9.読み物、ジャーナル > M.D.アンダーソンがんセンターニュース
リンパ浮腫のある乳癌患者に超微小血管手術が新たな希望を提供する/M.D.アンダーソンがんセンター
投稿日時: 2009-04-23

リンパ管細静脈バイパス術を受けた女性のほぼ40%でリンパ液貯留が軽減したことがM.D.アンダーソンがんセンターの研究で明らかに
M.D.アンダーソンがんセンター
2009年3月23日


テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らは、上肢にリンパ浮腫のある乳癌患者の39%もがリンパ管細静脈バイパス(吻合術)として知られる超微小血管外科手術後に腕のむくみが軽減したと報告した。

本日、米国形成外科学会の第88回年次大会で発表されたプロスペクティブ研究の結果は、乳癌の手術もしくはそれと併用する放射線療法後に一般的かつ支障を来す症状であるリンパ浮腫の対処法として新たな 選択肢を示唆するものだ。

リンパ浮腫は手術によるリンパ節が切除またはブロックされることに起因し、リンパ液貯留により上腕に慢性的なむくみが生じる。今のところ、完治や予防の方法はなく、対処も困難である。リンパ浮腫に対する代表的な対処法としては、圧迫包帯法やリンパマッサージなどが患者に勧められる。米国国立癌研究所によると、乳癌によりリンパ節切除術と放射線治療を受けた女性の25%から30%にリンパ浮腫が発生する。

2005年12月から2008年9月までにM.D.アンダーソンがんセンターでステージIIとIIIの治療に起因する上腕部リンパ浮腫によりリンパ管と細静脈を吻合するバイパス術を受けた乳癌患者20人について、同センターの研究者らが評価を行った。術前の腕と比べてリンパ浮腫が発生した腕は平均で34%大きかった。リンパ管細静脈バイパス術の後では当初、この20人中19人に顕著な臨床上の改善がみられた。術後に容積測定が行われた患者では、容積減少率の全平均は1カ月後29%、3カ月後33%、6カ月後39%、1年後25%であった。

「リンパ浮腫を軽減する選択肢は効果が証明されていないため、患者はリンパ浮腫療法に頼ることがよくあります。とりわけ外科手術の効果は限定的であり、外科医は懐疑的です。したがって、どの新しい治療法が本当に患者にとって有益かを突き止めることはきわめて重要となります」と主著者のM.D.アンダーソンがんセンター形成外科教授・形成外科クリニック院長のDavid W. Chang医師は述べる。

リンパ管細静脈バイパス術では、ものすごく小さい微小外科用の道具で外科医は患者の腕に2、3カ所、1インチ(約2.54cm)以下の切り込みをいれる。その後、リンパ液の流れを促進してリンパ浮腫が軽減するよう、顕微鏡でしか見えない(直径が約0.3から0.8ミリの)細静脈にリンパ液を戻す。これは比較的侵襲の小さい手術であり、全身麻酔下において4時間未満で終了するため、患者は24時間以内に病院から帰宅することができる。M.D.アンダーソンがんセンターは、この技術的に複雑な手術を提供する数少ない医療機関の1つである。

「リンパ浮腫とは、出口のないひどい交通渋滞のようなものです。この手術はリンパ液に出口を与えることで、リンパ浮腫の軽減に大きく貢献します。症状が完全に消えるわけではありませんが、患者にとってデメリットはほとんどなく、重症のケースでは著明な改善が期待できるでしょう」とChang氏は言う。

この手術はリンパ浮腫の腕が線維化する前の初期ステージにおいて最も効果的ではあるものの、I、II、IIIのうち、どのステージのリンパ浮腫で苦しんでいる乳癌患者であっても、ほぼ全員が手術適応となると、Chang氏は加える。本研究は乳癌に焦点をあてたが、骨盤部分の癌に関連する下肢のリンパ浮腫を患っている患者にも、この手術は行える。

癌治療はリンパ浮腫の唯一の原因ではない。原発性リンパ浮腫は、発育不全により生後まもなく発生する場合や思春期ないし成人になってから発生する場合もある。続発性リンパ浮腫は手術、放射線、感染症、外傷が原因となって発生する。開発途上国では、フィラリア症といって寄生虫が原因で発生するリンパ浮腫の一種により2億人もが世界中で被害を被っている。「この手術をさらに精緻化し、その有効性に対する理解が深まれば、われわれは大勢の患者に影響を与えることが可能となります」とChang氏は言う。

リンパ管細静脈バイパス術から1年経過後のリンパ液の流れを確認するために、患者の長期的な追跡調査は不可欠である。M.D.アンダーソンがんセンターのChang氏とそのチームは、リンパ液容積は時間の経過にともなって減少し続けるため、将来的にこの手術はリンパ浮腫に対する予防措置として適応可能ではないかと考えている。「このような癌の煩わしい副作用を治して癌サバイバーの生活の質を向上させることがこの分野に携わっているわれわれにとっては最優先事項なのです」と同氏は語る。

******
村中 健一郎(生物物理学)訳
原 文堅(乳腺腫瘍科/四国がんセンター)監修
******



原文





投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。
サイト内検索
サイトについて
癌翻訳リファレンス
ログ検索


施設検索


Google検索

Google

Web サイト内検索