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2008/06/10号◆癌研究ハイライト

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2008/06/10号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年06月10日号(Volume 5 / Number 12)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

膵臓癌手術後のゲムシタビン投与により生存率が向上

先週の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された大規模ランダム化臨床試験の最終結果によると、膵臓癌の手術後に化学療法剤ゲムシタビン〔ジェムザール〕を投与された患者の生存期間は手術のみの患者よりも2カ月延長した。

膵臓癌は多くの場合末期に発見されることから、手術適応となるのは本疾患患者の20%以下である。ゲムシタビンは、進行した(そして手術不能な)膵臓癌患者の標準療法として10年間使用されてきた。今回の新たな試験結果は、術後補助療法としての本剤の使用を裏付けるものである。
「この治療法で治療後5年の生存率が2倍以上になることが明らかになりました」と今回の結果を発表した、ドイツのベルリンにあるCharité医科大のDr. Helmut Oettle氏は述べた。

本試験には、手術後の補助療法として6カ月間ゲムシタビンを投与された患者と手術のみの患者368人が参加した。5年生存率は、対照群の9%と比較してゲムシタビン群では21%であった。生存期間の中央値は、対照群の20.2カ月と比較してゲムシタビン群では22.8ヵ月であった。

本臨床試験の予備結果は2005年ASCO総会で報告されており、術後のゲムシタビン投与による本疾患の再発遅延の可能性が明らかにされた。研究者らによると、米国および欧州における本剤の使用増加はこれらの試験結果がきっかけとなったという。

「これまでは断言できませんでしたが、早期の患者に対して本剤を術後投与することによって患者の生存率は向上するだろうとようやく言えるようになりました」とHelen F. Graham がんセンターのDr. Nicholas Petrelli氏はASCO総会で発言した。

セツキシマブ併用化学療法によって進行した肺癌の生存期間が延長

ASCO年次総会で報告された結果によると、セツキシマブ(アービタックス)と化学療法の併用投与を受けた進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存期間は、化学療法のみの患者よりも平均で5週間延長すると報告されている。

第3相FLEX臨床試験では、すべてのタイプのNSCLC患者1,125人が、白金製剤をベースにした標準化学療法の単独投与もしくは化学療法とセツキシマブの併用投与に無作為に割り付けられた。病期は、ほとんどすべての患者が4期であった。全生存期間は、化学療法のみの患者(10.1カ月)と比較して、セツキシマブと化学療法を併用した患者(11.3カ月)の方がより長かった。

併用療法の有効性は、2つの最も一般的な分類である腺癌および扁平上皮癌など、すべての組織学的サブグループのNSCLC患者に認められた。主な副作用は管理可能な挫瘡(ざそう)様発疹であった。

「進行NSCLC患者に対する治療の選択肢は限られており、平均余命も短いことから、今回の研究で明らかにされた生存期間の向上はこれらの患者にとって重要なステップです」とオーストリアのMedical University of Viennaの内科准教授で本研究の筆頭著者であるDr. Robert Pirker氏は語った。

今回の研究の他に最終段階のランダム化試験で肺癌における生存に関する有用性を示しているのは、ベバシズマブ(アバスチン)と化学療法の併用に関する2005年の研究のみである。現在の研究と異なり、その試験には扁平上皮癌患者は含まれていなかった。

ASCO総会で試験結果についてコメントしたマサチューセッツ総合病院のDr. Thomas Lynch氏は、今回の研究は十分な成果を上げ、「多くの人々にとって臨床的に意味のある有用性」をもたらしたと述べた。

ゾレドロン酸により早期乳癌の治療が向上

閉経前の早期乳癌患者に対する術後補助内分泌療法にゾレドロン酸(ゾメタ)を追加することによって臨床上の転帰が内分泌療法のみの患者よりも有意に改善する、との報告がASCO年次総会で発表された。今回の結果は、Austrian Breast and Colorectal Cancer Study Group(オーストリア乳癌大腸癌臨床試験団体)が1,800人の女性を対象に実施した第3相ランダム化臨床試験から得られたものである。

ビスフォスフォネートとして知られている種類の薬剤の一つであるゾレドロン酸は以前から骨転移の治療に用いられており、今回の試験は、本剤が腫瘍を縮小し、かつ転移活性を阻害する可能性もあることを示唆する非臨床試験および初期臨床試験のデータに基づいて実施された。結果はこれを裏付けるものであった、と試験責任医師でウィーン大学医学部のDr. Michael Gnant氏は述べた。

全体的に見て、タモキシフェンもしくはアナストロゾールを用いて治療した患者のあいだでは、無病生存率に差はなかったことが試験で明らかになった。しかし、ゾレドロン酸を追加したことにより、いずれの療法においても無病生存事象のリスクはホルモン療法のみの場合と比較して36%低下した、とGnant氏は述べた。中央値で60カ月のフォローアップ期間で、全無病生存率は92.4%、全生存率は97.7%であった。

試験に参加した女性は、その全員が閉経前の内分泌療法に奏効している1期、2期の乳癌患者であり、手術による治療および必要な場合は放射線による治療が施された。卵巣機能を一時的に抑制するためにゴセレリンも投与された。各患者は、タモキシフェン群、アロマターゼ阻害薬のアナストロゾール群、もしくはいずれかの薬剤とゾレドロン酸との併用群の4つの術後補助療法群の内の1つに割り付けられ、治療は3年間続けられた。

本剤の認容性も良好であり、高用量のビスフォスフォネート剤の使用に伴う2つの副作用である、肝疾患もしくは顎骨障害のリスクが増大する徴候も認められなかった。

頸部手術後の癌患者における鍼治療の臨床試験

米国臨床腫瘍学会(ASCO)への投稿として発表されたランダム化試験の中間結果によると、頸部切開として知られる外科的処置を受けた頭部および頸部の癌患者は、鍼治療によって疼痛が軽減し、その後の身体的機能が改善される可能性があるという。

「鍼治療はこれらの患者にとって期待できる治療法であり、さらなる研究が行われる必要がある」とASCOにて鍼治療の研究結果のディスカッションをしたスローン・ケータリング記念がんセンターのDr. Pfister氏は述べた。従来の治療法では頸部切開をした後の患者を助けるには限界があり、「改善の余地が多くある」とPfister氏は指摘した。

この試験には鍼治療を受けた34人の患者および鎮痛剤と理学療法を伴う標準治療を受けた36名の患者が参加した。試験治療群では、1ヵ月間で4回の鍼治療が実施された。標準的な経穴(鍼治療のつぼ)が各患者に利用され、それぞれの患者の痛みに応じて、特定のつぼが選定された。

Constant-Murleyという測定法によると、標準治療群では7%の患者しか改善が見られなかったのにに対して、鍼治療を受けた患者の39%は疼痛軽減および身体的機能において著しい改善がみられた。口の渇きに関して、鍼治療群には著しく軽減された患者もいたが、標準治療群では皆無であった。

プラセボ効果をコントロールするために、今後の研究では「偽」の鍼治療を受ける患者群を要するとみられる。

早期膵臓癌を検知するタンパク質バイオマーカー

「PLoS Medicine」誌6月10日号のレポートによると、初期ステージの膵臓癌を示す信頼性の高いタンパク質が血液中に存在することが研究者らによって発見された。この研究の主著者であるフレッド・ハッチンソン癌研究センターのDr. Hanash氏は、実際の診断テストが実施される前に追加の研究が必要であるが、「癌バイオマーカーの発見のための、高度プロテオミック技術およびマウスモデルを応用する突破口」がこの研究によって示されたと述べた。

この研究で使用されたマウスモデルは、前駆病変から進行疾病へ発展するヒト膵臓癌のプロセスに似せて遺伝子組み換えされた。プロテオミック技術を利用し、研究者らはLCN2、REG1A、REG3、TIMP1、そしてIGFBP4の5つのタンパク質のパネルを同定した。これらのタンパク質は膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)という前癌状態の腫瘍があるマウスでは常に発見されたが、対照群である進行癌マウスや健康なマウス群では認められなかった。

5つのタンパク質パネルを実証するために、このパネルを、関係のない別の癌予防研究への参加者13人の血液サンプルと比較検査した。これらの提供者らはサンプルを提供して一年以内に膵臓癌を発病していた。どれが癌患者または対照群からのサンプルなのかは「盲検化」されていた。5つのタンパク質パネルは癌を発病した患者のサンプルからは常に確認され、新規に膵臓癌と診断された患者の80%で上昇する別のタンパク質マーカーCA19.9と組み合わせると、この試験はより正確であった。

次の段階では、NCI早期発見研究ネットワーク(NCIのMouse Models of Human Cancers Consortium(ヒト癌のマウスモデルコンソ-シアム)と共に、本研究へ一部共同出資も行っている)の後援のもとに、膵炎(膵臓の炎症)と膵臓癌の判別におけるバイオマーカーパネルの精度の確認のための研究、および膵臓癌リスクが高い患者らにおける早期発見への有用性を評価する継続した研究が盛り込まれる。

増加傾向にある癌の初期治療にかかる費用

米国における初期癌治療の特定要素にかかる費用の動向を調査した初の研究によると、1991年から2002年の間に初期治療にかかったメディケア費用(高齢者向けの医療保険制度の医療費)は、乳癌、大腸癌および肺癌において著しく上昇したが、前立腺癌については著しく減少したことが見いだされた。これらの結果は、Journal of the National Cancer Institute誌6月10日号にて発表され、国民が高齢化するにつれて米国の癌患者数が増加し、これによってもたらされるメディケアへの財政的難問が浮き彫りにされていると著者は述べている。

NCIのSEERメディケアデータベースの65歳以上の新規に診断された乳癌、大腸癌、肺癌および前立腺癌の30万6709人の関連データが研究に用いられた。評価に含められたケアは、初期治療期間(診断前2カ月から診断後12カ月までの期間と定義される)に受けた癌関連手術、化学療法、放射線療法、入院であった。入院した患者の割合と、癌関連手術、化学療法、放射線療法を受けた患者の割合、および患者1人に対するこれらの医療費の平均コストが評価された。

インフレーションの調整を行った後、研究者らは1991年から2002年の間に患者1人当たりの費用がそれぞれ肺癌は7,139ドル、 大腸癌は5,345ドルそして乳癌は4,189ドル増加したことを発見した。前立腺癌は前立腺全摘手術の減少によって196ドル費用が減少した。最も著しい増加がみられた原因は、乳癌、肺癌、大腸癌で化学療法を受けた患者数の増加と、患者1人当たりにかかる化学療法の平均費用の上昇によるものである。同時に、放射線治療を受けた乳癌および前立腺癌患者の割合と、その費用は上昇していたが、全メディケア費用の最も多くを占めたのは初期治療期間中の入院費であった。

この研究は、新しくて、より高額の化学療法およびエルロチニブやベバシズマブのような分子標的薬が導入される以前に終了したことに著者は言及している。「これらの新薬が初期癌治療の全メディケア費用にもたらす影響を評価することが、今後の研究で優先事項の一つとなるだろう」と本研究の主著者である、NCIの癌制御・集団科学部門(Division of Cancer Control and Population Sciences)のDr. Warren氏は述べた。

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豊、佐々木了子 訳
島村義樹(薬学)、林 正樹(血液・腫瘍科) 監修
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