転移性乳癌患者の骨転移予防・治療のための骨修飾薬の役割に関するガイドライン最新版

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ASCO(米臨床腫瘍学会)が、骨修飾薬、特に、転移性乳癌患者の骨転移による骨合併症の予防・治療に用いられる、破骨細胞阻害剤の使用に関する治療ガイドラインの最新版を本日発行した。本ガイドラインには、新薬として加えられたデノスマブ(Xgeva)の使用法に関する推奨、及び骨修飾薬によりまれに発症する可能性のある、顎骨壊死について記載している。本最新版ガイドラインには、骨修飾薬で治療した患者のモニタリングに関する新たな推奨、及び骨修飾薬の今後の研究のため最重要事項も、盛り込まれている。

[pagebreak]ASCO’s Bisphosphonates in Breast Cancer Panelでは、新たな推奨事項作成のために、医学文献の体系的なレビューを実施した。最新ガイドラインである、American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Updated on the Role of Bone-Modifying Agents in Metastatic Breast Cancerは、本日オンライン版でJournal of Clinical Oncology誌に公開された。

本ガイドラインは、骨転移のエビデンスのある乳癌患者にFDA(米食品医薬品局)が承認した3つの薬剤(デノスマブ、パミドロネート、ゾレドロン酸)うちの1つを投与することを推奨している。3つの薬剤のうちのどれを使用するかについては記載されていない。これら3つの薬剤はすべて破骨細胞阻害剤であるが、それぞれ属するファミリーが異なり、パミドロネートおよびゾレドロン酸は、ビスホスホネート系薬剤クラスの一部であり、一方、デノスマブは、破骨細胞誘導因子であるRANKLを標的としたモノクローナル抗体である。

本ガイドラインではまた、臨床試験以外では、骨転移のない場合の骨修飾薬の導入は推奨していない。X線、CT、MRIでは異常がみられず、骨シンチグラフィのみで異常があった場合は、これらの薬剤での治療を支持するに十分なエビデンスとはいえないと記載している。

「今回の改訂では、転移性乳がん患者に潜在する骨損傷を制御する上での最新の進歩が取り入れられている」とミシガン大学の医学部准教授で、Bisphosphonates in Breast Cancer Panelの共同議長を務めるCatherine Van Poznak医師は述べた。「破骨細胞阻害剤の数が増えたのは好ましいことであり、骨転移のある女性の骨関連事象のリスクを減少させることができることを証明した。個人に合わせた治療法を選択する上で、医学的および経済的なものも含めて多くの要素が考慮されなければならないため、数種類の有効な選択肢があるということは素晴らしいことである。」

骨は、乳癌が最も転移しやすい部位の1つである。骨転移は転移性疾患の患者の約70%で発現する。この転移は骨細胞(破骨細胞)を過活動状態にし、その結果過剰に骨量が減少し、骨構造が崩壊し、骨関連事象(SRE)を引き起こす。SREとは、骨折、骨の手術が必要なもの、放射線療法が必要なもの、脊髄圧迫、悪性高カルシウム血症などをいう。

今回の文書は、2000年に最初に発行された後2003年に改訂された、主にビスホスホネートの使用に焦点を当てたガイドラインを更新したものである。現在のガイドラインでは、骨転移による損傷を予防・治療するために異なる作用機序を有するモノクローナル抗体といったより広い治療薬のカテゴリーを反映するために、より包括的な用語として骨修飾薬を使用している。本ガイドラインによると、まだ問題のあるいくつかの分野に取り組むための研究は続いている。

「本ガイドラインは、現在使用されている他の薬物療法と比較して、デノスマブが同等の有効性を持つことが示されている研究データを含む、様々な分野の新データを考慮に入れている」とノースウエスタン大学の医学部教授で、Bisphosphonates in Breast Cancer Panelの共同議長を務めるJamie Von Roenn医師は説明した。「本ガイドラインはまた、骨修飾薬での治療による、稀ではあるが、重大な合併症である顎骨壊死の予防に関するガイダンスもある。」

デノスマブは、骨リモデリングの調整に関与する受容体RANKLを標的としたヒトモノクローナル抗体である。本ガイドラインは、SREリスクの低下に関して、デノスマブがゾレドロン酸に匹敵することを示した、乳癌骨転移患者を対象としたランダム化第III相試験で得られたエビデンスを引用している。デノスマブは皮下投与で、低カルシウム血症のような副作用の可能性がある。

本ガイドラインは、最近発見された顎骨壊死についても取り扱っている。この変性は、2003年の医科および歯科の文献で最初に報告された。委員会は、骨修飾破骨細胞阻害剤を投与する前に、すべての乳癌患者が歯科を受診し、予防的歯科治療を受けることを推奨している。

委員会では、特に腎機能の悪化に関連しているとされるパミドロン酸およびゾレドロン酸といったビスホスホネート系薬剤の腎機能への作用に関する推奨事項を更新した。その内容は、臨床医は、FDA承認の表示に従い、パミドロン酸またはゾレドロン酸の各1回量を投与する際、毎回血清クレアチニンクリアランスをモニターすべきであるとするものであった。

委員会は、骨修飾薬の効果をモニターするためにバイオケミカルマーカーを使用することを推奨しなかった。また臨床試験以外で使用することも推奨しなかった。

2003年の推奨事項の多くは、そのままであったが、本ガイドラインには、以下のように、現在取り組まれているいくつかの研究に関する説明が記載されている。

• 骨修飾薬での治療期間、投与のタイミング、または間隔について
• SREに関するリスクリストの作成。骨修飾薬の投与によるSREリスクあるいは毒性リスクについて、患者のよりよい層別化法。個別リスクに対しては骨修飾薬療法を始めるタイミングの時期の選び方
• 骨転移のエビデンスのないステージIVの乳癌患者において、骨修飾薬投与によるベネフィットが得られるかどうかを特に調べる試験
• 治療法の選択及び薬剤の効果をモニタリングするバイオマーカーの役割
• 骨修飾薬投与患者へのカルシウムおよびビタミンDのサプリメントの最適投与量の理解

翻訳担当者 舛田理恵

監修 原野謙一(乳腺/国立がん研究センター)

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