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ヒトパピローマウイルス(HPV)とがん

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何ですか?

HPVは200種類以上あるウイルスの一群で、その一部の型が膣性交、肛門性交、または口腔性交を通じて感染します。

性感染性の型は、低リスク型と高リスク型の2種類に分類されます。

・低リスク型HPVはたいてい疾患を引き起こしません。しかし、少数の型は性器、肛門、口腔、または咽喉やその周辺にいぼを作ることがあります。
・高リスク型HPVは数種類のがんを引き起こすことがあります。高リスク型は約14種類存在します。その内の16型と18型の2種類がほとんどのHPV関連がんを引き起こします。

HPV感染は高頻度で認められます。大半の性交渉のある人々は性交渉のほぼ直後にHPVに感染します。こうした感染の約半数は高リスク型HPVの感染です。

ほとんどのHPV感染はがんを引き起こしません。免疫系が通常HPV感染を抑制するので、がんが生じません。

高リスク型HPVの持続感染はがんを引き起こす可能性があります。HPV感染は時に、免疫系による適切な抑制を受けないこともあります。高リスク型HPVが数年間持続感染すると、細胞が変化し、未治療では時間と共に増悪し、がん化する可能性があります。

HPVワクチン接種はがんを予防することができます。HPVワクチンは病原性HPV感染を予防することで、多くのHPV関連がんや性器いぼ症例を予防することができます。

HPV感染が引き起こすがん

高リスク型HPVの長期持続感染により、HPVが子宮頸部、中咽頭(口腔後部にある咽喉の一部で、軟口蓋、舌根、および扁桃を含む)、肛門、直腸、陰茎、膣、および外陰などの細胞に感染する身体の部位で、がんが生じる可能性があります。

HPVは、これらの器官の内面を覆う扁平上皮細胞に感染します。こうした理由から、ほとんどのHPV関連がんは扁平上皮がんです。一部の子宮頸がんは子宮頸部腺細胞のHPV感染に由来するので、腺がんと言われます。

HPV関連がんは以下の通りです。

・子宮頸がん:ほぼ全ての子宮頸がんはHPVにより引き起こされます。定期検診により、医療従事者ががん化する前の前がん細胞を発見し、切除できることで、多くの子宮頸がんを予防できます。結果的に、米国における子宮頸がん罹患率は低下しています。詳細は子宮頸がんに関する傾向と統計を参照してください。

・中咽頭がん:米国における多くの中咽頭がん(70%)はHPVにより引き起こされます。その新規症例数は毎年増加しており、かつ、中咽頭がんは現在、米国において最も頻度が高いHPV関連がんです。詳細は口腔がんと咽頭がんの診断と生存率における傾向を参照してください。

・肛門がん:肛門がんの90%超はHPVにより引き起こされます。肛門がんによる新規症例数と死亡数は毎年増加しています。詳細は肛門がんに関する統計を参照してください。

・陰茎がん:ほとんどの陰茎がん(60%超)はHPVにより引き起こされます。詳細は希少がんである陰茎がんに対する推奨治療 を受ける重要性を参照してください。

・膣がん:ほとんどの膣がん(75%)はHPVにより引き起こされます。詳細は希少がんである膣がんの症状と治療 を参照してください。

・外陰がん:ほとんどの外陰がん(70%)はHPVにより引き起こされます。詳細は希少がんである外陰がんの新規症例数と死亡率を参照してください。

米国では、高リスク型HPVは女性で全てのがんの3%を、男性で全てのがんの2%を引き起こします。毎年、HPVが頻繁に見つかる身体の部位でがんの新規症例が約44,000例発生し、HPVが約34,000例のがんを引き起こすと推定されることが米国疾病管理予防センター(CDC)による最新統計からわかりました。

全世界では、HPV関連がんの負荷がますます増大しています。毎年、高リスク型HPVは全世界で全てのがんの約5%を引き起こし、かつ、57万人の女性と6万人の男性がHPV関連がんに罹っていると推定されます。子宮頸がんは最も頻度が高いがんで、スクリーニング検査や早期の子宮頸部細胞変化の治療が直ちに実施できない低・中所得国におけるがん関連死の主要原因です。

どのようにしてHPVは感染しますか?

HPVは膣性交、肛門性交、口腔性交、または他の密接な皮膚と皮膚の接触 を介して感染します。HPV感染は性的パートナー間で起こります。コンドームやデンタル・ダムはHPV感染の可能性を減少できるとはいえ、完全に予防できません。

HPV感染は症状を引き起こしますか?

いいえ、高リスク型HPVに感染しても症状は現れません。子宮頸部でのHPVの持続感染が引き起こす細胞の前がん病変も症状を引き起こしません。しかし、身体の他の部位における前がん病変は症状を引き起こすことがあります。また、HPV感染由来のがんは、症状を引き起こすことがあります。詳細は子宮頸がん、膣がん、外陰がん、陰茎がん、肛門がん、および中咽頭がん の徴候や症状を参照してください。

HPVワクチン接種、HPV感染予防

HPVワクチンガーダシル9は、9種類の型のHPV(多くの性器いぼを引き起こす2種類の低リスク型と、多くののHPV関連がんを引き起こす7種類の高リスク型)による感染を防御します。

HPVワクチン接種は新規HPV感染や一部のがんを含むHPV関連疾患の予防用に、CDC米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunizations Practices:ACIP)により推奨されます。

HPVワクチン接種はHPVの新規感染に対して高い防御効果を示すとはいえ、ワクチン自体はHPV感染やHPV関連疾患を治療しません、また、治療薬として使用されません。HPVワクチン接種はHPVに曝露する前に受けると、最大の防御効果を示します。

どのような人がHPVワクチン接種を受けるべきですか?

HPVワクチン連続接種は11、12歳の男女児に対して推奨され、また、9歳で開始できます。15歳までに連続接種を受け始めた小児はワクチンの2回接種を受ける必要があります。接種スケジュール通りに接種を受けなかった若年者に対して、HPVワクチン接種は26歳まで推奨されます。なお、15歳以上で初回接種を受けた人はその3回接種を受ける必要があります。

HPVワクチンは年長者に接種できますか?

はい。HPVワクチンは早期連続接種歴がない27~45歳の成人に接種できます。こうした年代の成人は既にHPVに曝露されている可能性が高いため、HPVワクチンから利益は受けにくいです。とはいえ、新規HPV感染リスクがあることを懸念する場合は、HPVワクチンが適しているかどうかに関して、担当の医療従事者に相談する必要があります。

詳細はヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン を参照してください。

HPVとHPVが引き起こす細胞の変化のスクリーニング

スクリーニング検査は症状が何もないときに病気を調べるための検査です。子宮頸がんスクリーニングの目的は、細胞ががん化する前で、治療ががん発生の抑制に有効なときに、細胞の前がん病変を早期発見することです。子宮頸がんは現在、FDA承認のスクリーニング検査が実施可能な唯一のHPVが引き起こすがんです。

子宮頸がんのスクリーニング

子宮頸がんのスクリーニング検査は以下の通りです。

・HPV検査は子宮頸部細胞における高リスク型HPVの有無を調べます
・パップテストは高リスク型HPVが引き起こす子宮頸部細胞の変化を調べます
・HPV検査とパップテストの同時検査は高リスク型HPVと子宮頸部細胞の変化の両者を調べます

これらのスクリーニングの対象年齢と間隔は大多数の女性に適用されます。

・21~29歳: 3年毎にパップテスト
・30~65歳: 以下のうち1つの検査を行う
      ・5年毎にHPV検査
      ・5年毎にHPV検査とパップテストの同時検査
      ・3年毎にパップテスト
・65歳超: 定期検診を受けており、かつ、最近10年間の検査結果が正常であり続ける場合は、子宮頸がんのスクリーニングがもはや必要ではないという指示を受けることがあります。直近のパップテストやHPV検査で異常が認められた65歳超の女性に対して、スクリーニングを続行する必要があります。

詳細はHPV検査とパップテストを参照して、パップテストでの異常が見つかる、またはHPV検査結果が陽性を示した後の次の段階に関する情報を得てください。検査結果と年齢に応じて、女性は12か月後に検査を再度受ける、または、コルポスコピーという検査を受けて、医療従事者が子宮頸部を検査し、必要に応じて分析用に組織検体を採取(生検という手法)できるようにすることがあります。

女性で長年の間HPV検査結果が陰性を示した後、陽性を示す場合は何を意味しますか?

