2008/07/08号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/07/08号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2008/07/08号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年7月08日号(Volume 5 / Number 14) ~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

____________________

癌研究ハイライト

限局性前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法の有効性は保存的アプローチと同等

Journal of the American Medical Association誌7月8日号に掲載された最新の解析結果によると、高齢者の限局性前立腺癌患者に対してアンドロゲン除去療法のみを行っても、アンドロゲンを除去しない療法に比較して生存期間は改善されない。他の治療選択肢より優れているという明白なエビデンスには欠けるにもかかわらず、アンドロゲン除去療法は限局性前立腺癌に対する一般的な治療法になっていると、著者らは記している。

本試験を実施するにあたり、ニュージャージー州癌研究所の研究者らはNCIのSEERプログラム(Surveillance, Epidemiology, and End Results)およびメディケアの関連ファイルを用いて、1992~2002年に限局性前立腺癌と診断され手術を行わなかった66歳以上の男性の転帰を比較した。この患者群のうち、アンドロゲン除去療法を受けたのはほぼ8000人、アンドロゲンを除去しない、いわゆる「待機療法」を行ったのは約11,400人であった。

アンドロゲン除去療法を受けた患者(半数は30カ月を超える治療を受けた)は、待機療法を受けた患者よりも癌特異的10年生存率が低く(80.1% vs 82.6%)、10年全生存率は同等であった。アンドロゲン除去療法は低分化癌の男性の癌特異的10年生存率をわずかに改善したが、同患者群の全生存期間に有意差はなかったと著者らは記す。

「アンドロゲン除去療法を継続して行うことで、骨折、糖尿病、心疾患や他の有害事象の健康リスクについての報告が増えてきていることから、本治療法を適切に行うためにはさらなる調査が不可欠である」と試験の筆頭著者であるDr. Grace L. Lu-Yao氏は語る。

SNP検査によって乳癌リスクの検査能がわずかに改善

ここ数年で、少なくとも7つの一般的な遺伝的変異(一塩基変異多型:SNP)が、明らかに乳癌に関与していることが明らかになった。この知見が現行の乳癌リスク評価の検査ツールを改善できるかどうかの調査が開始された。NCIの癌疫学・遺伝学研究部門のDr. Mitchell Gail 氏がJournal of the National Cancer Institute 誌に本日発表した解析によれば、その結果は肯定的であったものの、改善程度はわずかであるという。

Gail氏はNCIの乳癌リスク評価ツール(BCRAT)開発チームを主導した。BCRATは女性の家族歴や出産歴に関する質問に基づいたツールであり、この評価ツールは、乳癌予防薬を服用すべきかといった決断をする際に役立つ。

7つのSNPによる評価は女性の乳癌リスクを評価するうえでBCRATほど有益ではないことから、スクリーニング用ツールとして、SNPを用いた評価ツールに切り替えるべきではないことが本試験で明らかになっている。SNPはBCRATと組み合わせることでBCRATの「鑑別精度」、つまり乳癌を発症する女性と発症しない女性を区別する能力をわずかに向上させる。

「SNPはBCRATの鑑別精度を向上させうるものの、その追加効果はわずかなものです。健康状態や家族歴を女性に尋ねるほうがSNPだけに注目するよりもよい結果が得られるかもしれません」とGail氏は語る。

2つのゲノム規模連関研究(GWAS)や、候補遺伝子に関する研究によると、これらのSNPはFGFR2, TNRC9, MAP3K1, LSP1, CASP8、染色体8q、2q35にあるという。

リスク上昇に関与するさらに多くのSNPが同定されれば、このリスク予測モデルは大いに改善されるであろう。しかし、乳癌の遺伝的感受性因子の真相が明らかになった際に、評価を行う必要があるだろう、とGail氏は考える。

非小細胞肺癌のモニタリングに非侵襲的方法が有望

稀な存在である、血液中を循環する循環腫瘍細胞(CTCs)を治療の前後で分析することによって、治療の転帰や治療方針決定に影響を与える遺伝子変異が同定可能であることが、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象とした小規模研究で示された。

New England Journal of Medicine (NEJM)誌の6月2日オンライン版に掲載された試験研究で、マサチューセッツ総合病院の研究者らは研究用のCTCチップデバイスを用いてCTCsを捕らえた。そして、Scorpion対立遺伝子特異的増幅法分析を用いて、上皮成長因子受容体(EGFR)標的薬剤への反応や耐性に関与するEGFR遺伝子変異をもつ細胞を分析した。

「CTCチップとSARMS分析法を同時に用いることで、NSCLC患者の非侵襲的遺伝子の型同定が可能になるかもしれません。この分析法は、患者の治療中に治療方針を決定する際、繰り返し実施することが可能です」と試験研究責任者であるDr.Shyamala Maheswaran氏らは述べた。

CTCチップを用いて、試験に参加した全27被験者から分析のために必要十分な量と純度のCTCを単離したところ、EGFR遺伝子における、いわゆる「活動性型」変異が、全被験者のCTCで検出された。EGFR標的薬剤への抵抗性に関与する特定の変異は、血漿試料に加えてCTCか腫瘍を分子分析に用いることができた20名の被験者のうち55%で検出された。

CTCの減少または増加は、治療に対する反応または疾患の進行にそれぞれ関連していると著者らは述べている。

複数の患者から採取したCTCには、治療中にさらなるEGFRの活性化型変異が生じていることも確認されている。「これは複数の種類の腫瘍クローンの発生を示していると推察している」と彼らは述べている。

関連するNEJMの論評で、テキサス州ハロルド・C・シモンズ総合がんセンターのDr. Joan Schiller氏は、この研究によって基本原理が証明されたことが示されたと記している。「他の研究者が容易にこの方法を実施可能かはまだわからない」と彼女は述べている。

神経膠芽腫幹細胞の特徴が特定される

放射線治療およびテモゾロマイドの治療を受けた神経膠芽腫患者の転帰が低生存率であることに関連する「幹細胞様」遺伝子の特徴がローザンヌ大学の研究者によって特定された。

神経膠芽腫を対象とした2つのプロスペクティブ臨床試験(1つは第2相、1つは第3相)に登録されている患者から採取した80の腫瘍を分析し、6月20日のJournal of Clinical Oncology誌に発表した。ホメオボックス(HOX)遺伝子は発生の段階で重要な役割を果たすが、この遺伝子が支配する特徴が発現している腫瘍をもつ患者は、このような遺伝子上の特徴のない患者に比べて転帰が約3倍も悪かった。

この研究者らは、HOXに由来する遺伝子上の特徴が、神経膠芽腫の治療に一定の効果があるテモゾロマイド/放射線併用療法に対して反応が悪い、幹細胞様の表現型に属していると示唆している。この結果は、このような特徴のある腫瘍は、他の神経膠芽腫と比べると、放射線治療や化学療法に抵抗性のある悪性神経膠腫を引き起こす変異型自己複製前駆細胞を含むという考えを支持している。

この研究成果は神経膠芽腫の転帰を決定する因子を標的とする「様々な治療法の必要性」を強調していると、著者らは示唆している。彼らのデータは、さらに、HOXの関与とは別の作用であるが、EGFR遺伝子を過剰発現している腫瘍が比較的悪い転帰を与えることを示している。

「これらの知見は、神経膠芽腫の治療に対する抵抗性に関与する幹細胞様表現型に関する知識に初めて臨床的な証拠を与えた」とこの研究者らは述べている。彼らは、この特徴が、最近白血病に対して示された自己複製性の特徴を思わせると述べている。

酵母菌由来のワクチンが癌のマウスモデルで免疫応答を引き起こす

NCI癌研究センターの研究者らは、癌の免疫治療を開発する新しい方法について試験を行った。これは、特定の癌腫に対しては免疫応答を引き起こすが、正常な細胞に対しては起こさない癌胎児性抗原(CEA)と呼ばれる腫瘍タンパク質を産生する無害の酵母菌種を遺伝子操作によって作り出す研究である。この研究成果は7月1日号のClinical Cancer Research誌に掲載された。

Dr.Jeffrey Schlom氏が率いた研究者らは、ヒトでは疾病を引き起こさず、他の臨床試験で安全に用いられている酵母菌種である出芽酵母に遺伝子操作行うことで、通常は胎児発育時に血中に発現するものの、健常な個体ではほとんど再発現しない表在性タンパク質(CEA)を発現させようとした。CEAは、特定の癌腫をもつ患者には過剰に発現している。CEAを発現するよう遺伝子操作された大腸癌および膵臓癌のマウスモデルに、研究者らはCEA酵母菌ワクチンまたは熱殺菌済みの遺伝子操作を行っていない酵母菌を対照として注射した。

CEA酵母菌ワクチンを注射されたマウスでは、CD4+およびCD8+T細胞が刺激に応答して腫瘍に対する攻撃を始めた。ワクチンを続けて注射すると(4回まで)T細胞の反応が増大した。ワクチンの投与量が多くなり注射回数が増えると、反応も増加し、結果的に腫瘍は縮小し、全生存率が上昇した。このような結果は、腫瘍が肺に転移したCEAマウスモデルでも認められた。また全例で、CEA酵母菌ワクチンを投与されたマウスは、毒性や自己免疫疾患の症状を示すことはなかった。

出芽酵母は遺伝的操作および培養が容易であり、強い免疫反応を引き起こすものの安全である。「このような特性のため、出芽酵母は癌免疫療法のための運搬体として魅力的である」と著者らは結論している。

******
Okura、関屋 昇 訳
榎本 裕(泌尿器科)、大藪友利子(生物工学) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward