2008/07/08号◆スポットライト「毎日の運動で癌を抑制」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/07/08号◆スポットライト「毎日の運動で癌を抑制」

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2008/07/08号◆スポットライト「毎日の運動で癌を抑制」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年7月08日号(Volume 5 / Number 14)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

毎日の運動で癌を抑制

観察研究では、どう控えめに見ても確実にプロスペクティブ研究をすすめるに値する結果が示されている。はじめに乳癌、そして結腸直腸癌において、癌による死亡および再発のリスクは40~50%低下すると発表された。

その原因となったのは最新の標的治療薬でも、斬新な併用療法でもなく、むしろプールの中を何f度も泳いで往復する、植物に根覆いを被せたり、草引きなどの庭仕事に奮闘する、毎朝30分ウォーキングをするといった日常の活動によるものであった。昔からの、いわゆる「運動」である。

最近になって、治療後の定期的な運動を行うことが、治療後、座っていることの多い生活の人に比べて、予後の向上に関連するとの報告が5つの大規模観察研究で得られたため、この度、身体運動が癌治療後の結果に実際に影響を与えるかどうかの初のプロスペクティブ、ランダム化臨床試験が行われることとなった。

「観察研究の結果から、身体運動に関するランダム化試験を行う十分な根拠が得られている」と、治療後の大腸癌患者における試験を主導したアルバータ大学のDr. Kerry Courneya氏は述べる。

癌と運動の関係についての研究において再発や生存率に着目したものはこれまでなかったため、今回の試験は、大きな変化である。

治療後の運動によって、患者からのQOLや倦怠感に関する報告が上向くというプロスペクティブ研究のエビデンスがある」と、NCI癌制御・集団科学部門の応用研究プログラム(Applied Research Program)の副主任であるDr. Rachel Ballard-Barbash氏は述べる。どの種類の運動が再発や生存率の観点から有益であるかを示したエビデンスはないが、癌患者に運動させる方法に関してはよいエビデンスがあると、Ballard-Barbash氏は続ける。

どの程度の運動量でベネフィットが得られるかは幅があるが、癌による死亡率のリスク低下については、運動に関する大規模観察研究によってすでに報告されている。そのうち2つの研究は長期にわたって行われたNurses’ Health Studyからのもので、極めて一貫性がある。

「実に興味深いデータである。関心は高いと思われるため、現時点の問題は、(身体運動に関する)臨床試験の実施が可能か否かである。」と、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター行動科学部門のDr.Wendy Demark-Wahnefried氏は述べる。Demark氏は10年以上にわたり、食事と運動が長期癌サバイバーに対して及ぼす影響について試験を行っている。

NCIは2年前、このような試験をどのようにデザインするのが最善であるかについて検討するワークショップに資金援助し、これらの試験の実施を計画してきた、とDr. Ballard-Barbash氏は述べる。

デューク大学メディカルセンターのタグ・マクグロー研究センター長Dr. Lee W. Jones氏は、最適な試験デザイン(運動の種類、介入法等)を計画するのに有用なデータとともに、運動が腫瘍の増殖を阻害する生物学的機序に関するデータが揃いつつあることについて言及している。

Jones氏によれば、研究者らは、身体運動によってエストロゲン濃度とインスリン濃度(高値は予後不良をもたらす)が抑制され、このことが乳癌患者の治療後の転帰に影響を及ぼす可能性があると推測している。例えば、乳癌患者含む患者群で行われたいくつかの研究では、インスリン濃度が最高値の女性における死亡リスクが3倍であることが一貫して確認されている。

一方、糖尿病や心疾患等、さまざまな問題を抱える患者に関する試験によれば、身体活動がインスリン濃度を低減させる可能性があるという。昨年、De. Jennifer Ligibel氏が主導するダナファーバー癌研究所(DFCI)の研究者らは、早期乳癌に対する補助療法を完了した座りがちな生活習慣の女性において、循環器強化トレーニング法がインスリン値を低減させることを証明した。

「身体運動によって生物学的に何が起こるのかに大変興味がある。われわれは、それがホルモン値の変化によるものであると考えており、データもエストロゲンだけが問題ではないことを示唆しています」と、DFCI乳癌プログラムのLigibel氏は説明する。

しかし、データは決して一貫していない。

「非臨床試験においては、運動による低酸素状態/血管新生の経路の増加が実際に認められるが、インスリンはさほど変化しないことが確認された(これは必ずしも腫瘍のインスリンシグナル伝達が運動によって変化することを否定するものではないとJones氏は注意を促している)。さらに前立腺癌に関する1つの動物モデル試験では、自発的な運動が実際には腫瘍増殖を促進しているとJones氏は付け加えている。

Dr. Courneya氏が主導するCHALLENGE試験は、年末までにカナダで開始され、身体運動の増加が高リスクのステージ2、3の大腸癌に対する治療を受けている患者の無病生存期間(DFS)を改善し得るか否かを検討することになっている(すでに進行しているLISAと呼ばれるカナダの別の臨床試験では、体重減少を主眼にした食事および運動療法が、早期乳癌に対する治療を受けている過体重または肥満女性のDFSを改善し得るか否かについて試験されている)。

本試験の運動の方法は、かなりの成果を挙げている同種の試験、糖尿病予防プログラム(Diabetes Prevention Program)を踏襲している。

「本試験における運動とは様々な運動の組み合わせを想定しています。文献ではもっとも有益な運動として特定の種類を指してはあらず、したがって、ほとんどの参加者はウォーキングをすると予想されること、また自転車に乗ったり水泳をする参加者もいることを考慮して、われわれはエアロビクス運動を奨励する予定です」と、Dr Courneya氏は説明する。

運動の内容には3年間にわたる運動コンサルタントとの直接あるいは電話を介した面接が含まれており、1年目は面接がより頻繁に行われる。

「これは薬を飲むのとは異なる。このようなライフスタイルへの介入は、長い期間継続して行われなければならず、極めて実行し難いものです」と、Courneya氏は認めている。

Ligibel氏も、このような運動法の実行が困難であることに同意しており、「データによれば、食事を変えることのほうが身体運動よりも遵守しやすい」と述べている。

それでも運動が癌の転帰に対して及ぼす影響に関する小規模の研究や試験は増え、他の癌腫へと拡大しつつある。例えば、デューク大学のJone氏のグループは、肺癌手術前および手術後の患者と原発性脳腫瘍患者を対象とする試験を実施している。

「癌罹患後どのような状況であろうとも、運動は誰にでもできます。運動の種類、頻度、激しさを調節すればよいだけです」と、Jones氏は述べている。

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野中希、Oyoyo 訳
後藤 悌(内科/国立がんセンター中央病院)監修
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