免疫療法薬ニボ+イピ/分子標的薬ダブ+トラはBRAF陽性進行メラノーマの全生存率を改善

ASCOエキスパートによる見解 

「DREAMseqの試験結果は、進行メラノーマ患者の治療において最も重要な臨床の疑問の1つに答えるものである。治療歴のないBRAFV600変異のあるメラノーマ患者では、併用免疫療法を最初に選択した方が全生存率が高いことが明確に示された。メラノーマ患者にとって目覚ましい進歩の時代にあって、本試験は、最高の治療を提供するための最良のアプローチを解明する重要な追加試験である」とASCOエキスパートであるLynn Schuchter医師(ASCO上級会員)と述べた。

BRAFV600変異を有する進行転移性メラノーマ患者に対して、免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(販売名:オプジーボ)/イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)併用療法(N/I療法)後、分子標的薬ダブラフェニブ(販売名:タフィンラー)/トラメチニブ(販売名:メキニスト)併用療法(D/T療法)を行った患者では、逆の順序で治療を行った場合と比較して、全生存期間が延長した。DREAMseq試験で得られたこれらの研究成果は、ASCOプレナリーシリーズの第1回セッションで発表された。現在、多くの患者が最初に分子標的薬併用療法を受けていることから、この研究結果は標準的な治療法に疑問を呈している。

筆頭著者によると、メラノーマ患者の約45%がBRAF遺伝子変異を有する。このタイプのメラノーマは、比較的若い患者に多くみられる。今回の試験では :

 • 組入れ基準を満たした全身治療歴のないBRAFV600変異を有する進行転移性メラノーマ患者を、ECOG Performance Status 0または1および乳酸脱水素酵素(LDH)値で層別し、ステップ1でN/I療法(A群)またはD/T療法(B群)に1:1で無作為割付け後投与を開始し、病勢が進行した場合はステップ2に移行して代替療法であるD/T療法(C群)またはN/I療法(D群)を投与した。

• 長期全生存率は、免疫療法併用(A群)を開始後に分子標的薬併用(C群)の順序で治療を行った患者は、逆の順に治療した患者に比べて高かった。

• A群で開始した患者の2年全生存率は72%、B群で開始した患者の2年全生存率は52%であった。

• 全生存率の上昇は10カ月後に最初に認められ、最初のN/I療法で急速に病勢が進行したごく一部の患者において、分子標的療法による救済療法に切り替えることの重要性が示された。 

• N/I療法には毒性があり、多くの患者が治療を中止しなければならなかったにもかかわらず、高い割合の患者が持続的な寛解を得た。

「今回の結果は、遺伝子変異由来のがんであっても、分子標的療法ではなく免疫療法薬から始めることにより大多数の患者の全生存期間が改善することを確証した」と、筆頭著者のMichael B. Atkins医師は述べた。「特に地域のがんクリニックでは、多くの患者が初期治療として分子標的療法を受けているため、この結果により実臨床が変わる」と述べている。

2021年11月のASCO プレナリーシリーズより:DREAMseq(Randomized Evaluation in Advanced Melanoma Sequencing:進行メラノーマにおけるダブレット治療順序を評価するランダム化比較試験):第3相試験—ECOG-ACRIN EA6134, Michael B. Atkins, et al. 抄録全文を見るにはスクロールする。

Schuchter医師および著者の開示情報は原文を参照

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患者報告データを用いたデジタル症状モニタリングは、がん治療中の患者の症状コントロールと身体機能の改善に役立つ

ASCOエキスパートによる見解

ASCOエキスパートのRobert Dreicer医師(理学博士、米国内科学会の最高栄誉会員、ASCO上級会員)は、「これらの結果は、治療を受けている進行がん患者の治療方法の改善が比較的シンプルなアプローチであること、および将来的には腫瘍治療の提供方法をさらに改善するための様々な応用が可能であることを示している」と述べている。

ASCO第1回プレナリーシリーズで、がん治療を受けている患者が週に一度、自宅から症状を報告するデジタル症状モニタリングシステムを用いることで、症状のコントロールと身体機能の改善につながったと報告された。今回の試験では:

• 米国を拠点とする地域のがんクリニック、52施設を患者報告アウトカム(PRO)調査を用いたデジタル症状モニタリング群(PRO群)と通常ケア群(対照群)に1対1で無作為に割り付けた。試験コホートには1,191人が含まれ、PRO群は593人、コントロール群は598人であった。

