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日本のHPVワクチン接種率の回復は多くの死を防ぐ可能性

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは今なお日本の予防接種法の接種対象に含まれており、12歳~16歳の女子に対し無料で提供されている。しかし接種後の確証のない有害事象がメディアに報道されたことにより、日本政府は2013年の6月から積極的な接種勧奨を一時的に控えた。その結果、ワクチンの接種率は70%超から1%未満へ急速に低下した。HPVワクチンクライシス(推奨中止)の結果、現在までに約5000例の子宮頸がんによる死亡が生じたと推定される。2020年2月10日付Lancet Public Health誌掲載の記事によれば、ワクチンの普及率の大きな巻き返しにより、今後、子宮頸がんによる死亡件数は急速に減少する可能性があるという。

HPVは子宮頸がんや男女両者の肛門生殖器がんおよび口腔咽頭部がんの原因となり、2012年には全世界で推定計630,000例の関連がん罹患をもたらしている。なかでも子宮頸がんがHPV関連のがんの最も多くを占めている。女児ならびに青年層の女性に対するHPVワクチン接種は標的とする型の感染や、子宮頸部の前がん病変の発現を防ぐ。

日本でのHPVワクチンに対する公費負担は、2010年、12歳~16歳の女子対象に開始され、当初は3回投与の接種率が70%を超えた。しかし2013年6月、日本政府はワクチンの積極的な接種勧奨を一時的に控えることとなった。多くのエビデンスがHPVワクチンの安全性を支持しているにもかかわらず、積極的推奨の一時停止は6年を超えて今も継続しており、ワクチンの信用性に対する否定的な印象は日本国内だけでなくデンマーク、アイルランド、コロンビアなどの他の国でのワクチンに対する認識にも影響を及ぼした可能性がある。

2019年1月、世界保健機関(WHO)はワクチン接種への躊躇を国際保健に対する脅威トップ10の1つに挙げた。

研究チームは十分に検証されたモデリングプラットフォームを用いて、ワクチンクライシスの影響を、2013年から70%前後のワクチン普及率を保っていると仮定した場合と比較検証した。結果、2013年から2019年のワクチンクライシスは、1994年から2007年に生まれた集団の生涯でさらに24600~27300例の罹患と5000~5700例の死亡を生じると予測されることがわかった。

しかし、接種していない集団にワクチン接種するなどにより2020年に普及率が回復すれば、14800~16200例の罹患や3000~3400例の死亡を防ぐことができる可能性がある。

普及率が回復しなければ、2020年に12歳になる人々の生涯だけでもさらに3400~3800例の罹患と700~800例の死亡が発生すると考えられる。ワクチンクライシスが持続する場合、今後50年間(2020年~2069年)に、子宮頸がんによる予防可能な9300~10800例の死亡が発生すると考える。

著者は、現在までの日本のワクチンクライシスは子宮頸がんによるものだけで約5000例の死亡の結果を招き、この数はクライシスが続く年ごとに約700~800例ずつ増加するだろうと述べ、結果を解釈した。ワクチン普及率が速やかに回復すれば、さらなる子宮頸がんと死亡の多くはまだ予防可能である。しかし、ワクチン接種の普及率が回復しても、子宮頸がん検診の受診は今なお、特にクライシスのためにワクチン接種を逃した集団の女性や高齢のワクチン接種をしていない女性にとって優先事項である。

本研究は、National Health and Medical Research Council Australia Centre of Research Excellence in Cervical Cancer Control and Japan Society for the Promotion of Scienceにより資金提供を受けた。

参考文献:Simms KT, Hanley SJB, Smith MA, et al. Impact of HPV vaccine hesitancy on cervical cancer in Japan: a modelling study. Lancet Public Health; Published online 10 February 2020. DOI: https://doi.org/10.1016/S2468-2667(20)30010-4.

翻訳白鳥理枝

監修前田梓(医学生物物理学/トロント大学)

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