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HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対するHER2標的薬の併用

2種類のHER2標的薬の併用療法が、HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対して臨床的に有用であることがTRIUMPH試験とMOUNTAINEER試験で示された。しかし、HERACLES-B試験では主要評価項目を達成しなかった。

HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対して、ヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)を標的とする薬剤を、さまざまな組み合わせで投与した場合の有効性を評価した3つの試験の結果が、スペインのバルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO) 年次総会で報告された。

TRIUMPH試験とMOUNTAINEER試験の両研究では、高い奏効率が報告され、HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対するHER2標的薬の併用療法の有用性が裏付けられた。しかし、同様にHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者を組み入れたHERACLES-B試験では、主要評価項目として設定した奏効率を達成しなかった。

HER2増幅は全大腸がん患者の2%、RAS野生型進行再発大腸がん患者では最大6%に認められ、治療の標的となり得る。3試験すべてにおいて、HER2増幅が確定された進行再発大腸がん患者が登録された。

トラスツズマブ(ハーセプチン)とペルツズマブ(パージェタ)の併用は、組織学的またはctDNA(血中循環腫瘍DNA解析によって確定されたRAS野生型でHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対する有用性を示した

第2相TRIUMPH試験(UMIN000027887)で、国立がん研究センター東病院消化管内科の中村能章医師らは、組織学的検査やGuardant360アッセイを使用したctDNA解析によって確認されたRAS野生型でHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者19人を登録した。また、抗上皮成長因子受容体(EGFR)療法を含む標準化学療法に対して不耐または抵抗性を示した患者を対象とした。

すべての患者は、3週間間隔でHER2標的薬であるトラスツズマブとペルツズマブを投与された。治験担当医師の評価による客観的奏効率(ORR)を主要評価項目とし、組織学的にHER2陽性と診断された患者とctDNAでHER2陽性と診断された患者の2群に分けて評価した。ORRの期待値を30%として、閾値5%を検証するには、片側検定有意水準(α)=2.5%、β=10%での検出に必要な患者数は各群最低25人であった。本解析において、統計的有意性を示すには各群5人の奏効例が必要であった。

登録された患者のうち18人は、最初の腫瘍評価で効果判定が実施できた。 14人の患者では、組織とctDNAの両サンプルでHER2増幅が確認され、3人は組織のみ、1人はctDNAのみで確定された。17人を組織陽性群、15人をctDNA陽性群に割り当てた。

組織陽性群の解析では、6人の患者で奏効が確認され、奏効率は35%(95%信頼区間(CI):14-62%)であった。 6人のうち、1人は完全奏効(CR)、5人は部分奏効(PR)であった。

ctDNA陽性群では、奏効率は33%(95%CI:12-62%)で、1人は完全奏効(CR)、4人は部分奏効(PR)であった。

トラスツズマブとtucatinib[ツカチニブ]の併用療法は、RAS野生型でHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に非常に有効

米国ダーラムにあるデューク大学医療センターのJohn H. Strickler氏は、共同研究者およびAcademic and Community Cancer Research United(ACCRU)ネットワークを代表して、多施設共同非盲検単群第2相MOUNTAINEER試験(NCT03043313)について最初の結果を発表した。

HER2増幅の発生率は、RAS野生型進行再発大腸がん患者で高くなっている。Tucatinibは、新たに開発されたHER2受容体に強力な選択性をもつ経口チロシンキナーゼ阻害剤である。HER2陽性進行再発大腸がん患者由来の異種移植モデルにおいて、トラスツズマブとの併用療法が、いずれかの単独療法よりも有意に高い抗腫瘍活性を示すことが実証されており、本試験の理論的根拠となっている。

MOUNTAINEER試験には、RAS野生型でHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者が登録された。 HER2の増幅および/または過剰発現は、腫瘍組織を使用し、次世代シーケンシング(NGS)、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、免疫組織染色(3+法または2+法とFISH)のいずれかで確認された。また、5-FU、オキサリプラチン、イリノテカン、および抗VEGF抗体による治療歴がある患者を対象とし、HER2標的薬の治療歴がある患者は除外した。

登録された26人の患者のうち、62%が男性で、年齢の中央値は50歳(範囲:24〜70歳)であった。腫瘍の原発部位は、4人が右側結腸、17人が左側結腸・直腸、3人が横行結腸、2人が重複または複数の部位であった。

患者は、1日2回tucatinib 300 mgを内服し、3週間間隔で標準用量のトラスツズマブを点滴静注された。主要評価項目は、RECIST v1.1に従い評価した奏効率(ORR)であった。本研究では、Fleming法を使用して二段階の解析を行い、片側検定α=0.11、β=0.16を使用して、10人または25人の評価可能な患者の奏効率を20%(帰無仮説)と40%(対立仮説)とし比較した。有効性の主要評価項目を満たすためには、少なくとも8人の奏効例が必要であった。

2019年4月26日現在、26人の患者が登録され、そのうち23人で1回以上の腫瘍評価が実施されており、評価可能例としている。これらの患者において、奏効率は52%で、12人はCRまたはPR、6人は安定(SD)の判定であった。 5人の患者は病勢増悪の判定であった。奏効期間の中央値は、評価可能な症例数に達していない。

4カ月以上維持された完全奏効(CR)および部分奏効(PR)および安定(SD)の患者として定義した 臨床的有用率は64%であった。

PFSの中央値は8.1カ月であった(95%CI:3.8-推定不能(NE))。全生存期間の中央値は18.7カ月であった(95%CI:12.3-NE)。

2人(8%)の患者において、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)が報告されたが、グレード4/5のTRAEは報告されなかった。最も一般的な治療関連有害事象(TRAE)としては、グレード1のAST上昇が38%、グレード1のALT上昇が23%の患者で報告された。下痢は、グレード1が4%、グレード2が15%、グレード3が4%の患者で報告された。

ペルツズマブ(パージェタ)とT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)の併用は、RAS野生型のHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者で疾患制御を示すも、客観的な奏効率の向上は示さず

ニグアルダがんセンターおよびイタリアのミラノ大学に所属するAndrea Sartore-Bianchi氏らは、多施設共同HERCLES-A試験で、HER2標的薬であるトラスツズマブとラパチニブの併用療法がHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に有効であることを初めて示した。本試験では、ORRは最大30%であった。

本結果に基づき、RAS/BRAF野生型でHER2増幅を有する大腸がん患者を対象に、ペルツズマブとT-DM1の併用療法を評価する非盲検第2相HERACLES-B試験(EudraCT番号2012-002128-33)が開始された。パフォーマンスステータスが0-1であり、5-FU、オキサリプラチン、イリノテカン、および抗EGFR薬を含むレジメンによる治療後に疾患進行を示した患者を対象とした。患者が試験前に経験したレジメン数の中央値は3レジメンであった。

すべての患者は、ペルツズマブを初回投与時には840mg、2回目以降は420mgを3週間間隔で点滴静注された。また、3.6mg/kgのT-DM1を3週間間隔で投与された。腫瘍組織および血漿サンプルを用いて、NGSに基づく解析を実施した。

奏効率(ORR)を主要評価項目、無増悪生存期間(PFS)を副次評価項目とした。本試験では、Fleming/Hernデザイン(帰無仮説(H0)= ORR 10%、α=0.05、検出力=0.85)を使用し、主要評価項目を達成するためには、部分奏効(PR)または完全奏効(CR)の患者が7人(30%)必要であった。

2016年8月から2018年3月までに30人の患者が登録され、全員が評価可能例としてデータロックおよび画像評価の中央効果判定を終えた。

データのカットオフ時に、奏効率は10%(95%CI:40-28%)、患者の70%(95%CI:50-85)が安定(SD)であった。これに対し、無増悪生存期間(PFS)の中央値は4.8カ月(95%CI:3.6-5.8)であり、HERACLES-A試験で報告されたPFSの中央値4.2カ月と比較して良好なデータであった。

したがって、RAS/BRAF野生型のHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者の大多数は奏効率の向上を示さなかったが、ペルツズマブとT-DM1の併用により、安定(SD)の達成および無増悪生存期間(PFS)延長効果が示唆された。

免疫組織染色により確認されたHER2の高発現の(3+法 対 2+法)は、4カ月以上続く奏効およびSDの増加と関連があった(p=0.03)。

合計296の治療サイクルが実施され、グレード2以下の有害事象は全サイクルの84%で発生した。その内訳は、主に悪心と疲労であった。TRAEであるグレード3の血小板減少症は2人の患者で報告された。

結論

TRIUMPH試験およびMOUNTAINEER試験では、各々の主要評価項目である奏効率(ORR)を達成した。

TRIUMPH試験は、組織またはctDNA解析により確定されたHER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対して、HER2標的薬の有効性を前向きに評価した最初の試験であり、治療抵抗性のHER2陽性進行再発大腸がん患者におけるトラスツズマブとペルツズマブの併用療法が有用であることを示した。さらに著者らは、併用療法の毒性に関しては、各薬剤のこれまでの報告と一致し許容可能なものあると結論付けた。また、KRASBRAFPIK3CAHER2などの発癌に寄与するクローナルなctDNAドライバー変異が、治療に対する一次耐性の予測因子となり得る点に注目した。

MOUNTAINEER試験では、評価可能例であるRAS野生型HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者の半数以上が奏効を達成し、tucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性が示された。本併用療法は忍容性が高く、これらの結果は、HER2増幅を有する進行再発大腸がん患者に対してMOUNTAINEER試験をさらに大規模で行う必要があることを示唆している。

HERACLES-B試験は主要評価項目(ORR)を達成しなかったが、著者らはPFS中央値が4.8カ月であり、本併用療法の有用性を示したHERACLES-A試験で報告された4.2カ月と比較して、良好なデータが得られたこと、患者の80%で疾患制御(PRとSD)が達成されたことを強調した。彼らは、T-DM1で投与されたトラスツズマブが低用量であるためORRが弱められた可能性があると提案したが、PFSが延長したのは、エムタンシンとペルツズマブとの相乗効果の可能性がある。

情報開示
TRIUMPH試験は、日本医療研究開発機構の資金提供を受けた。MOUNTAINEER試験は、Seattle Genetics社の資金提供を受け、ACCRUネットワークを介してサポートを受けた。 HERACLES-B試験は、Associazione Italiana per la Ricerca sul Cancro (AIRC)によって設立されたFondazione Piemontese per l’Oncologia (FPO)が後援する非営利臨床試験である。Roche社は、ペルツズマブとT-DM1を無償提供した。

参考文献:
526PD – Nakamura Y, Okamoto W, Kato T, et al. TRIUMPH: Primary Efficacy of a Phase II Trial of Trastuzumab (T) and Pertuzumab (P) in Patients (pts) with Metastatic Colorectal Cancer (mCRC) with HER2 (ERBB2) Amplification (amp) in Tumor Tissue or Circulating Tumor DNA (ctDNA): A GOZILA Sub-study.
527PD – Strickler JH, Zemla T, Ou F-S, et al. Trastuzumab and tucatinib for the treatment of HER2 amplified metastatic colorectal cancer (mCRC): Initial results from the MOUNTAINEER trial.
LBA35 – Sartore-Bianchi A, Martino C, Lonardi S, et al. Phase II Study of Pertuzumab and Trastuzumab-emtansine (T-DM1) in Patients with HER2-positive Metastatic Colorectal Cancer: the HERACLES-B (HER2 Amplification for Colo-rectaL cancer Enhanced Stratification, cohort B) Trial.

翻訳河合加奈

監修中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター 東病院 消化管内科)

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