中皮腫の腫瘍体積評価においてMRIはCTより優れている

中皮腫患者における原発巣の腫瘍体積を評価する際、MRIは、CTよりも優れていると英国の研究者らが報告した。

「腫瘍体積のMRI測定は、同じ腫瘍体積をCTで測定するよりも、その後の生存を予測する上で精度に優れていると思われる」と、英国のクイーンエリザベス大学病院およびグラスゴー大学のKevin G. Blyth医師は、ロイター・ヘルスに電子メールで語った。「CTではどこまでの範囲が中皮腫なのかが判別しにくいことが知られているが、MRIはその判別においてより優れていることから、今回の結果が得られたのだろう」。

原発腫瘍の体積は、悪性胸膜中皮腫の生存期間を左右する重要な要素である。CTで評価される腫瘍体積は全生存期間と相関しているが、手作業による腫瘍部分の領域抽出が必要で手間がかかるため、CTによる腫瘍体積測定はあまり行われていない。

Blyth氏らは、本研究のために開発した新しいMRI体積測定法(プロトコル)とCT体積測定法を比較する本研究を、最終的に悪性胸膜中皮腫と診断された31人の患者で行った。

MRI測定法を用いた場合、平均解析時間は14分、観察者内一致率は87.5%、観察者間一致率は96.2%であった。

CTを用いた場合、平均解析時間はMRIよりも有意に長く(151分)、観察者間一致率は中程度(72%)にとどまった。

平均原発腫瘍体積はMRI(370cc)がCT(302cc)よりも有意に大きく、MRI腫瘍体積はCT腫瘍体積よりも一貫して大きかった、と研究者らはLung Cancer誌に報告している。

MRI腫瘍体積またはCT腫瘍体積のいずれも、臨床病期のT因子との相関関係はなかった。

腫瘍体積300ccを境として二群に分けた場合、MRIで評価した腫瘍体積が300cc以上であった群は、死亡リスクが4.03倍になることと相関していたが、同じカットオフ値を用いてもCTで評価した腫瘍体積は全生存期間との有意な相関関係を認めなかった。

「中皮腫の腫瘍病期を測定する従来の方法から脱却し、CT画像検査を超える方法を目指す必要がある。なぜならCT画像検査は胸部放射線検査の主力ではあるが限界がある」とBlyth氏は言う。

「われわれが報告した知見に再現性があることを証明するためには、より大規模な多施設での検証研究が必要である。私が治験責任医師を務める、CRUKにより資金提供を受けたPREDICT-Meso International Accelerator Networkの一環として、これらの研究を開始している」。

「また、腫瘍体積は(どのような測定方法であっても)、現在原発腫瘍の進行度(T期)評価のため用いられている他の因子(体積や大きさは考慮されておらず、隣接構造への浸潤の程度のみが考慮されている)よりも優れていることを実証するために、大規模な研究を完了する必要がある」ともBlyth氏は述べている。

引用: Lung Cancer誌、2020年10月1日オンライン版

翻訳担当者 青葉かお里

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

原文掲載日 

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