• PRO群の患者はインターネットまたは自動電話システムを使用し、最長1年間、毎週調査に回答した。この調査には、9つの一般的な症状、全身状態、転倒に関する質問が含まれた。

• 重度の症状または症状の悪化が認められると、ケアチームの看護師に電子アラートが送信され、また、対面診療または遠隔診療の際に症状データの経時変化を示すレポートががん専門医に提供された。

• 症状や副作用を患者が直接ケアチームに報告できるようになったことで、ケアチームとのコミュニケーションが改善され、症状の管理が向上し、QOLが改善した。

• 対照群と比較してPRO群では、身体機能(EORTC QLQ-C30:前週の健康状態を評価する質問票)において臨床的意義のある効果が得られた患者が13.8%多かった。 また、症状のコントロール(悪心・嘔吐、疼痛、呼吸困難、便秘、下痢、不眠、食欲不振、疲労)では16.1%、健康関連QOL(機能と症状のスコアの組み合わせ)では13.4%、それぞれ対照群と比較してPRO群で臨床的意義のある効果が認められた患者が多かった。

• 予定されていた調査の91%以上の回答を患者から得た。ケアチームの看護師は、重度の症状または症状の悪化が認められたという通知に対して、59%対応し、その主な内容は、電話による症状管理のカウンセリング、支持療法の追加、診察予約であった。

「今回の国内試験では、患者に症状を尋ねるというシンプルな技術が実現可能であり、症状管理を大幅に改善し、より良い臨床転帰をもたらすことが証明された」と、筆頭著者のEthan Basch医師(理学修士)は述べた。「この種のシステムが機能するためには、患者の高い参加率だけでなく、医療ケアチームの強いコミットメントが不可欠である」。

2021年11月のASCO Plenary Seriesより:地域のがんクリニック実施診療における患者報告アウトカムを用いたデジタル症状モニタリング:A U.S.米国内クラスターランダム化比較試験, Ethan Basch, et al. 抄録全文を見るにはスクロールする。

Dreicer博士および著者の開示内容は原文を参照

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抄録番号 356154:DREAMseq(Doublet, Randomized Evaluation in Advanced Melanoma Sequencing:進行メラノーマにおけるダブレット治療順序を評価するランダム化試験):第3相試験—ECOG-ACRIN EA6134

著者:Michael B. Atkins、Sandra J. Lee、Bartosz Chmielowski、Antoni Ribas、Ahmad A. Tarhini、Jedd D. Wolchok、John M. Kirkwood; (以下、原文を参照)

背景 :PD-1とCTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害剤(CPI)またはBRAF/MEK阻害剤の併用療法は、いずれもBRAFV600変異の転移メラノーマ(MM)患者において、有意な抗腫瘍効果と全生存期間(OS)の改善を示し、幅広い規制当局の承認を得ている。しかし、BRAFV600変異型転移メラノーマの患者において、初回治療としてどちらを選択するか、あるいはどのような治療順序が望ましいかを示すプロスペクティブデータはほとんどない。DREAMseq試験は、ニボルマブ/イピリムマブ(N/I)に続いてダブラフェニブ/トラメチニブ(D/T)を投与する方法と、その逆の投与順の有効性と毒性を比較するために計画された。

方法:組入れ可能な治療歴のないBRAFV600変異MM患者を、ECOG PS 0または1、およびLDH値で層別化し、ステップ1でN/I療法(A群)またはD/T療法(B群)に1:1で無作為化に割り付け、病勢進行(PD)時にステップ2に移行し、それぞれD/T(C群)またはN/I(D群)の代替療法を受けた。患者は、N(1mg/kg)/I(3mg/kg)を3週ごとに4回投与した後、240㎎のNを2週ごとに静注し、最大72週まで投与(A群およびD群)、またはPDまで150mgのDを 1日2回および2mgのTを1日1回の経口投与を受けた(B群およびC群)。2019年には、A群およびD群において、N(3mg/kg)/I(1mg/kg)を3週ごと4回投与の代替開始用量を使用するオプションが加えられた。サイクルは6週ごとで、ベースラインと12週ごとに画像検査を行った。主要評価項目は2年後のOSであった。4回目の中間解析では、組入れから2年経過した患者が59%であったため、DSMC(効果・安全性評価委員会)とNCI CTEP(がん治療評価プログラム)は、組入れを中止してデータを公開することを推奨した。

結果: 2015年7月より、予定患者300人のうち265人が組入れられた(A群133人、B群132人)。年齢中央値は61歳(25~85歳)で、63%が男性であった。A群およびB群の患者背景は、PS 0が67%、正常LDHが60%とバランスが取れていた。2021年7月16日の時点で、中央値27.7カ月で27人がC群に、46人がD群に移行した。グレード3以上の毒性は、A群で60%、B群で52%であった。グレード5の治療関連AEの内訳は、A群で2人、C群で1人であった。現時点での奏効率は、A群46%(52/113)、B群43%(49/114)、C群48%(11/23)、D群30%(8/27)であった。A群では37/42人、B群では19/37人の患者が奏効を維持していた。奏効持続期間中央値は、A群未到達、B群12.7 カ月(95% CI: 8.2, -)(p <0.001)であった。100人の死亡(A-C群:38人、B-D群:62人)が認められた。投与開始2年後の全生存率は、A群で72%(95%CI:62-81%)、B群で52%(95%CI:42-62%)であった(log-rank p=0.0095)。無増悪生存期間においてA群が優位な傾向を示した(log-rank p=0.054)。無増悪生存曲線およびOS曲線はともに二相性を示し、それぞれ投与6カ月後および10カ月後までB群がA群を上回っていた。ステップ1(A群44人、B群71人)で進行が認められた115人のうち、60人(52%)がステップ2に移行した。ステップ2に移行しなかった主な理由は、6カ月以内のPDによる死亡であった(A群:15/23、B群:25/32)。

結論:進行したBRAFV600変異型MM患者において、N/IのCPI併用療法で開始した治療順序は、D/Tで開始した治療順序に比べ、優れたOS、ステップ1におけるより長期の奏効持続期間およびより多い患者で奏効の継続が認められ、また、それらの結果は投与10カ月で明らかとなった。

Abstract 349527: 地域のがんクリニックにおける患者報告アウトカムを用いたデジタル症状モニタリング:米国内クラスターランダム化無作為化比較試験

著者: Ethan Basch, Deborah Schrag, Jennifer Jansen, Sydney Henson, Angela M. Stover, Patricia Spears, Mattias Jonsson, (以下、原文を参照)

背景 :がんの治療中に症状はよくみられるが、しばしば見逃されていることがある。患者報告アウトカム(PRO)調査を実施するデジタルシステムは、症状を早期に発見し、臨床医に介入を促すことで、苦痛を和らげ、合併症を回避できる可能性がある。

方法:クラスターランダム化比較試験において、米国を拠点とする地域のがんクリニックをPRO調査を用いたデジタル症状モニタリング群と通常のケアを行う対照群に1対1で無作為に割り付けた。転移性がんの全身療法を受けている患者が対象となった。PRO群の患者はインターネットまたは自動電話システムを使用し、最長1年間、毎週調査に回答した。この調査には、9つの一般的な症状、全身状態、転倒に関する質問が含まれた。重度の症状または症状の悪化が認められると、ケアチームの看護師に電子アラートが送信され、また、症状データの経時変化を示すレポートが対面診療または遠隔診療の際にがん専門医に提供された。事前に設定された副次的評価項目は、身体機能、症状のコントロールおよび健康関連の生活の質(HRQL)への影響であった。主要評価項目である生存率は未到達であった。

結果: 52施設で1,191人が組入れられた(PRO群:593人、コントロール群:598人)。臨床的意義のある有益性を得た患者数は、身体機能ではPRO群が対照群より13.8%多く(P=0.009)、症状コントロールでは16.1%(P=0.003)、HRQLでは13.4%(P=0.006)であった。ベースラインからの変化の平均値でPRO群が対照群より優位であった項目は、身体機能(平均差2.47、95%CI 0.41-4.53、P=0.02)、症状コントロール(2.56、0.95-4.17、P=0.002)、HRQL(2.43、0.90-3.96、P=0.002)であった。患者は、予定された毎週のPRO調査のうち、20,565/22,486(91.5%)を完了した。

結論:がん治療中のデジタル症状モニタリングは、臨床的に有益である。

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11月のASCOプレナリーシリーズセッションの新しい研究: ASCO第1回プレナリーシリーズセッションにおいて、進行メラノーマおよびデジタル症状モニタリングの実臨床に影響を与える2つの最新の研究結果が紹介された。これらの研究結果は、2021年11月16日午後3時(米国東部時間)からのライブ放送セッションで発表。セッションの録画視聴asco.orgアカウントでログイン要

翻訳担当者 後藤若菜

監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学 国際医療センター 皮膚腫瘍部・皮膚科)

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