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PIK3CA変異陽性転移性乳がんの特徴解明が進む―SAFIR02試験

SAFIR02試験に参加したPIK3CA変異を有する転移性乳がん患者の予後および分子全体像を解析したところ、PIK3CA変異陽性ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性乳がん患者は予後不良であり、化学療法抵抗性であることが示された。PIK3CA変異陽性トリプルネガティブ乳がん患者の全生存は良好であることがわかった。これは腫瘍が転移した状態でホルモン受容体発現が失われたルミナル乳がんにおいて、PIK3CA変異が濃縮されたことによると考えられる。本試験結果は、2020年1月24日にAnnals of Oncology電子版に掲載された。

Gustave Roussy(フランス、ヴィルジュイフ)のFabrice André教授を筆頭とする研究著者らは、早期乳がんの約20%〜40%にPIK3CA体細胞変異が検出され、ホルモン陽性乳がんではその検出頻度がさらに高くなると研究背景に記している。早期乳がんにおけるPIK3CA 変異の臨床的関連性はすでに評価されており、これら先行研究ではPIK3CA変異は、ホルモン陽性/HER2陰性早期乳がん患者の良好な予後に関連すると示唆している。早期乳がんに関するデータは幅広く報告されてきたものの、PIK3CA変異を有する転移性乳がん患者の分子特性評価と臨床成績に焦点を当てた研究はなかった。PIK3CA変異を有する転移性乳がん患者の特性に関する解明が進めば、治療全体像におけるPI3K阻害剤のより的確な位置づけと、薬剤開発に向けた新たな患者集団の特定が可能になる。

SAFIR02試験(NCT02299999)から解析可能な変異プロファイルを持つ転移性乳がん患者合計649人を予後解析のために選定した。PIK3CA変異は、転移サンプルにおいて次世代シーケンシング(NGS)により前向きに解析した。PIK3CA変異を有する転移性乳がんの変異全体像は、患者617人の全エクソームシーケンシングにより評価した。化学療法投与期間のPIK3CA変異予後値は患者44人から採取した血漿サンプルのNGSおよびデジタルPCRにより評価した。

PIK3CA変異がみられたのは、ホルモン陽性/HER2陰性乳がんでは28%、トリプルネガティブ乳がんでは10%であった(p <0.001)。 PIK3CA変異ホルモン陽性/HER2陰性転移性乳がんは化学療法に対する感受性が低く(調整オッズ比:0.40; p = 0.002)、全生存もPIK3CA野生型(変異無し)と比較して不良であった(調整ハザード比:1.44; p = 0.04)。

PIK3CA変異ホルモン陽性/HER2陰性転移性乳がんでは、MAP3K1変異が濃縮されていた(15%対5%、p = 0.0005)。

転移性トリプルネガティブ乳がんにおける全生存期間中央値は、PIK3CA 変異を有する患者が24カ月であるのに対して、PIK3CA 野生型では14カ月であった(p = 0.03)。研究チームはさらに、原発腫瘍のホルモン受容体発現に応じて、転移性トリプルネガティブ乳がんにおけるPIK3CA変異分布を調査した。合計で、原発腫瘍ホルモン陰性患者の6%、および原発腫瘍ホルモン陽性患者の36%にPIK3CA変異がみられた(p <0.001)。

化学療法1〜3サイクル投与後の血漿中残存PIK3CA変異レベルは 全生存不良と関連していた(連続型変数、ハザード比:1.03、p = 0.007)。

PIK3CA変異ホルモン陽性/HER2陰性転移性乳がん患者は新薬を必要としているにもかかわらず、その医療ニーズがいまだ満たされていないと著者らは述べる。加えて、PI3K阻害薬感受性に対するMAP3K1 変異および PIK3CA相互変化の予測値を調査する必要もある。転移性トリプルネガティブ乳がんにおいて、特に原発腫瘍でホルモン受容体を発現している患者では、PI3K阻害薬開発の機会があることを本研究知見は示唆している。

この研究は以下の団体の支援を受けた。Fondation ARC Pour La Recherche Sur Le Cancer, Breast Cancer Research Foundation, Operation Parrain Chercheurs, and Transcan

参考文献:

Mosele F, Stefanovska B, Lusque A, et al. Outcome and molecular landscape of patients with PIK3CA-mutated metastatic breast cancer. Annals of Oncology; Published online 24 January 2020. https://doi.org/10.1016/j.annonc.2019.11.006

翻訳佐藤美奈子

監修花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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