ビタミンDと癌/cholecalciferol-council.comビタミンDを理解するより

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ビタミンDと癌について無理なく読んで理解するには、3つの単語を記憶しておく必要がある。3つの単語とは、コレカルシフェロール(cholecalciferol)、カルシジオール(calcidiol)、およびカルシトリオール(calcitriol)である。

① コレカルシフェロールとは、自然に生成されるタイプのビタミンDである。ビタミンD3と呼ばれることもある。日光が露出した皮膚にあたったときに、皮膚で大量に生成される物質である。サプリメントとして摂取することもできる。コレカルシフェロールとはビタミンDであり、他の化学物質はすべて代謝産物か化学修飾のどちらかである。  カルシジオール[25(OH)D]とは、コレカルシフェロールから直接生成される血液中の前駆体ホルモンである。ビタミンD不足について検査する場合、血液検査で測定されるべきものはカルシジオールのみである。ビタミンDの血中濃度という場合、通常はカルシジオール濃度のことである。医師はカルシジオール濃度として検査を発注することができるが、医師も検査室も血中カルシジオール検査と言えば25ヒドロキシビタミンDのことだとわかる。

 カルシトリオール[1,25(OH)D]とは、腎および組織でカルシジオールから生成されるコレカルシフェロール由来の最強のステロイドホルモンである。実際に、人体でもっとも強力なステロイドホルモンである。ビタミンDの活性型と呼ばれることもある。ビタミンDが不足しているかどうか判定するために、カルシトリオール濃度を使用してはならない。

現代に入ってもっとも古くは1930年代の興味深い観察結果が癌とビタミンDを結び付けた。長年にわたり日光の下で過ごした人(およびその後扁平上皮癌と呼ばれる比較的良性の皮膚癌を発症した人)は、大腸癌、乳癌、および前立腺癌など、悪性度の高い内臓癌を発症する確率が低かった。これにより、扁平上皮癌はより悪性度の高いタイプの癌に対する免疫をもたらすという、癌に関する最初の現代的理論が導き出されたのであった。

免疫理論は間違いであることが分かったが、皮膚癌が多ければ内臓癌は少ないという観察結果は残った。どのようにして日光は非黒色腫皮膚癌(年に約1,500人の米国人が死亡)を引き起こすものの、より悪性度の高い癌(毎年何十万人もの米国人が死亡)を予防するのか?

1980年代後半、Garland兄弟、現在カリフォルニア大学サンディエゴ校の疫学者である2人がその答えを発見した。まず、2人は日光が大腸癌リスクを減少させることを発見した。次に、日光に曝露された女性は、日光の下で過ごす時間が半分の女性よりも乳癌で死亡する確率が2分の1であることを発見した。Gary Schwartzという研究者が、前立腺癌について同様の発見をした。いずれの研究者グループも、ビタミンDがその説明となり得ると考えた。

次にGarland兄弟は、低カルシジオールが大腸癌発症と強く相関していることを発見した。これにより扁平上皮癌が深刻な内臓癌リスクを減少させるという初期の観察結果が説明される。皮膚癌患者は日光の下で長期間を過ごしたため、扁平上皮癌と血中カルシジオール高値のどちらも認められた。

1980年代の科学研究者らは、カルシトリオールが著明な抗癌作用を発揮することを試験管と動物の両方ですでに発見していた。カルシトリオールが正常な細胞死(アポトーシス)を促進することによって調節不能な癌細胞の増殖を抑制するのみならず、ビタミンDは新しい細胞の癌化も予防する(分化の促進)。ビタミンDは、癌細胞の拡大(転移)の予防にも役立ち、癌細胞の新たな血液供給(血管新生)を阻害する。つまり、カルシトリオールは完璧な抗癌剤のごとく思われたのであった。

しかし、長年にわたって科学者らは、ビタミンDのなかでカルシトリオールのみが癌にとって重要であると考えていた。カルシトリオールはビタミンDのなかでもっとも活性の高い形態であるため、科学者はカルシトリオールのみを試験対象とみなした。これらの科学者らは、Garlandらの発見によって蓄積型ビタミンDのカルシジオールも癌にとって重要であると示唆されたことに気付かなかった。