時には、HPV検査結果が陰性を数回示した後でも、陽性に転じることがあります。これは必ずしも新規HPV感染の徴候ではなく、女性やそのパートナーに新たな性的パートナーがいるという意味ではありません。HPV感染は時に数年も後に再活性化することがあります。他のウイルスも同様に振舞います。実例として、水痘・帯状疱疹ウイルスは後年に再活性化して、帯状疱疹を引き起こす可能性があります。新規陽性というHPV検査結果が新規感染の徴候、または、かつての感染の再活性化の徴候かどうかを識別する方法は存在しません。HPV感染の再活性化が新規HPV感染と同様に、前がん病変やがんの発生リスクがあるかどうかは不明です。

他のHPV関連がんのスクリーニング

肛門組織、直腸組織、外陰組織、膣組織、陰茎組織、または中咽頭組織におけるHPV感染やHPVが引き起こす細胞の変化を検出する検査は存在しますが、FDAに承認されていません。しかし、男性と性交渉をしている男性やHIV陽性の男性などのHPV感染リスクが高い集団では、肛門パップテストが早期の細胞変化や前がん細胞の検出に役立つ可能性があるというエビデンスがいくつか存在します。肛門パップテストでは、肛門細胞検体における異常細胞の有無を調べます。

HPV感染が引き起こす細胞変化の治療

HPV感染自体は治療できませんが、高リスク型HPV感染が引き起こす細胞の前がん病変に対する治療法は存在します。

・子宮頸部細胞の前がん病変:子宮頸部細胞の前がん病変を有する女性はループ型電気メス切除術(loop electrosurgical excision procedure:LEEP、異常組織の切除術)による治療を受けます。詳細は、子宮頸部細胞の異変に対する治療法を参照してください。

・膣、外陰、陰茎、および肛門の細胞の前がん病変、性器いぼ、ならびに良性気道腫瘍:治療法には、外用薬、外科的切除、凍結手術、およびLEEPなどがあります。

・HPV関連がん: HPV関連がんを発症する患者は通常、同じ部位に存在するHPV非関連腫瘍を有する患者と同様の治療を受けます。ただし、HPV陽性中咽頭がん患者は、HPV陰性中咽頭がん患者と異なる治療を受けることがあります。詳細は、中咽頭がんに対する治療選択肢 を参照してください。

HPVはどのようにしてがんを引き起こしますか?

高リスク型HPVが細胞に感染すると、これらの細胞同士が情報を交換し合う機序に干渉し、感染細胞を無秩序に増殖させます。HPV感染細胞は通常、免疫系に認識され、抑制されます。しかし、HPV感染細胞が残存し、増殖し続けることがあり、最終的には前がん細胞領域が形成されます。また、未治療だとがん化する可能性があります。研究から、HPV感染子宮頸部細胞ががん化するためには、10~20年、またはそれ以上の期間を要することが分かっています。

子宮頸部細胞が高リスク型HPVに感染している女性で、以下のいくつかの因子が、感染が長期持続し子宮頸部細胞の前がん病変を引き起こす可能性を高めます。

・多子出産
・経口避妊薬の長期使用
・喫煙

NCIとHPV関連研究

臨床試験は、HPVが引き起こすがんなどの疾患を予防、診断、および治療するためのより優れた方法を突き止める重要な段階です。NCIがん情報サービスでHPVに関する臨床試験を知ることができます。

NCIはHPVに関して理解を深める研究を実施し、資金を提供しています。

・がん疫学・遺伝学部門(the Division of Cancer Epidemiology and Genetics:DCEG) は、HPVががんを引き起こす機序に関する理解を前進させるために、子宮頸がんとその他のHPV関連がんに関する研究を実施しています。前がん性病変の早期発見を目的とする最も効果的な方法を確定するためにスクリーニングの実践を評価し、人的・物的資源の乏しい環境でより容易に使用可能な新規スクリーニング方法の開発・評価を行い、かつ、医療従事者が異常なスクリーニング検査結果を追跡調査できるよう、診療所でのリスク評価用手法を改良します。DCEGの研究者らは、HPVワクチンにおける最初の集団ベース臨床試験を実施しました。DCEGは現在HPVワクチンの1回接種に関する臨床試験を実施して、1回接種がHPV由来子宮頸がんの予防に十分かどうかを確認しているところです。

・がん予防部門(the Division of Cancer Prevention:DCP)は、HPV関連がんと関連疾患の予防と、早期発見に関する研究の開発を実施かつ推進しています。

・がん管理・集団科学部門(the Division of Cancer Control and Population Sciences:DCCPS)は、HPV関連の研究で検証済みの介入プログラムとHPVワクチン接種率が低い地域におけるその普及を促進するための実施戦略の調査を支援します。

・がん研究センター(the Center for Cancer Research:CCR)は、最先端のがん関連研究を探求している研究者や臨床医の拠点です。CCRの研究者らは、HPVなどの幅広い生物学的かつ生物医学的問題に取り組んでいます。なお、HPVワクチンの初期開発と特性解析をもたらした研究を実施しました。

翻訳渡邊 岳

監修高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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