T細胞腫瘍の寛解維持にロミデプシン3剤併用による移植前治療が有望

悪性の血液腫瘍患者において、新規の3剤併用療法が同種幹細胞移植後の寛解期の延長に有用であることが、オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-James)の研究者によって発表された予備臨床試験の結果から明らかになった。

この第1/2相臨床試験のために評価が行われた新しい幹細胞移植前処置は、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)およびT細胞リンパ腫の治療における課題を克服する目的で計画された。初期研究の結果では、予想された無再発生存率が45%であったのに対し、治療終了後1年経過しても88%の患者が寛解を維持しており、劇的に改善していることが示された。

「この期間は、患者の免疫系が異常な細胞の増殖を抑える力を回復する重要な期間です。移植後の維持療法にロミデプシン(販売名:イストダックス)を使用することで、がんの再発を抑えると同時に、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化して残存するがん細胞を除去することができるという点がきわめて有望です」と、OSUCCC-Jamesの血液学者で研究責任医師のJonathan Brammer医師は述べた。

Brammer医師は、この初期研究の結果を12月12日に開催された米国血液学会年次総会で発表した。

研究デザインおよび結果

OSUCCC-James研究所の研究者の主導で行なわれたこの臨床試験では、完全寛解または部分寛解後に同種幹細胞移植による治療が必要とされたT細胞急性リンパ性白血病またはT細胞リンパ腫の患者21人が登録された。患者は全員70歳未満で、適合する親族ドナーまたは非血縁ドナーがおり、オハイオ州立大学(15人)またはテキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンター(6人)で治療を受けていた。

患者には、標準的な移植前処置薬であるブスルファン(販売名:ブスルフェクス)とフルダラビン(販売名:フルダラ)に加えて、ロミデプシンが投与された。また免疫力が回復するまでにがんが再発する危険を減らす目的で、幹細胞移植後1年間は、すべての患者に対して2週間に1回、維持量のロミデプシンが継続投与された。

T細胞急性リンパ性白血病およびT細胞リンパ腫は、悪性の希少血液腫瘍であり、治療後1年以内に再発することが多い。幹細胞移植は最も効果的な治療法であるが、多くの患者は移植前に完全寛解に至らなかったり、移植後1年以内に再発したりすることがあるとBrammer医師は指摘している。

残存する腫瘍細胞が再発の原因となることは知られており、今回の試験は、治療で除けなかった腫瘍細胞が幹細胞移植終了後に再び増殖する余地のないように計画された。

「完全寛解となっても、治療を免れた腫瘍細胞はいくらか残存しているようで、そのため再発してしまうことが知られています。ロミデプシンを移植前処置と維持療法に追加することによって、幹細胞移植後1年間の再発リスクが劇的に低下するという結果にとても喜んでいます」とOSUCCC-James白血病研究プログラムのメンバーでもあるオハイオ州立大学医学部准教授のBrammer医師は述べている。

本試験に登録した患者のほぼ全員について治療が完了しており、最終的な結果は、すべての患者のフォローアップ期間が1年間に達する2023年初頭に得られる予定である。

幹細胞移植について

骨髄移植治療ではまず、骨髄で作られる幹細胞を、がん患者本人から採取する(自家移植)か、ドナーから採取する(同種移植)かを選択する。患者には高用量化学療法を行い、治療終了後にその幹細胞を再び注入して、骨髄が赤血球や白血球(感染と戦う血球)を産生することができるように、その能力の回復を促すのが従来の方法である。T細胞急性リンパ性白血病とT細胞リンパ腫は血液がんの一種であり、体が本来もつ正常な血液細胞を産生する能力を傷害する。OSUCCC-Jamesにおける血液がんの治療と研究の詳細については、cancer.osu.edu//hematologyを参照下さい。

翻訳担当者 岩佐薫子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

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