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高頻度変異乳がんの患者割合、変異パターン、ゲノムプロファイル

転移がんで多くみられる高腫瘍遺伝子変異量

乳がん全体の5%で腫瘍遺伝子変異量(TMB)が多く検出され、転移乳がんでさらに多いことを、ダナファーバーがん研究所、ブロード研究所、ハーバード大学医学部、ブリガム&ウィメンズ病院(米国、ボストン)の研究グループが発見した。高頻度遺伝子変異(hypermutated)腫瘍には多様な変異スペクトラムが存在するが、APOBEC活性は最も多くみられる変異過程である。高頻度変異乳がんの患者は、免疫チェックポイント阻害薬から利益が得られる可能性の高いサブグループである。この知見は、2020年1月9日にAnnals of Oncology誌電子版で発表された。

体細胞変異は、腫瘍特異的なネオアンチゲン(新抗原)の主な発生源であり、抗腫瘍免疫の重要な標的となる。TMBが高レベルである場合に、ネオアンチゲン量の増大、高いT細胞浸潤、免疫チェックポイント阻害薬の高い奏効率との関連性がさまざまながん種で確認されている。しかし、転移乳がんでPD-1/PD-L1阻害薬から利益が得られている患者はそのごく一部である。

研究の背景として、高頻度変異乳がん患者の割合を示す十分なデータがないことを著者らは挙げている。他の効果予測バイオマーカーを評価することで、免疫チェックポイント阻害薬から利益が得られる乳がん患者数が増える可能性がある。最近では、アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とナブパクリタキセル(販売名:アブラキサン)の併用療法が、腫瘍浸潤免疫細胞表面にPD-L1が1%以上発現した転移トリプルネガティブ乳がん患者に利益をもたらすことがIMPASSION130試験で示された。

高頻度変異乳がんの解析

この最新研究では、公式に入手できる3,969件の乳がん腫瘍サンプルのゲノムデータを解析して、高頻度変異乳がんの割合、病理学的特性、変異パターン、ゲノムプロファイルを評価した。高頻度変異乳がんの割合は、全エクソームシークエンシングまたは遺伝子パネルシークエンシングを受けた患者のサンプルから推定した。

TMBが10変異/メガベース(mut/Mb)以上のサンプルを高TMBと分類した。ダナファーバーがん研究所コホートからさらに8人の患者を特定し、高頻度変異コホートに組み入れた。高TMBの患者で、変異パターンとゲノムプロファイルを調べた。患者の一部に免疫チェックポイント阻害薬を投与した。

TMBの中央値は2.63 mut/Mbであった。TMBの中央値は、腫瘍サブタイプによる有意な差があり(HR陰性/HER2陰性 > HER2陽性 >HR陽性/HER2陰性、p < 0.05)、またサンプルタイプによっても有意な差があった(転移巣 > 原発巣、p = 2.2 × 10-16)。

高頻度変異腫瘍は198人の患者(5%)に認められ、転移巣で原発巣よりも多かった(8.4% vs. 2.9%, p = 6.5 × 10-14)。高頻度変異腫瘍で最も多くみられる変異過程はAPOBEC活性(59.2%)であり、次いでミスマッチ修復欠損(MMRd、36.4%)であった。ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)ベースの治療を受けた高頻度変異乳がん患者3人(2人はAPOBEC活性シグネチャが優勢であり、1人はMMRdシグネチャが優勢)は、治療に対して持続する客観的な奏効が得られた。

この知見は、乳がんの5%で高TMBがみられ、転移乳がんではさらに多いことを示すと著者らは結論付けた。このような腫瘍は、ネオアンチゲン(新抗原)の高発現や高いT細胞浸潤との関連がみられる。この集団では、さまざまな変異シグネチャがみられるが、APOBEC活性が最も多い。

高頻度変異乳がんは、背景の変異過程とは無関係に、免疫チェックポイント阻害薬療法から利益が得られる可能性が高いことが予備データから示唆される。

本研究は以下より助成を受けた:the NCI Breast Cancer SPORE, Susan G. Komen, The V Foundation, The Breast Cancer Alliance, The Cancer Couch Foundation, Twisted Pink, Hope Scarves, Breast Cancer Research Foundation, ACT, the Fashion Footwear Association of New York and the Friends of the Dana-Farber Cancer Institute。

参考文献:Barroso-Sousa R, Jain E, Cohen E, et al.Prevalence and mutational determinants of high tumor mutation burden in breast cancer. Annals of Oncology; Published online 9 January 2020. https://doi.org/10.1016/j.annonc.2019.11.010

 

翻訳佐復純子

監修下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター 中央病院)

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