2008/09/09号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/09/09号◆癌研究ハイライト

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2008/09/09号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年09月09日号(Volume 5 / Number 18)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・緩和ケアのための医療指導が入院コストを低減
・癌による倦怠感に対する治療の必要性
・科学的根拠に基づいた疼痛緩和のための指針を発表
・HPVワクチンの医療および経済効果の数学的モデルによる評価
・前立腺癌を対象とした免疫療法の第3相臨床試験が中止に

緩和ケアのための医療指導が入院コストを低減

重い疾患を抱える患者に対し、標準的な治療とあわせて緩和ケアの医療指導を行うことにより、入院費用を大幅に削減できるとThe Palliative Care Leadership Centers’ Outcomes Group(緩和ケア・リーダーシップセンター内アウトカム団体)の研究者らが報告した。このグループが行った分析結果は昨日のArchives of Internal Medicine誌に掲載され、緩和ケアのための医療指導を受けて退院した生存患者では1日当たり$279のコストが削減でき、緩和ケア指導を受けながら入院中に死亡した患者では1日当たり$374のコストが削減できたと報告している。このような医療指導により、患者の希望する治療を順位づけすることが可能となった。また、その高額なコストにもかかわらず、指導がなければ延命のために実施されたであろう不必要な検査や治療の回避にも役立つかもしれない。

この後ろ向き、非ランダム化試験は、米国の8つの病院における2002年から2004年の患者記録に焦点を当てており、治療コストの低、中、高それぞれの集団を含んでいる。いずれの病院も経験をつんだ緩和ケア指導チームを雇用しており、緩和ケアの医療コストおよび関連コストを請求書番号により特定した。退院した生存患者のうち緩和ケア指導を受けた患者2,630人と18,427人の通常治療のみを受けた患者を対応させ、入院中に死亡した患者は、緩和ケアを受けた278人の患者に2,124人の通常治療のみ受けた患者を対応させて解析した。

緩和ケアの医療指導によって入院患者が生存した場合は1人当たり$1,686のコスト削減が可能であり、その大部分は検査費用の削減(入院ごとに$424)およびICU費用の削減(入院ごとに$5,178)によるものであることが見いだされた。入院中に死亡した患者が緩和ケアを受けた場合、入院当たりのコスト削減額は$4,908であった。入院期間は7日から30日であった。

「われわれのデータによれば、緩和ケアの医療指導は治療方針を根本から変えてしまうものである」と、著者らは述べ、「そうすることによってコストを大きく削減できる。この変化は治療目標を明確にし、この目標と現在行っている治療が一致するか見直し、立てた目標にそぐわない治療や検査の中断を推奨、妥当化することで成し遂げられる」と続けた。

癌による倦怠感に対する治療の必要性

癌による倦怠感は、治療中および治療後の患者にしばしば影響をあたえるものである。St. ロンドン・ジョージズ大学の研究者らは癌による倦怠感に対する薬理学的治療法を系統的にまとめ、計264人の参加者を対象とした2つの臨床試験で、覚醒剤であるメチルフェニデートがプラセボと比較してわずかであるが有意に倦怠感を軽減することを見いだした。さらに、化学療法中の貧血患者について10臨床試験における2,226人で解析を行い、造血性成長因子であるエリスロポエチンが倦怠感を有意に減少させることを示した。ただし、治療期間や投与量は臨床試験により大きく異なる。この研究は8月20日のJournal of the National Cancer Institute誌に発表された。

Cochrane、Medline、EMBASEといった医学文献データベースを調べ、それらの文献の引用文献や特定の学術誌を選択して調べた。その結果、27のランダム化試験の合計6,746人の参加者によって、プラセボまたは標準療法を対照として被験薬の有効性が調べられていた。いずれの試験でもQOLおよびしっかりとした方法での倦怠感の改善を評価することを目的としていた。

この総説にはdarbepoetin(ダルベポエチン)、抗うつ薬であるパロキセチン、プロゲステロン類似ステロイドを評価した試験も含まれている。このような薬剤はいずれも倦怠感に対しては統計的に有意な効果を示さなかった。ただし、貧血患者にdarbepoetinを投与した場合、ぎりぎりで有意な倦怠感の低減が認められている。

全体的に、メチルフェニデートおよびエリスロポエチンの効果は小さく、いずれの薬剤にも欠点があると著者らは述べている。メチルフェニデートは依存性を示す可能性があり、どのような患者がこの治療からもっとも利益を得ることができるかがこの研究では明確になっていない。また、最近の研究ではエリスロポエチンについて安全面の懸念が起きている。

「癌による倦怠感を対象とした将来の研究は、薬剤のもつ役割だけに焦点を絞るべきではない」と著者らは結論している。運動療法や認知行動療法のような心理学的療法が倦怠感を低減させる可能性があるが、十分に計画した臨床試験で検証する必要がある。

さらに、著者らは、「数多くの潜在的なメカニズムと因子が癌による倦怠感の原因となり、増大させている可能性がある。もし倦怠感を引き起こすメカニズムが特定できれば、さらに標的化した薬剤による治療や他の医療介入を設計することも可能になるだろう」と説明を加えた。

科学的根拠に基づいた疼痛緩和のための指針を発表

研究者および地域医療従事者の9人の専門家委員会が、癌疼痛の管理に関する重要な標準療法および勧告を発表した。この規範は8月10日のJournal of Clinical Oncology誌に掲載され、専門家委員団による系統的な文献総括と検討が含まれており、妥当性と可能性に関するそれぞれの推奨を評価している。

一般的な疼痛管理について、ジョンホプキンス大学のDr.Sydney M.Dy氏らは、通常の検査と、病因および機能障害を探るための記述的疼痛評価、通常の疼痛教育、疼痛管理の経過観察を推奨している。ほとんどの転移性の骨疼痛で、単回投与の放射線治療は複数回の放射線治療と同等の効果であり、治療上可能であればいつでも実施すべきであると彼らは述べている。背部疼痛や脊髄圧迫ではコルチコステロイドを用いた即効性の治療と、脊髄全体のMRIまたは脊髄造影法による画像診断を行い、放射線治療や外科的な圧迫除去といった根本的な治療を24時間以内に行うことを推奨している。

この推奨治療法には、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルといった慢性的または長期作動的オピオイドを疼痛に対して投薬されている患者に共通して発現する副作用についても言及されている。著者らによると、このような患者は便秘に対する対策として消化管を対象とした薬物療法を受けるべきである。治療法を変更する際にはその用量を注意して観察し、必要に応じて電撃痛に対する治療を受けるべきである。

「疼痛は、種々の癌に最も共通して認められる症状の一つであり、このような標準療法は、高品質で、科学的根拠に基づいた、一般的な癌性疼痛および疼痛症候群の管理のための最初の枠組みを提供することになる」と著者らは述べている。

HPVワクチンの医療および経済効果の数学的モデルによる評価

米国では子宮癌の転帰に対するHPVワクチン接種の効果が明らかになるには今後何年も要するとみられる。それまでの間、誰がワクチン接種を受けるべきかという疑問に答えるために、ハーバード大学公衆衛生学大学院の研究者らは数学的モデルを用いて、12歳の少女ならびに13歳~26歳までの少女と成人女性へのワクチン接種の対費用効果を予測した。この分析は8月21日のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

著者らの計算は子宮頚部組織におけるウィルスの発癌効果に加えて、時間軸を考慮した男女間の性行為モデルに基づいている。また、医療現場で現在用いられているワクチンの2つの型、ワクチン接種後に追加接種を加えた場合と加えない場合の漸減する免疫の効果、現在のワクチンに含まれていないHPV16型、18型以外の菌株に対して可能な保護効果について検討された。

生涯免疫の獲得を仮定した場合、計算によると、12才の少女に通常の子宮頚部スクリーニングに加えてワクチン接種を行うと、そのコストは質調整生存年(QALY)あたり$43,600となり、検査費用単独の場合を上回る。13才から18才の少女の場合は、このコストはQALYあたり$97,300である。21才の女性までワクチン接種を遅らせると、このコストはQALYあたり$120,400となり、26才まで遅らせると$152,700となる。

尖形コンジローマの原因であるHPV 6型と11型に対してワクチンの保護効果があると考えれば、このコストは13~20%下がる。(年齢が上がるにつれて、このコスト低下の幅は小さくなる)。しかし、全年令層のQALYあたりのコストが増加する要因には、免疫が10年しか続かないため追加免疫が必要なことと、26才以下の女性の5パーセントが検査やワクチン接種を受けないというシナリオがある。検査頻度の計画もコストに影響し、それ次第ではQALYあたり$200,000にもなり得る。

米国のHPVワクチン接種の対費用効果はワクチンによる免疫の有効期間次第であり、「若年層の少女全体を網羅することと、21才未満の女性も初期接種の対象とすることで、最適化されるであろう」と研究者らは結論している。

前立腺癌を対象とした免疫療法の第3相臨床試験が中止に

進行性ホルモン抵抗型前立腺癌(HRPC)の男性患者に対する前立腺癌免疫療法の第3相臨床試験が中止になった。これは被験薬を投与した患者群における死亡数が多かったためである。この治療法を開発したCell Genesys社は、独立データモニタリング委員会(IDMC)の勧告に従って臨床試験を中止すると発表した。

VITAL-2と名付けられた臨床試験に参加した男性は、GVAXと呼ばれる試験中の免疫療法と化学療法薬であるドセタキセルの併用、またはドセタキセルとコルチコステロイドであるプレドニゾンの併用のいずれかに割り付けられた。400人以上の患者がこの試験に登録され、解析時には死亡が114人、このうち67人がGVAX群、47人がドセタキセル/プレドニゾン併用群であった。

「死亡数が均等でないことの具体的な理由はわかっていない」とCell Genesys社は発表の中で述べ、「われわれはGVAX群に高い死亡率が観察された真の原因を知るために、今回の患者から得られた臨床データを十分解析する予定である」と続けた。

VITAL-1と名付けられたGVAXの2つめの第3相臨床試験は転移性HRPCで早期段階の患者に対する単独療法としてGVAXを評価している。この試験のIDMCは試験中止を勧告していない。しかし、Cell Genesys社は委員会に対して、このVITAL-1臨床試験における主要評価項目であるGVAX群の生存率の改善が達成される可能性かあったかどうか判定するためにfutility解析を実施するように依頼している。

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関屋 昇  訳

後藤 悌 (国立がんセンター中央病院内科) 監修

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