2008/10/07号◆クローズアップ「原発不明癌に迫る」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/10/07号◆クローズアップ「原発不明癌に迫る」

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2008/10/07号◆クローズアップ「原発不明癌に迫る」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年10月7日号(Volume 5 / Number 20)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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クローズアップ

原発不明癌に迫る

癌の初期症状は、骨、肝臓や肺などの離れた他臓器に広がる(転移)まで明らかにならないことがしばしばある。さらに、医師にさえ、最初の癌がどの臓器に発生したかを見つけるのが困難な場合がある。このようなことは癌全体の2~4%に起こることであり、これらは原発不明癌(CUP)と分類されている。

これらの症例には、「最初の腫瘍が自然消退したものや、あるいは、小さ過ぎて剖検でも発見されない」場合があると、ナッシュビル(テネシー州)にあるサラキャノン研究所の主任研究員であるDr. John Hainsworth氏は説明する。現在の科学的総意においては、癌細胞は腫瘍形成のごく初期から転移をすることができると考えられている。

原発不明癌との診断は、適切な治療法の選択をとても困難なものにしている。化学療法は、特定の癌のタイプにより適合したものになってきており、通常、大腸癌の患者に、膵臓癌や肺癌の患者と同じ薬剤を投与することはない。そして、ベバシズマブ(アバスチン)、トラスツズマブ(ハーセプチン)やソラフェニブ(ネクサバール)といったより新しい標的薬は、特定のタイプの癌に生じている異常な細胞のシグナル伝達経路をターゲットとしている。

組織学(顕微鏡によって癌細胞の形状を観察する)や免疫組織化学(抗体を用いて細胞表面に発現している固有のタンパクを識別する)といった標準的な検査技法で、いくつかの原発不明癌の原発臓器を突き止めることが出来る。さらに、原発臓器が横隔膜より上の癌は肺へ、そして、下の癌は肝臓へ転移をする傾向があるといった癌の広がり方の特徴が原発部位のヒントとなることもある。しかし、標準的な診断法では、結局のところ原発不明癌患者の1/3以下の原発部位しか同定することはできない。

近年、正常細胞における遺伝子発現や発癌を促進させる分子の構造変化に対する理解が深まり、CUPの原発発生組織を特定することを向上させる手段として分子プロファイリングが用いられるようになった。CUPを特定するために分子プロファイリングを用いたいくつかの臨床検査は商用化され、これらの検査が期待に応えられるかどうかの詳しい調査が開始されている。

Journal of Clinical Oncology(JCO)誌9月20日号に掲載された研究では、Hainsworth氏らは、120人のCUP組織で、肺、乳房、大腸、卵巣、膵臓、前立腺という異なる6臓器における10個の遺伝子の発現状態を評価することができるVeridex社開発の分子プロファイル検定法を評価した。その結果87%の組織細胞で検定が可能で、そのうち61%の組織において具体的な発生組織を識別することに成功した。

興味深いことに、大腸が原発と診断された8人はその病態の特徴に基づいて大腸癌特有の化学療法を受け、部分寛解が認められた。CUPに対する一般的な化学療法を受けた患者は、2人だけが治療に反応を示した。

結腸直腸癌治療の近年の進歩にともなって、「この結果は、これらの検査が役立つことを示す非常に実用的な一例である」とHainsworth氏は説明する。「“この患者は大腸癌である”と判定できれば、私たちは、この治療がその患者に既知の大腸癌患者と同様の恩恵をもたらすことができることがわかった」と彼は述べ、治療がさらに(臓器毎に)洗練されていくにつれ、その判別は益々重要になると指摘した。

JCO誌同号に掲載された2つ目の研究はオランダの研究者によるもので、原発が判明している84人およびCUPの38人から採取した組織サンプルを用いて、Agendia社が開発した495遺伝子のマイクロアレイ解析が可能なCupPrintという分子プロファイリング検査を評価したものであった。16人のCUP患者が標準的な検査手法により原発臓器を特定することができたが、分子生物学的検査ではこの16人のうちの94%で正確に臓器を特定した。原発臓器が判明している癌では、この分子検査により83%で正確に原発部位を分類した。

「実際の原発腫瘍の分類に基づいた治療を受けた患者は、よりよい予後を期待できるかも知れない」とオランダ癌研究所の病理医であり、CupPrint研究の統括著者であるDr. Daphne de Jong氏は述べる。腫瘍の発生臓器を知ることで、患者に不要な治療が行われないようにすることもできると彼女は説明する。現在有効な治療選択肢がない一部の腫瘍タイプでは、「これらの患者の余命を延ばすことができる化学療法はほとんどなく、いかなる化学療法においても生活の質をかなり低下させるリスクがあるという考えに基づいて、患者が質の良い生活を過ごすことができるように治療を控えることを考えるかもしれない。」

「遺伝子発現プロファイルに基づいて、CUP患者を治療することで予後を改善することができるかもしれないことを示しているという点で、これらの結果は興味深い」と、グラスゴー大学のDr. Karin Oien氏とDr. T. R. Jeffry Evans氏はJCO誌の2つの研究について論説で述べている。「今私たちに必要なことは、発現プロファイリング結果の前方視的研究を行うこと…腫瘍臓器固有の治療を導き、そして、このアプローチが患者の転帰において[非特異的なCUPの治療法]より優れているかどうかを判定することである。」

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Nogawa   訳

後藤 悌(国立がんセンター中央病院 内科)監修

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