2008/08/19特別号◆「創薬の新たなパラダイム」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/08/19特別号◆「創薬の新たなパラダイム」

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2008/08/19特別号◆「創薬の新たなパラダイム」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年8月19日「個別化癌医療」特別号(Volume 5 / Number 17)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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創薬の新たなパラダイム

最近まで、抗癌剤の開発は細胞毒性化合物に焦点が当てられてきた。これらの薬剤は癌細胞を殺すが、正常な細胞を殺すこともあり、従来の化学療法の毒性の原因となっていた。しかし、細胞を癌化させる分子生物学に対する理解が最近急激に深まってきたことから、研究者の関心は癌細胞の分子特性を特異的に標的とする薬剤へ向くことになった。ほとんどの標的薬剤は、癌細胞を破壊することなくその増殖を阻止する。

現在では、開発中の抗癌剤の過半数がこのような標的薬剤である。「前臨床試験で開発中の薬剤は恐らく、2/3が標的薬剤で1/3が従来の細胞毒性薬剤でしょう。5年前、その割合は逆でした」と米国国立癌研究所(NCI)癌診断治療部門(DCTD)ディレクターのDr. James Doroshow氏は述べる。

標的薬剤の開発は、創薬に取り組んでいる研究者に一連の新たな課題を提起している。「細胞毒性薬剤を模索しているのであれば、腫瘍細胞を殺す化合物が対象となります。標的薬剤については、先ず最初に、自ら関心がある分子経路を実際に知らなければなりません」とDCTDの副ディレクターであるDr. Joseph Tomaszewski氏は説明する。「標的(例えば、タンパク質や遺伝子)の調節障害もしくは突然変異は、様々なタイプの腫瘍の形成、増殖、および転移にどのように影響を及ぼすかについて、明確に理解していることが必要です。」

NCIのDCTDおよびその他の部門は、特に標的薬剤用に設計されたより新しいスクリーニング法のニーズに対応しているところである。あるプロジェクトでは、細胞毒性化合物のスクリーニング用に15年以上も使用されてきたNCI-60 cell screenの機能を拡張している。新薬がどのように分子レベルで癌細胞に影響を及ぼすのかを理解するために「新しい[標的>薬剤がどのように細胞内の多数の遺伝子―そうですね、50~60の異なる細胞型全体で3万の遺伝子―の発現に影響を及ぼすのかを理解しようとしています。つまり、NCI-60を機能的なゲノムスクリーニングとして使用できるかどうかを理解しようとしているのです」とDoroshow氏は説明する。

NCIのヒト癌のマウスモデル・コンソーシアム(Mouse Models of Human Cancers Consortium)(MMHCC)を通して、NCIは製薬会社やバイオ企業の薬剤の前臨床試験でマウスモデルの使用を推進するために、関係を築き民間企業とのパートナーシップを強化している。 「多くの企業が、様々な癌モデルで試験するために自社の主要化合物をコンソーシアムの実験室へ提供しています」とNCIの癌生物学部門(Division of Cancer Biology)の副所長でNCIのMMHCCプログラムディレクターであるDr. Cheryl Marks氏は述べる。「これは、民間企業に前臨床研究で遺伝子操作マウスを使用することを周知させる一つの方法です。目標は、第2相および第3相臨床試験にとって最も有望な選択肢となる腫瘍細胞を企業が同定できるようにすることです。」

標的薬剤の開発におけるもう一つの大きなニーズは、信頼できる、再現性のある薬理学的測定―薬剤が体内で細胞の分子の働きにどのように影響を及ぼすかについての測定である。「研究者が長年にわたって使用してきた多くの薬理学的試験は、ある程度は機能しますが厳密に開発および標準化されていません。その結果、企業側はデータに全幅の信頼を置いていないのです」とTomaszewski氏は言う。「私たちは、標的に影響を及ぼしているかどうかについて今よりも早期の判断を下すことができるようになる、より標準化された試験の開発に着手しています。そうすることによって、企業側は、開発経路をそのまま進み続けるかもしくは特定の薬剤について研究を中止するかどうかをより早い段階ではっきりさせることができるのです。一旦前臨床作業の先へ進むと、多大な費用を費やすことになります。薬剤が第3相試験の後期で不合格になれば、途方もない額の資金を無駄にしてしまいます。」

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豊 訳

小宮武文(呼吸器科/NCI研究員)監修

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