鉄過剰は癌を引き起こすか?
The Cancer Chronicles #32-#33より
c June 1996 by Ralph W. Moss, Ph.D.
原文
[私は1996年8月のABCイブニングニュースで、男性や閉経後の女性が定期的に献血をする事を薦めるなど同じ指摘がされているのを見て驚いた。]―RWM
鉄は生命にとって欠かすことの出来ないものである。しかし、この事実によりある人が鉄過剰になったり、鉄過剰が深刻な害をもたらしたりするという他のエビデンスが曖昧になっている。ある著者の言葉を借りれば、実際には鉄は”両刃の剣”である。
このことは癌と特別な関連があるのかもしれない。スローンケタリング研究所(Sloan-Kettering
Institute、以下SKI)の科学者らは鉄の過剰と免疫力低下および癌の関わりについての12通を越える論文を発表した。「鉄はT細胞機能のいくつかを弱める」SKIの科学者達は最近こう書いた(Arosa、FAら、Cell
Immunol 1995;161:138-42)。T細胞は癌と戦うために不可欠である。
鉄は日常的に肝臓に蓄積し、貯蔵される。そこはわれわれが鉄による損傷の最初の徴候を探索する場所である。肝酵素値の上昇や肝硬変にはアルコール依存症など多くの原因があるが、過剰な鉄の存在もまた原因となりうる。鉄により肝硬変が引き起こされた人は肝臓に異常がない人より、原発性肝癌になるリスクが200倍も大きい事が示されてきた(Adams、PCら、Adv
Intern Med 1989;34:111、およびNiederau、Cら、New Engl J Med 1985;313:1256)。
他の研究では、鉄過剰とさまざまな癌[大腸直腸癌(Nelson, RL,ら. Anticancer
Res 1989;9:1477)、食道癌、膀胱癌(Stevens, RG, ら. New Engl J Med 1988;319:1047)、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、皮膚癌、泌尿器系の癌そして神経系の癌、例えば神経芽細胞腫(Knekt,
P, ら. Int J Cancer 1994;56:379および Stevens, RG, ら. Int J Cancer 1994;56:364).]との結びつきが示されてきた。
1976年の研究では良性の乳房組織と比べ悪性の乳房組織から3倍の鉄が抽出可能であったことが示された(Santoliquido、PMら、Surg
Gyn Obstet 1976;142:65)。研究に参加している乳癌患者の88パーセントに鉄貯蔵レベルの上昇が認められた。
急性リンパ性白血病の小児患者の間では、鉄貯蔵レベルが最も低い例で高い例より生存期間は長くなった(Potaznik、D、Amer
J Ped Hemat/Oncol 1987;9:350)。
1964年、スウェーデンの政府当局は小麦への鉄の補強量を2倍にし、1970年にはさらに増加させた。このため若い女性の鉄欠乏性貧血が予想通り減少したが、肝臓癌、肺癌、乳癌の発生率は同群で大幅に上昇した。
カナダの作家Adeena Robinsonは彼女自身ヘモクロマトーシス(血色素病)とよばれる鉄関連の症候群で悩んでいた。
彼女の医者たちは皆、思いやりに富んだPaul Cutler医学博士が診断するまでこれを見つける事ができなかった。1995年の彼女の優れた著書「鉄:両刃の剣」へのはしがきの中で彼はこう書いている。「ヘモクロマトーシスの診断を見誤った医者は専門内外から批判されるべきである。ヘモクロマトーシスは実際最も一般的に存在する遺伝子疾患なのである。」
Robinson女史の症例ではCutler博士は”デフェロキサミン・チャレンジ(deferoxamine
challenge)“とよばれる斬新的な診断テストを用いた。基本的には鉄に付着し身体から鉄を除去するキレート剤デフェロキサミンの注射を彼女に行った。その後尿中鉄排泄量を測定し、標準的な血液検査から得られるよりも正確にRobinson女史の体内の総鉄量を算出する事が可能であった。
では、過剰鉄の治療とは何か。一つはデフェロキサミンを治療的に投与し、体内の鉄過剰分を取り除く事である。もう一つは瀉血(しゃけつ)である。簡単に言うと、出血させる事であり現在行われているもっとも古い医療処置のひとつである。定期的にある程度の血液を取り除くことで鉄の体内貯蔵量が減る。これは同僚が嘲笑しても動じない医者による医療処置として、または地元の赤十字社で時々献血すること(こちらの方がさまざまな理由から良い考えである)により行われる。
Robinson女史は、自分が鉄過剰(歳をとるに従い可能性は高くなる)かどうか興味のある読者に対し、ただの血清鉄の標準テストではなく「血清フェリチン」を測る特別な血液検査を受ける事を提案している。
“血清フェリチンテストは“女史は書いている。“血清鉄よりも体内の鉄の状態をより正確に反映し、一般的に組織や臓器に貯蔵されている鉄の量を測るのにかなり良い方法である”
もし自分が鉄過剰(こちらは“非典型的”な診断)とは言わず鉄欠乏(これは“典型的な”診断)なのではないかと医者に告げるなら、皮肉にも時々医者はこのテストを受けるように言うだろう。どのように鉄の過剰を避ければいいか。Robinson女史は関心のある読者に合理的な提案をしている。
・確立された医学的根拠によりどうしても必要な場合を除き、鉄の錠剤や注射を避ける。
・鉄が補強された食物は摂取しない。
・ビタミンCの摂取と食事は少なくとも1時間の間隔をあける。ビタミンCは食事からの鉄の取り込みを強めるからである。
・アルコール摂取を制限する。タバコを吸わない。
・鉄製の調理器具を控え、ステンレスやガラス製のものなどを使う。
・赤身の肉は控えめに摂取する。
・深海魚または魚油サプリメントを摂取する。
・適度な運動を行う。
・もしあなたが健康なら定期的に献血する。
「両刃の剣」は200の参考文献が記載された80ページの小冊子である。よく書かれていて、分別のある書き方がされている。Informasearch宛への小切手または郵便為替で買える。
Ralph W. Moss博士は癌患者のためのThe Moss Reportsのディレクターである。また癌に関する話題の11冊の本と3冊のドキュメンタリの著者でもある。彼は米国衛生研究所(National
Institutes of Health)、米国癌研究所(National Cancer Institute)、米国泌尿器科学会(American Urological
Association)、コロンビア大学(Columbia University)、テキサス大学(University of Texas)、Susan G.
Komen基金(Susan G. Komen Foundation)、ドイツ腫瘍学会(German Society of Oncology)での癌代替治療のアドバイザーである。彼はブリタニカ大百科事典(Encyclopedia
Britannica)の年鑑に代替医学に関する最初の記事を書いた。彼はMarquis Who's Who in America、Who's Who in
the World、Who's Who in the East、およびWho's Who in Entertainment(映画ドキュメンタリ制作者として)の人名録に
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(South 訳・Dr.くま 監修)
参考:MedScape High Dietary Iron in Patients With Elevated Transferrin
Saturation May Increase Cancer Risk
(ソース:March/April 2005 Annals of Family Medicine)