2008/07/22号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/07/22号◆癌研究ハイライト

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2008/07/22号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年7月22日号(Volume 5 / Number 15)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・ナノ粒子による化学療法薬剤の送達および癌転移の抑制
・米国人の受動喫煙曝露率は減少
・遺伝子サインが神経芽細胞腫の治療法を示唆
・移植関連の癌に対する治療手段

ナノ粒子による化学療法薬剤の送達および癌転移の抑制

ごく少量の化学療法薬剤をつけた標的ナノ粒子を用いることによって、周辺組織をほとんど損傷することなく癌の転移を選択的に抑制できることが明らかになった。膵癌や腎癌マウスにおける一連の動物実験では、未治療のマウスと比較して、ナノテクノロジーによる治療は転移発生率を常に90%減少させることを示した。

その結果は全米科学アカデミー会報誌(Proceedings of the National Academy of Sciences)7月8日号オンライン版で報告されたもので、腫瘍の血管新生(増殖や転移に必要な栄養を腫瘍に供給する血管を形成する現象)を阻害する可能性がある新たな方法を提案している。今回の試験を指揮したのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)でCenter of Cancer Nanotechnology Excellence (CCNE:ナノテクノロジーによる癌革新的医療推進センター、米国癌研究所(NCI)によって設立) に参加しているDr. David Cheresh氏である。Cheresh氏は当センターで「高性能」ナノ粒子のプラットフォームの開発に取り組んでいる。

「特に重要で期待できることは、治療したマウスで腫瘍の転移が減少したという事実です」とNCI Alliance for Nanotechnology in Cancer(NCI癌のナノテクノロジー共同体)のプログラムディレクターであるDr. Piotr Grodzinski氏は述べた。

今回の研究は、Cheresh氏のグループが以前明らかにした「インテグリンανβ3と呼ばれるタンパク質は既存の血管ではなく増殖している腫瘍血管でよく見られる」という発見に基づくものである。脂質ベースのナノ粒子は、タンパク質受容体に結合してドキソルビシン(通常は全身に送達されるが好ましくない毒性副作用を伴う化学療法剤)を送達するように設計された。

このナノ粒子を用いて薬剤を封入し標的化することによって、従来の方法と比較して、薬効は15倍も改善したことが試験責任医師らによって確認された。原発腫瘍に対する効果はわずかであったが、ナノ粒子による治療は癌の播種を防ぐ際に効果的であった。固形腫瘍患者の90%以上は転移が原因で死亡することから、研究者らはこの試験結果の重要性に注目した。

Cheresh氏は、CCNEの研究者らはUCSDのムーアズがんセンターの研究者らと協力して血管新生に関わる新たな経路を標的とする新しい薬剤とドキソルビシンを併用する実験を繰り返し継続中であると語った。

米国人の受動喫煙曝露率は減少

7月11日号のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR:有病率・死亡率週間報告)に掲載された報告によると、自己報告による家庭内受動喫煙(SHS)による曝露率およびその他の曝露量変化が血清コチニン濃度(最近のSHS曝露の生物学的指標)で測定されたが、喫煙しない小児、青年および成人においてその値は近年大幅に減少していたということである。

MMWRの分析では、米国全国健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Surveys)のデータを用いて、1988~1994年および1999~2004年における4歳以上の非喫煙者の家庭内SHS曝露および血清コチニン濃度を割り出した。家庭内SHS曝露を報告した米国の非喫煙者の割合は、この2期間で20.9%から10.2%へ減少した。同様に、何らかのSHS曝露を受けた非喫煙者の割合は、83.9%から46.4%へと大幅に減少した。

しかしながら、1999~2004年の期間においても、小児および青年は成人よりもSHS曝露のリスクが依然として高かった:4~11歳の小児のほぼ4人に1人および12~19歳の青年のほぼ5人に1人が家庭内でSHS曝露を受けていたのに対して、20歳以上の成人では20人にわずか1人であった。また、ヒスパニック系でない黒人および低所得層の米国人においてもSHS曝露のリスクは非常に高かった。

著者らは、SHS曝露における大幅な減少は、職場や公共の場所での喫煙を制限もしくは禁止する法律や政策、家の決まりで家庭内での喫煙を認めない世帯数の増加、および米国人の喫煙率低下に起因すると考えている。「今回の研究結果では、最もリスクが高い人々の保護に重点的に取り組むことによって、SHS曝露を減少するための予防努力を継続的に行う必要性が浮き彫りになっています」と著者らは指摘した。

遺伝子サインが神経芽細胞腫の治療法を示唆

研究者の報告によれば、分化誘導療法(癌細胞を再び分化させて成熟細胞にするアプローチ)で使用する2種類の薬剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤とレチノイドの併用が神経芽細胞腫患者に効果をもたらす可能性がある、ということである。神経芽細胞腫とは小児に見られる神経系の癌であり、分化誘導療法はその治療戦略の一つと考えられている。

ダナファーバー癌研究所のDr. Kimberly Stegmaier氏とその研究チームは、神経芽細胞腫細胞を分化させるために、ハイスループットスクリーニング法を用いてHDAC阻害剤との併用使用が可能な薬剤を同定した。神経芽細胞腫細胞の分化に関連する遺伝子のサインを誘発する可能性がある化合物を見つけるために1,000以上の化合物を検査した。

最良の候補化合物は、レチノイドの一種であるオールトランス型レチノイン酸であった。さらなる試験では、HDAC阻害剤とレチノイドを併用することによって、神経芽細胞腫の分化はいずれの単剤使用の場合よりも促進することが明らかになり、その一方で細胞死に及ぼす相乗効果のエビデンスも認められた。併用療法によって、神経芽細胞腫マウスの生存期間は最も長くなった。

全米科学アカデミー会報誌(Proceedings of the National Academy of Sciences)のオンライン版7月8日号に報告された試験結果は、神経芽細胞腫をはじめ、さまざまな癌を患う小児患者におけるこの種の併用薬剤の忍容性が良好であることを示した最近の第1相試験と一致している。成人を対象に単剤としても広範な試験が実施された。

「この作業で最も高揚した点の一つは、試験の完了が近づくにつれて、併用薬剤の忍容性が小児においても良好であることが分かったことです」と小児腫瘍医のStegmaier氏は述べた。「今回の試験によって、この併用薬剤の神経芽細胞腫患者に対する有用性データがますます充実することになります。」

移植関連の癌に対する治療手段

新たな試験の結果によれば、臓器移植患者の15~20%に発生する癌をある種の血管新生阻害剤を用いて予防もしくは治療することができるかもしれないということである。実験室モデルと動物モデルで実施した試験では、臓器移植手術で使用された一般的で効果的な免疫抑制剤は、腫瘍が血管を形成して血液供給を行う上で極めて重要となる血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を亢進することが明らかにされた。今回の試験は7月15日号のCancer Research 誌に発表された。

「移植後VEGF阻害剤を慎重に投与することによって、その後の癌の発生を抑制することができるかもしれません」と試験の主著者であり、ボストン子供病院とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の移植研究センターに所属するDr. Soumitro Pal氏は述べた。「癌を寄せ付けないよう、リスクと効果のバランスを取る方法を考え出す必要があると思っています。」

移植後の患者に癌を引き起こす可能性はいくつか存在するが、今回の試験では、移植手術後の腎癌マウスに存在している「微小腫瘍」の増殖が薬剤シクロスポリンによって促進される可能性があるかという点に焦点を当てていたと著者らは明記している。しかしながら、先ず、腎癌細胞株を用いて、シクロスポリンがVEGF遺伝子の活性化を引き起こすこと、この活性化の程度が用量に依存すること、そしてシクロスポリンがVEGFタンパク質の発現を亢進することを明らかにした。シクロスポリンが細胞内シグナル伝達経路PKCを活性化し、これによってVEGF遺伝子の転写が亢進されることも確認した。

シクロスポリンを投与したマウスでは、未投与のマウスよりも腫瘍の増殖が進行することが認められた。しかし、治療時にVEGF阻害剤を併用することによって腫瘍の増殖速度は低下した。著者らによると、シクロスポリンがVEGFの発現を亢進する可能性があるPKC以外の経路も他の試験で確認されているとのことである。

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豊 訳

小宮武文(呼吸器科/NCI研究員)監修

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