この過程のどこかで、ビタミンDと癌の物語に悲劇的なねじれが生じた。ビタミンDの特許は取得できなかったため、医療産業はほとんど興味を示さなかった。純粋なビタミンDは、製薬会社にとっても、そのような企業に金銭的に関与していることが多い研究者にとっても、金銭的利益が見込めなかった。このため、医療産業は単純なビタミンDが癌予防に有益であり、適切なビタミンD(栄養)摂取が癌の増殖を遅延させるのに役立つ可能性があるというエビデンスを無視したと考えられた。

また、癌科学者らは、ビタミンDには体内に少なくとも2通りの経路を有することを分かっていないようである。1つ目は内分泌機能と呼ばれる経路で、腎臓でカルシトリオールを産生し、血中カルシウム濃度を維持させる。2つ目はビタミンDのオートクリン(細胞内)およびパラクリン(細胞周囲)機能と呼ばれる経路で、組織でカルシトリオールを産生する。癌に関する限り、組織経路は内分泌機能よりも重要である。科学者らは、組織のカルシトリオール濃度を上昇させるのにもっとも簡単な方法は、血中カルシジオール濃度を上昇させることだと分かっていなかった。また、血中カルシジオール濃度をもっとも容易に上昇させるには、日光にあたる、太陽灯を使用する、または妥当な量のビタミンDを経口摂取することである。

代わりに、医療産業は、ビタミンDでもっとも活性の高いカルシトリオールの化学修飾の開発に関心を寄せた。ビタミンDアナログ(*類似物)と呼ばれるこれらの薬剤は、試験で癌に対して有効であることが示されれば、莫大な利益が見込まれた。癌患者における単純なビタミンDによる臨床試験を行うことを支持する優れた根拠が存在したが、医療産業はその代わりにビタミンDアナログの開発に焦点を合わせた。これまでそうしたアナログが2000種類以上開発され、一部については癌患者を対象として試験が実施された。結果は期待に反するものであり、それは、これらの薬剤がビタミンDの内分泌機能を介して血中カルシウム濃度を高めるからであった。また、科学者らは、組織のカルシトリオール値を上昇させるには血中カルシジオール値を上昇させるのが最善の方法であることを知らないようであった。また、血中カルシジオール値を上昇させるもっとも容易な方法は、日光にあたる、太陽灯を使用する、または妥当な量のビタミンDを経口摂取することである。

これらのアナログによって癌患者が救われる可能性を軽視してはならない。しかし、アナログの開発は、「純粋なビタミンDによって癌患者は救われるのか?」という重大な医学的、倫理的問題を無視している。この問題はこれまで試験の対象にされていなかったため、誰もその答えを知らないのである! ビタミンDによって癌患者が救われるはずだという証拠があるにも関わらず、これまで誰も純粋なビタミンDを癌患者に投与しなかった。その代わり、医療業界は数多くの企業を作り、ビタミンDアナログの潜在的な抗癌性を開発したのであった。

今、ビタミンDアナログについてどのような試験が行われているのか詳細に眺めてみよう。なぜなら、これらの試験は重大な科学的、倫理的、および法的問題を提起したからである。アナログを開発している企業の株をしばしば保有しているアナログ研究者が、2つの患者群、すなわち対照群と治療群を選択する。しかし、いずれの患者群も、ビタミンD不足について検査や治療が行われることはない。実際に、患者は純粋なビタミンDの抗癌作用の可能性についても、ビタミンD不足に関する検査をしないことについても知らされていない。現在の研究により、多くの癌患者(治療群および対照群の両方とも)にビタミンD不足の可能性が高いことを示唆している。

そこで研究者は、治療群にビタミンDアナログを、対照群に糖錠を投与する。ビタミンDアナログ試験では、治療群においていかなる利益も示されないか、わずかな改善を示したのみであった。しかし、治療群も対照群も通常進行癌患者であるため、いずれも一般的なビタミンD不足について検査を受けることも治療を受けることもなく死に至ることが多い。

生理学的用量のビタミンDがアナログよりも格段に有益である可能性が高まっている。しかし、ご承知のように、確かなことは誰にも分からない。なぜなら、この問題についてこれまで試験が行われてこなかったためである。本年、世界で何十万人もの人が癌のため死亡することになる。その大半は癌と闘っているあいだビタミンDが不足している。

アナログ研究者のなかには、癌細胞にはビタミンDを活性化(ビタミンDをカルシトリオールに形質転換する)する能力がないため、純粋なビタミンDについて試験することは意味がないと指摘するものもいる。しかし、これらの研究者らは、大多数の癌細胞がビタミンDを活性化する能力を保持しており、カルシトリオールの抗癌作用はオートクリン(細胞内)だけではなく、パラクリン(細胞周囲)であることを忘れている。また、ビタミンDアナログに関する唯一の合理的科学的問題は、「ビタミンDアナログはビタミンDを十分に有している癌患者に対する治療になにか付け加えるのであろうか」という事であることも忘れている。

癌患者に対するビタミンDアナログの効果を試験するための唯一の科学的(かつ倫理的)方法は、対照群と治療群の血液検査でもはやビタミンD不足ではないことが示されるまで、両群に対して十分量のビタミンDを投与することである。それからアナログを治療群に、糖錠を対照群に投与する。そうすれば、アナログに純粋なビタミンDを超える付加的作用があるか明らかになる。しかし、ご承知のように、そのような試験はこれまで実施されてこなかった。

このような試験が実施できなかった原因は、医療産業と国立衛生研究所(NIH)にある。NIHは何百万ドルもの税金をこうした問題を研究するために受け取っており、利益に影響されてはいけないことになっている。

しかし、物事は移り行くものであり、われわれは今では適正な試験がデザインされていると考えたい。残念ながら、そうした試験が完了し、発表されるまで数年はかかる。その間にも、癌患者はビタミンD不足状態で亡くなり続けるのである。

打つ手はあるのだろうか? 3つある。まず、米議会議員に手紙を書き、NIHにビタミンDと癌についての試験を実施させるよう要望を出す。次に、Vitamin D Council(寄付は税金控除の対象となる)を支援する。3番目に、ビタミンDを十分に摂ることである。

癌を予防するにはどれくらいの量のビタミンDを摂取すべきか? 誰も知らない。これは当初よりも複雑な問題となっている。なぜなら、われわれのほとんどがビタミンDの大部分を日光から得ているのに、われわれは日光を避けているのだ! 食事からはわずかしか得られず、そのほとんどは牛乳か魚から摂取している。しかし、十分量を食事から摂ることはできない。総合ビタミン剤で得ることもできるが、これには身体にとって1日必要な量の約10%、わずか400単位しか含有されていない。一番良いのは、控えめな方法ではあるが、年間を通してビタミンDの血中濃度を「自然な」値で維持することと思われる。この場合、「自然な」の意味は、プエルトリコの農夫やUSAのライフガードのように日光と「自然な」関係をもって生活している人と同等の血中カルシジオール濃度ということである。両群のカルシジオール値は50 ng/mlを超える。

癌に罹患した場合、どれくらいの量のビタミンDを摂取すべきか? 分からない。誰も知らない。研究は始まったばかりである。どれくらいの量が有益とされるか知る唯一の方法は、知識豊富な専門家に相談する(見つけるのが困難)、最新の科学文献を読む(理解するのが困難)、あるいはウェブでわれわれの知見の総括を読むことである。どれを選択しようと、最終的には自分で決めなければならない。

何度も繰り返しているように、「自然な」量のビタミンDは有益と考えられるが、標準的な癌治療に追加的に摂取するだけにしなければならない。第1選択治療法でも唯一の治療法でもない。標準的な化学療法または手術に追加して摂取するものである。腫瘍医と癌外科医は毎日奇跡を起こしているのだ。

忘れないで欲しいのは、ビタミンDの過剰摂取は有害なこともあるが、最近ある専門家が「ビタミンDの毒性を案じることは、のどが渇いて死にそうなときに溺れ死ぬことを案じるのと同じことだ」と言った。とは言え、「少量が効くなら、大量ならもっと効く」と考えられがちである。ビタミンDについては、これはまったく当てはまらない。前もって警告されることには、あらかじめ備えておく。

当ウェブサイトはVitamin D Councilが提供している。われわれは、ビタミンD不足の流行について消費者および専門家を鋭意啓発している非営利非課税機関である。われわれは、あなたの主治医ではなく、ビタミンD補充に関してなんらかの医学的勧告を行うものではない。補充に関する意見について検討するe‐ブックを執筆中であり、癌に罹患した場合どうするかについてわれわれが考えていることを遠からずお伝えしたいと考えている。

(oyoyo 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修 )

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