2008/06/24号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/06/24号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2008/06/24号◆癌研究ハイライト

NCI Cancer Bulletin2008年06月24日号(Volume 5 / Number 13)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

____________________

癌研究ハイライト

アフリカ系アメリカ人の乳癌検出率が支援活動により改善

アフリカ系米国人女性の乳癌による死亡リスクは高く、白人女性よりも後期のステージで乳癌が発見される傾向があることがその理由の一つと考えられる。Cancer誌オンライン版に本日発表される新たな研究成果では、地域社会に対する教育面の支援活動、および癌と診断された患者に助言を与えて導く患者ナビゲータープログラムを実施することによって、癌と診断された時点でのアフリカ系米国人女性と白人女性の間でステージの差が縮まることを示唆している。

Dr.Sheryl G.A Gabram氏らは、乳癌患者から得たデータを解析した。対象患者の89%はアフリカ系アメリカ人で、2001年から2004年の間にアトランタにあるグレイディー記念病院のエイボン基金総合乳がんセンターで治療を受けた。この期間に、多くの患者がこの病院に通っている地域住民に対して、彼らの意識の向上および乳癌の自己検診と乳癌マンモグラフィー検診の促進のために、125人の訓練を受けた地域健康促進者 (CHAs)が1000回を超える双方向的な説明会を、教会、学校、職場そして地域の健康フェアで実施した。20人のCHAがさらに患者ナビゲーターとして訓練を受け、診断を受けた患者がサービスおよび治療を最大限に受けることができるように手助けした。

このプログラムが始まって3年後、地域の基幹病院で全乳癌患者を対象とした横断研究が行われ、非浸潤性乳癌と診断された女性の割合は2倍に増えたが、ステージ4の乳癌と診断された割合は3分の1以上低下していた。

この結果は、癌と診断された女性達が推奨治療ガイドラインに従えば、その予後と最終的な転帰に対して意味があると著者らは考えている。横断試験のデザインからは、観察された診断時ステージのシフトがこれらの介入によって引き起こされたとは必ずしも実証されないことを銘記している。その一方で、CHAおよび患者ナビゲーターが患者個別の転帰に与える影響との関連性を調べる前向き研究を継続している。

オステオポンチンは骨髄細胞を利用して腫瘍増殖を促進

乳癌細胞が分泌するオステオポンチン(osteopontin)というタンパク質が、骨髄細胞(BMC)を利用して、遠位にある不活発な腫瘍の増殖を促進することがホワイトヘッド医学研究所によって示された。彼らの報告は6月13日のCell誌に掲載されている。

研究者らは、マウスの片方の脇腹に緩慢性(増殖の遅い)乳癌細胞株を注射し、もう一方の脇腹には、増殖の速い腫瘍細胞株2種のうち1つを試験群に、対照群にはマトリゲル(細胞を入れておく注射用溶媒)をプラセボとして注射した。

試験群マウスの緩慢性細胞における腫瘍の増殖速度は、プラセボ投与群のマウスと比べて約10倍であった。このように増殖が早かった原因は、活動細胞の緩慢性の腫瘍部位への転移ではなく、両脇腹の腫瘍に対するBMCの動員の結果、注射された細胞の成長が促進されたことにあった。

既知の80種類のヒトサイトカインの血漿中濃度を測定したところ、オステオポンチンがBMCの動員とそれに続く腫瘍の増殖に必要な因子であることが判明した。オステオポンチンは炎症、血管新生、転移にかかわる糖タンパクであり、転移性腫瘍のある患者で高濃度に存在することが知られている。しかし、タンパク質を産生するオステオポンチンを正常に発現していない細胞株を導入したところ、それだけでは腫瘍増殖を引き起こすには十分ではなかったことから、他の細胞性要因の関与が示唆された。

「ある種の扇動的腫瘍から分泌される内分泌性因子によって、骨髄機能の活性化は全身レベルで制御できるという科学的根拠が、われわれの研究から得られた」と著者らは結論している。

