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尿路上皮がん術前免疫チェックポイント阻害の有効性とバイオマーカー解析

ABACUS試験の結果

筋層浸潤性尿路上皮がん患者95人を対象とした、膀胱全摘除術前2サイクルのアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)の効果を検証した単群第2相試験の結果では、31%の病理学的完全奏効(pCR)率が示された。したがって、この試験は有効性の主要評価項目を達成した。バイオマーカー解析では、腫瘍内の活性化CD-8陽性T細胞および細胞障害性T細胞の特徴が免疫応答と関係することが示された。ABACUS試験の結果は、英国ロンドンのQueen Mary大学(QMUL)のBartsがん研究所、Barts実験がん医学センターのThomas Powles教授および共同研究者により、2019年11月4日出版のNature Medicine誌で発表された。

膀胱全摘除術は、術前化学療法に適さない筋層浸潤性尿路上皮がん患者の標準治療である。転帰は不良で、新しい治療が望まれている。

アテゾリズマブのようなPD-1またはPD-L1を標的とする抗体は、転移性尿路上皮がんの一部に効果を示す。バイオマーカーは、これらの応答する腫瘍の識別を容易にする可能性がある。これらの薬剤を術前に使用することは、尿路上皮がんを含む多くの腫瘍において、病理学的完全奏効(pCR)と関係している。

術前療法の設定によって、逐次的な組織サンプリングおよび奏効と再発に関連する分子経路の特定が可能となった。転移を起こす場合に示される3つの生物学的反応を最初に調査した。

1.既存のCD8陽性T細胞免疫

2.特に排除された免疫表現型を示す腫瘍内のトランスフォーミング増殖因子(TGF)-β

3.DNA損傷の修復および細胞周期に関する転写の特徴に関連した腫瘍遺伝子変異量(TMB)

奏効と抵抗性のマーカーを特定するために、DNA変異の探索的解析も行った。

Nature Medicine誌の記事で、ABACUS試験の研究者は、筋層浸潤性尿路上皮がん患者に対して膀胱全摘除術前にアテゾリズマブ2サイクルを投与した単群第2相試験の結果を発表した。病理学的完全奏効(pCR)が主要評価項目であった。副次的評価項目では、安全性、無再発生存率、およびバイオマーカー分析に注目した。

2016年5月から2018年6月までに、21施設から95人の患者を募集した。追跡期間の中央値は13.1カ月であった。全体で、88人の患者の主要評価項目が評価可能であった。87人の患者は膀胱全摘除術を受けた。8人の患者は膀胱全摘除術を受けず、そのうち3人は治療に関連していた。解析時、17人の患者は再発し、17人の患者が死亡していた(一人は術後に死亡し、一人は治療関連死であった)。アテゾリズマブ開始から手術までの期間の中央値は、5.6週間であった。

pCR率は31%であった。したがって、本試験の有効性の主要評価項目は達成された。

治療前のバイオマーカーは、既存の活性化T細胞の存在が予想よりも顕著であり、結果と相関していることを示した。TMBのような、他に設定したバイオマーカーでは、転帰の予測ができず、転移を起こす場合とは異なっていた。治療によって遺伝子発現の特徴とタンパク質バイオマーカーに大きな変化があったが、治療によるDNA変異が変化することはまれであった。奏功を示す腫瘍が、治療後に組織修復に関連する遺伝子の発現が顕著であったことにより、このグループにおける腫瘍バイオマーカーの解釈が困難になった。治療後の細胞周期遺伝子の発現が高かったのと同様、TGF-βや線維芽細胞活性化タンパク質のような間質因子は、耐性に関係していた。

本試験は全てBartsがん研究所の実験がん医学センターで組織、監督された。バイオマーカー解析にはimCORE (Roche)およびHistogenexを使用した。QMULが本試験の出資者であった。Roshe社は本試験のためのQMUL資金調達を承諾し、試験薬を提供した。

参考文献:Powles T, Kockx M, Rodriguez-Vida A, et al. Clinical efficacy and biomarker analysis of neoadjuvant atezolizumab in operable urothelial carcinoma in the ABACUS trialNature Medicine; Published online 4 November 2019.

 

翻訳沼田理

監修榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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