)を術前に導入したことが要因となっている可能性が示唆されている。

メイヨークリニックで1997年から2006年に早期の乳癌で手術を受けた5400人以上の女性について解析したところ、術前MRI診断を受けた女性は、受けなかった女性よりも乳房切除手術を受ける可能性が高かった。ただし、いずれの群でも乳房切除手術の割合は増加していた。共著者であるDr. Matthew P. Goetz氏は最近メディアでこの発見について述べている。また、今回の研究成果は6月の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)で発表される予定である。

術前の胸部MRIは胸部の複数箇所で癌を検出できる。その画像を見て、医師および患者は乳腺腫瘤摘出術よりも乳房切除術を選択している。この研究者らによるとMRIで検出された病変部の約半数は癌性ではなく経過観察が必要なだけであったが、それでもこのような病変が認められた女性が様々な理由で乳房切除手術を選択する可能性もある。

乳房切除手術の割合は、1997年の45%から2003年の30%に減少したが、その後、2006年には43%に上昇したことが今回の研究からわかった。この間に、胸部MRI検診を受けた女性の割合は22%に倍増している。MRIを受けた患者の半数が乳房切除手術を受けており、MRIを受けなかった女性の38%と対照的である。なお乳房切除手術の割合は、術前MRIを受けなかった女性でも2003年の28%から2006年の41%に上昇している。

この記者発表会の司会を務めたワシントン大学のDr.Julie Gralow氏は、この付加的な外科処置が転帰を改善したか、全生存率を増加させたかを決めるにはさらに検討が必要であると注意を加えた。最近の研究では、予防的に両乳房を切除する手術も同じようにこのような外科的措置のリスクとベネフィットのバランスについて疑問を投げかけられている。

BRCA2が前立腺癌の発生と侵襲に関与

オーストラリアとカナダの研究者らが行った研究から、BRCA変異陽性家系から生まれたBRCA2変異陽性の男性は、一般男性と比べて、前立腺癌になるリスクが3.5倍で、進行性の前立腺癌になるリスクが高いことがわかった。また、BRCA1変異陽性男性ではこのような前立腺癌のリスク増加は認められなかった。この研究は、5月15日のClinical Cancer Research誌に掲載された。

この研究では、生殖細胞BRCA1変異またはBRCA2変異を持つことがわかっていて、少なくとも男性1人が前立腺癌と診断されたことのある137家系について検討した。この家系中、158人の男性が研究対象として選ばれた。入手可能な前立腺生検試料がないために、18人の前立腺癌患者に解析はしぼられ、このうち4人が生殖細胞BRCA1変異、14人がBRCA2変異を持っていた。

ヘテロ接合の消失-受け継いだ遺伝子の1つがおそらくは環境的因子により損傷した遺伝子であり、受け継いだもう片方のコピーも誕生後に損傷をうける現象-は14人のBRCA2変異がある人のうち10人の前立腺癌組織に認められた。癌が「ヘテロ接合の消失」をしめした男性のグリソンスコアは7から9(中央値は9)と異常に高い値であり、ステージ2以上の癌が認められた。

この論文の著者は「被験者数が少ないものの、このような結果を見るとBRCA2は正真正銘の癌抑制遺伝子であり、前立腺癌と診断された患者のかなりの割合で癌の原因となっているだろう」と述べている。このような情報が、前立腺癌が遺伝性の乳癌/卵巣癌症候群に含まれる可能性を示唆する先の情報に付け加えられた。ただしこの研究者らはBRCA2が前立腺癌を引き起こすメカニズムを支持するデータは得られていないと付け加えている。

著者らによると、BRCA2変異陽性の男性(BRCA1の変異はない男性)で、乳癌または卵巣癌が遺伝する家系から生まれた人は前立腺癌リスクが非常に高くなることを主治医は考慮すべきであり、さらに、前立腺癌の遺伝的リスクの高い男性の重荷を軽減するための明確な検査上の助言や最適な管理のためのアドバイスをする上で、科学的なエビデンスがさらに必要であると著者らは付け加えた。

ビタミンDは前立腺癌のリスク低下とは関係していない

5月27日のJournal of the National cancer institute誌で、腺癌、肺癌、結腸直腸癌および卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験の参加者を対象としたコホート内症例対照研究について発表される予定である。この中で、体循環血液中ビタミンDの前駆体である25-hydroxy vitamin D [25(OH)D]の血中濃度が高いことは、前立腺癌のリスク低下とは関連性がないことが報告されている。むしろ血中濃度別に階層分けした下から5番目より上の層では進行性疾患のリスク増加と関連性がある傾向が認められている。

米国国立癌研究所の癌疫学・遺伝学研究部門の研究者は、血中の25(OH)Dに関するデータを、前立腺癌と診断された749人の白人男性および781人の対照者のPLCO試験への参加時に得られていたサンプル(基準としたサンプル)から集めた。参加者は全員PLCO試験のスクリーニング群で、標準化された前立腺癌検査を毎年受けていた。

その結果、血中25(OH)D濃度は全体としては前立腺癌リスクに関係しておらず、非進行性疾患との関係も認められなかった。しかしビタミンDの高い血中濃度と進行性疾患のリスク増加に関連が認められた。解析で得られた傾向全てが統計的に有意なわけではなく、今回認められた関係が一般的に線形の用量依存性を示しているわけではないと研究者は記している。

「簡単にまとめると、スクリーニング試験の中で前立腺癌の標準的スクリーニングをうけた男性を対象とした大規模前向き試験の結果は、血中ビタミンD濃度が高ければ前立腺癌の疾患リスクが下がるという仮説を支持しない」と著者らは報道発表で付け加え、さらに「高い血中ビタミンD濃度が進行性疾患のリスクの増加に関係している可能性も考えられるが、明らかな単純用量反応関係は認められなかった。」と述べた。

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関屋 昇 訳
小宮武文(呼吸器科/NCI研究員) 監修
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