LYNキナーゼがCMLのイマチニブ耐性に寄与

イマチニブ(商品名グリベック)は、慢性骨髄性白血病(CML)の標準的治療薬であるが、BCR-ABLとよばれる、白血病細胞またはリンパ腫細胞にのみ発現するタンパクを標的とすることで作用する。残念ながら、患者の多くが最終的にはイマチニブを用いた治療に対して耐性ができ、癌が進行する。徐々に発現するBCR-ABLの変異によって、イマチニブ耐性の一部は説明できるが全てにあてはまらないことから、他のタンパク質が何らかの役割を果たしていると考えられる。

Journal of National Cancer Institute誌オンライン版に本日掲載された研究では、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが、LYNキナーゼと呼ばれるタンパクの持続的な活性化が、BCR-ABLに認められる変異とは別に、イマチニブ耐性に関与する因子の一つである可能性があることを示した。

ともに株化細胞系であるBCR-ABL非変異CML細胞株およびBCR-ABL-非変異CMLをもつ患者について検証したところ、イマチニブ治療に反応した患者と細胞では、薬剤はLYNキナーゼの過剰活動を抑制したが、イマチニブ耐性の細胞と患者では、LYNキナーゼは、イマチニブを用いても活動を続けていた。細胞系では遺伝子サイレンシングを、患者ではダサチニブを用いてLYNキナーゼ活性を低下させた場合、この細胞は死滅し、患者は治療に反応した。

興味深いことにイマチニブ反応性細胞株および患者から採取した細胞では、LYNキナーゼの活動はBCR-ABLによって制御されているようであったが、イマチニブ耐性細胞では制御されていないとみられた。

研究者らは、細胞の例数が少ないため、分析を繰り返して行うことが難しかった点に注意を促しているものの、今回の結果はCML患者における標的薬剤の耐性に関する複雑なメカニズムの存在を支持しており、イマチニブ耐性におけるLYN活性の関与とメカニズムは、さらに患者を追加して研究が必要との根拠となると研究者らは結論づけた。

喫煙の影響として死亡リスクが強調される

Journal of National Cancer Institute誌に6月18日に掲載された図表は、様々な要因で10年以内に死亡する個人の確率を、年齢、性別、喫煙状況に応じて、横並びで比較している。

前回版の図表は、NCIが支援した同じ研究者らによって5年前に発表されている。彼らは、米国退役軍人局およびバーモント州およびニューハンプシャー州にある施設に所属している。新しい図表は、最新の死亡率データおよびリスクを算出するために改訂されたアルゴリズムを含む。

現在喫煙している人、以前喫煙していた人、喫煙したことのない人ごとに、年齢特異的な、心臓疾患、脳卒中、肺癌、結腸癌、前立腺癌、肺炎、インフルエンザ、エイズ、慢性閉塞性肺疾患、事故などあらゆる原因による死亡リスク(1000人あたりの死亡数)を計算した。彼らは、米国国立保険統計センターおよび米国統計局から入手したデータを用いた。

図表を見ると、意外にも全年齢層で男性が女性よりも、今後10年間の死亡率が高い傾向とみられること、および喫煙には女性の年齢に5年、男性の年齢に10年加齢する有害な影響がある点である。

この図表は、臨床医と患者が健康のリスクについて話し合う一助となることを意図していると著者らは述べている。「この図表が示す2つの基本要素は、直面している健康リスクを理解するには必要なものです。つまり、そのリスクの大きさおよびリスクを低減する努力のどれに注力するかを理解する上で助けとなる背景情報です」。また、この図表は喫煙予防と禁煙努力のために特に有効であると彼らは付け加えた。

禁煙に関するNCIからのさらに詳しい情報はhttp://www.smokefree.gov、または1-800-QUITNOW (784-8669)の無料の禁煙ダイヤルから入手できる。

******
関屋 昇 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward