2008/08/19特別号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/08/19特別号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2008/08/19特別号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年8月19日「個別化癌医療」特別号(Volume 5 / Number 17)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

____________________

癌研究ハイライト

・化学療法またはタモキシフェン後は乳癌再発のリスクが低下
・新モノクローナル抗体薬が再発非ホジキンリンパ腫患者に奏効
・骨への臍帯血移植が血球を回復させる
・食道腺癌発生率が男女ともに上昇
・癌患者の自殺リスクは一般集団より高い
・ビタミンC注射によりマウスの腫瘍増殖が遅延

化学療法またはタモキシフェン後は乳癌再発のリスクが低下

化学療法またはタモキシフェンなどの全身補助療法を開始し5年後も無病の状態である乳癌サバイバーのうち、再発が見られるのは比較的少数である。しかし、さらに再発率を低下させるため予防的治療が必要であるという臨床試験からの報告が8月11日号のNational Cancer Institute誌オンライン版に掲載された。

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Abenaa Brewster氏らが1985年から2001年の間に化学療法、タモキシフェン、またはその両方の治療を受けた2,838人の女性において乳癌再発を追跡したところ、ステージ1の乳癌と診断されたサバイバーの7%、ステージ2の乳癌で治療を受けた女性の11%、およびステージ3乳癌女性の13%で乳癌が再発した。

癌のステージに加えて、腫瘍のグレード、ホルモン受容体の状態、および内分泌療法が再発のリスクと関連した。しかし、全般的に、試験集団の89%は5年時(女性の初期診断約10年後)に再発しておらず、80%は10年時(診断約15年後)にも再発していなかった。

全体的な結果が患者にとって希望を与える一方で、その試験は閉経前乳癌サバイバーに対するリスク低減治療の方法を向上させる必要性も強調したと研究者らは述べている。レトロゾール(フェマーラ)での長期補助療法は、5年間のタモキシフェン療法を終了したホルモン受容体陽性腫瘍を有する閉経後女性に対し使用可能である。しかし、閉経前の女性に適応となる類似の療法はない。

その試験の制限事項としては、トラツズマブ(ハーセプチン)または5年間のアロマターゼ阻害剤による補助療法を受けた女性が含まれていなかったことである。HER2/neu状態に関するデータは得られず、集団ではアロマターゼ阻害剤の投与を受けていた女性はほとんどいなかった。

新モノクローナル抗体薬が再発非ホジキンリンパ腫患者に奏効

第1相臨床試験の結果によると、強力な免疫システム細胞を癌細胞に引き付ける新しいタイプのモノクローナル抗体による治療が、前治療後再発した非ホジキンリンパ腫(NHL)患者の一部において腫瘍縮小およびNHLの寛解をもたらした。

8月15日号のScience誌に掲載されたこれら38人の患者の結果によると、blinatumomab(ブリナツモマブ)と呼ばれる小量の二重特異性T細胞結びつけ(bispecific T-cell engager:BiTE)抗体は、一部の患者で部分寛解および完全寛解をもたらしたのみでなく、NHL再発の重要な発生源と考えられる骨髄中の癌細胞を除去できたことが示された。全体として、その試験で最も高用量を使用して治療された7人の患者は腫瘍の縮小が認められたと、試験の主著者であるドイツのヴルツブルグ大学のDr. Ralf Bargou氏らは報告している。1人の患者で腫瘍縮小は13ヵ月以上持続し、別の3人の患者では6ヵ月以上持続して縮小がみられた。「1日0.03と0.06 mg/m²のblinatumomab投与を受け、奏効している患者では、これまでのところ再発は認められていない」とその試験の著者らは報告している。

標的とする細胞(今回の場合はリンパ腫細胞)に結合し、T細胞を引き付けて活性化させることでこの抗体は作用し、その後T細胞は溶解として知られるプロセスを介して癌細胞を破壊する。Blinatumomabはメリーランド州ベセスダ拠点とするMicromet Inc.社によって開発され、メリーランド州を拠点とする別のバイオテクノロジー企業であるMedImmune社の協力により臨床試験が実施されている。

試験の共同著者でありMicrometの主任研究者であるDr. Patrick Baeuerle氏は、「その試験で使用された用量は、この疾患において腫瘍縮小を得るために従来のモノクローナル抗体が必要とした血清濃度よりも約5桁も少ない量です。これは、blinatumomabによって動員された細胞傷害性T細胞の高い抗腫瘍活性と関連するかもしれません」と説明した。いくつかの他のBiTE抗体は、別の癌種に対しても初期の臨床試験が行われている。

骨への臍帯血移植が血球を回復させる

予備臨床試験において、骨盤骨の腸骨稜内への直接注入を介して臍帯血幹細胞移植を受けた急性白血病患者の大部分で、平均36日以内に完全な血液学的回復、すなわちドナーの幹細胞により生産された正常白血球および血小板の修復がみられた。

静脈注射による臍帯血幹細胞送達について行われた以前の臨床試験では、約20%の患者で静脈による移植が生着しないことを示していた。8月9日号のLancet Oncology誌オンライン版に掲載された今回の試験では、血球を形成する骨髄内に直接送達する場合、臍帯血移植(骨髄移植より少ない量の幹細胞数を供給する移植)は安全かつ成功率がより高いか否かが検証された。

イタリアのジェノバにあるSan Martino病院のDr. Francesco Frassoni氏によって指揮された試験責任医師らは、骨髄移植に適格であるものの、HLA適合ドナーを見つけることができなかった32人の患者を登録した。化学療法単独または放射線併用によるコンディショニング後、全ての患者は左腸骨稜内、右腸骨稜内、または両方の部位内に臍帯血移植を受けた。全ての患者は移植片対宿主病(GvHD)を予防するため免疫抑制剤の投与を受けた。

移植から12日以内に4人の患者が死亡し、1人の患者が移植の30日後、血小板の回復前に死亡した。残る27人の患者は、片側または両側の部位内への注入にかかわらず正常な血球に回復し、45%が移植後も1年以上生存した。静脈内移植を用いたその他の試験では、移植後100日時点での血小板の回復率は40%から70%しか示されていなかった。

参加者のいずれも高グレードの急性GvHDを来たさなかった。その他の試験では、静脈内臍帯血移植でのGvHDの発現率は35%から45%を示していた。

著者らは、彼らの発見は、より長期間にわたり患者の追跡を行うさらに規模の大きい試験で確認される必要があると警告している。

食道腺癌発症率が男女ともに上昇

ここ30年の間、米国の白人男性における食道腺癌の発症率が上昇していることが新しい研究により確認された。白人女性でも同様の発症率上昇が指摘されている。しかしながら、食道癌はそれでも極めてまれな癌であり、米国での2008年の新規症例数は16,500件未満と予測されている。

本研究はNCIの研究者らがSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)のデータベースから1975年から2004年までに食道癌と診断された白人患者約23,000人分の情報を利用して実施したもので、食道腺癌の発症率が白人男性で460%以上、白人女性で335%上昇していることが判明した。NCIの癌疫学・遺伝学研究部門のDr. Linda Morris Brown氏らは、8月11日付けJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版で、登録データのうちアフリカ系米国人およびその他の人種については食道腺癌と診断された例が少なく、有意な分析ができなかったと記述している。

食道腺癌の発症率上昇はすべての年齢層および病期にわたっていた。「しかし食道腺癌の発症率上昇は特に限局性の癌では鈍化していると思われる」と著者は続けており、「食道腺癌発症率が全体的に上昇しているのは、追跡検査や早期診断の強化を反映したものではないだろうということが示された」と述べている。

前回の研究の知見は、「肥満、とりわけ腹部肥満の増加が食道腺癌発症率の上昇傾向の要因の一部であろうことが指摘されている」と明記されている。肥満の人は食道腺癌のリスク要因として知られる胃食道逆流症になりやすく、この胃食道逆流症も米国で増加中である。食道腺癌の前駆状態として知られるバレット食道を何らかの形で防御するとみられる細菌ヘリコバクター・ピロリの感染が減少したことも、この傾向と関連しているかもしれないと著者は述べている。

癌患者の自殺リスクは一般集団より高い

8月11日付けJournal of Clinical Oncology(JCO)誌オンライン版に掲載された研究によると、米国の癌患者における自殺率は一般集団の2倍近くに及び、どの部位の癌であるかによって自殺率が異なるという。自殺リスクは癌の診断後15年間高い状態が続く。

Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)に収載の1973年から2002年に癌と診断された360万人の患者データをもとにワシントン大学の研究者が解析した。このデータには自殺例が5,838件含まれるが、これをNational Center for Health Statisticsより収集した米国の一般集団のデータと比較した。癌患者の自殺率補正値は100,000人年あたり31.4件、一般集団では16.7件だった。自殺率は肺癌・気管支癌(81.7)、胃癌(71.7)、口腔癌・咽頭癌(53.1)、喉頭癌(46.8)の患者で特に高かった。

同じ号のJCOでは癌と自殺の関連性を調べた研究がもう2本掲載されている。2つ目の研究はニュージャージー州のメディケア適用患者のデータを使用したもので、「中高年層の癌患者の自殺リスクは、精神疾患や1年以内の死亡可能性が自殺のリスク要因である点を加味しても、他の疾患の患者に比べて高い」という知見が得られた。3つ目の研究は英国エジンバラの癌センターの患者を対象に実施したもので、「相当数の癌の外来患者が死んだほうがいいと考えたり、自傷行動を考えたりしたことがあると話した」という。

ロチェスター大学医学研究センターのDr. Timothy Quill氏は論説のなかで、「これらの研究で興味深く、重要と思われるのは、重病患者が自殺を考えること、および関連するリスク因子は比較的よく知られるが、癌生存者や癌と生きる患者にとっても同様に大きな意味をもつと思われる点だ」と述べている。

ビタミンC注射によりマウスの腫瘍増殖が遅延

進行癌を有するマウスに高用量のビタミンCを注射すると、正常組織に影響を及ぼすことなく腫瘍の増殖を有意に遅らせたと研究者らは報告している。ビタミンC(アスコルビン酸)の抗癌効果の可能性については数十年にわたり研究されているが、今回の知見はビタミンCがヒトの癌を治療する薬物として認められるための「確固とした基盤」となる、と8月5日付け米国科学アカデミー会報誌に掲載された。

ビタミンC注射の効果を調べるため、米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)のDr. Mark Levine氏らは、進行性の脳腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍を移植したマウスに高用量のアスコルビン酸を静脈内または腹腔内投与した。ビタミンC注射を行ったマウスでは、移植後に処置を行っていないマウスに比べ腫瘍の増殖が約半分に減少した。

投与方法の違いが効果に決定的な差を生むとみられる。ビタミンCを経口投与した場合、人体は血中アスコルビン酸濃度が少しでも過剰になるのを防御してしまう。NCIが支援した過去2件の臨床試験においてビタミンCを経口投与しても生存期間の改善がなかったのは、この理由によるものと思われる。1985年に発表された2つ目の研究以後、癌にビタミンCを用いることの科学的な関心は薄れ、補完医療や代替医療を実施する一部の医師が癌患者に高用量のアスコルビン酸投与を継続していた。

今回の新知見では、アスコルビン酸投与による過酸化水素の形成が抗癌活性につながっていることが示唆された。本研究により、患者へのビタミンC投与に関する臨床試験実施のためにこれまで強く求められてきた生物学上の論拠がようやく得られたと、 付随の論説で述べられている。

ビタミンC投与ではマウスを完全に治癒させることはできなかったため、高用量アスコルビン酸の静脈注射については人での他の癌治療法との併用を研究するべきだ、と本研究の著者らは提案している。

******

湖月みき、橋本 仁 訳

林 正樹(血液・腫瘍科)、九鬼貴美(腎臓内科)監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward