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2008/09/09号◆特別レポート「神経芽細胞腫の原因となる遺伝子変異が判明」

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2008/09/09号◆特別レポート「神経芽細胞腫の原因となる遺伝子変異が判明」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年09月09日号(Volume 5 / Number 18)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特別レポート

神経芽細胞腫の原因となる遺伝子変異が判明

10年以上もの間、Dr. John Maris氏は神経芽細胞腫の子を持つ親たちからこの癌の原因は何であるかと尋ねられてきた。その答えは今現在でも出ていない。しかし、フィラデルフィア小児病院(CHOP)において彼のチームが主導する新たな研究は、来年早々にも遺伝子検査と臨床試験の実施に結びつく手掛かりを提供し始めるであろう。

研究者らは、この疾患の遺伝型を持つ大多数の家族のALK(anaplastic lymphoma kinase)遺伝子に存在する生殖細胞系列変異を特定した。ALKは癌遺伝子として知られており、これを標的とする複数の薬剤が開発中であるため、この発見は俄然興味を引くこととなった。チロシンキナーゼ受容体であるALKタンパクは、細胞増殖の調節を助け、癌を異常に活性化するかもしれない。

「これは非常に興奮する発見です」と、この研究には参加していない神経芽細胞腫専門医であるシカゴ大学のDr. Susan Cohn氏は語った。「上手くいけば、この発見は、将来、神経芽細胞腫の患者へのアプローチに劇的な影響を与えるでしょう」。

家族性神経芽細胞腫はこの疾患全体のわずか1%ではあるが、より一般的な非遺伝型のものにおいても腫瘍が増殖・転移した場合にALK変異が起きることがある。研究者らは、ハイリスク神経芽細胞腫の腫瘍サンプルの12%にALK変異が生じており、そして、その遺伝子は腫瘍の5%まで増幅される(複数のコピーの中に存在する)と解析した。

神経芽細胞腫は幼児期の交感神経系細胞が形成されるときに発生し、しばしば胸や腹に腫瘍となって出現する。この疾患の子供の半数はハイリスク型で、長期生存率はよくて40%、そして標準治療に抵抗性を示すことも多い。

この知見は先月号のNature誌オンライン版に掲載され、研究者らは、ALK変異が一部の神経芽細胞腫患者の病状を進行させているようだと結論付けた。昨年春の学術会議で、初めて研究結果が発表される以前から、他の検査所見では、この疾患はALK変異と関連していた。

2009年初めころまでに、遺伝子検査が実用可能になるとみられている。この検査は、ALK変異が隠れている神経芽細胞腫患者の家族を識別することができるかもしれない。識別された人々は、超音波や尿検査といった非侵襲性の検査によって、慎重にモニターされるようになるかもしれない。ALKタンパクが重要な治療ターゲットとなることが判明したら、この検査は治療指針として広く普及するかもしれない。

Maris氏と共同著者である同じくCHOPのDr. Yael P. Mossé氏は、神経芽細胞腫の子供にALK阻害剤の試験を来年実施することについて製薬会社と協議をしている。

ALK遺伝子は1994年に大細胞型リンパ腫の患者から発見された。その後、肺や食道を含む複数の癌で影響を及ぼしていることが示されている。これらの疾患ではALKキナーゼを活性化することで起こる細胞増殖によって“転座”が起こり、それによってALK は他の遺伝子と結合する。

遺伝性神経芽細胞腫におけるALKの役割を示すために、研究者らは2人以上がこの病気を発症した10家族のDNAを調べた。この疾患をもつ8家族のALKで3つの遺伝性変異が追跡調査された。

次に200近いハイリスクの神経芽細胞腫のサンプルを分析したところ、自然発生性あるいは非遺伝性では、12%に変異があったことを明らかにした。ALK変異と変異が起きる時の全容を明らかにする作業は現在進行中である。

「神経芽細胞腫を引き起こす突然変異と、引き起こさない突然変異があるように思えます」とMossé氏は述べた。それは、多くの患者で、例えばALKの増幅のような第二の遺伝子の「ヒット」が病気の発症に必要であるということかもしれないと、彼女は記している。

この研究における興味深い発見は、実験的にALKシグナリングを阻害することで、ALK変異ではない細胞であっても神経芽細胞腫細胞の増殖を減らしたことであった。これはALKを標的とすることは正常なALK遺伝子の患者にも恩恵があることを示しているが、しかし研究者らはこれらの質問の答えを得るためには臨床試験が必要であると注意を喚起している。この臨床試験はまもなく開始されるであろう。

「神経芽細胞腫の研究者にとっては、Maris研究室が解明したこの発見を臨床に移すことが最優先となるだろう」とNCIの癌治療評価プログラムのDr. Malcolm Smith氏は述べた。

Smith氏は、Maris氏と一緒にこの疾患の治療ターゲットを特定、立証するためにゲノム戦略を用いた神経芽細胞腫のTARGET試験を指導している。このグループは、すでに別の神経芽細胞腫例でもALK遺伝子と他の遺伝子の配列を解析している。

昨年5月に発表されたゲノムワイド相関解析研究において、Maris氏のグループは、悪性度の高い神経芽細胞腫と関連がある遺伝性変異を含んでいると思われる第6染色体の領域を特定した。その研究と現在の研究は完全に別個のものではあったが、どちらも神経芽細胞腫の遺伝子における新たな識見をもたらしたとMaris氏は記している。

「この病気の原因について、現在のわれわれは、1年前に比べてはるかに多くのことがわかっている」と彼は述べた。

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Nogawa 訳

大藪友利子 (生物工学) 監修

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