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先進国の平均体重女性では、50歳からのホルモン補充療法により乳がん発症率が上昇

  • 2019年10月8日
  • 発信元:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

国際的な疫学研究エビデンスの参加者個人データを用いたメタ解析結果

Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancerが国際的な疫学研究エビデンスの参加者個人データを用いて、閉経期ホルモン補充療法(MHT)の種類およびタイミングと乳がんリスクに関するメタ解析を行った結果、西洋諸国で1990年以降乳がんと診断された約2000万人のうち約100万人にホルモン補充療法の使用との因果関係が認められた。閉経期に全身のホルモン療法を開始した女性は、外見では類似していてもホルモン補助療法を使用したことがない女性と比べて浸潤性乳がんの発症リスクが高かった。現在のホルモン補充療法使用者は過去の使用者と比べてリスクが高かったが、ホルモン補充療法の中止後もある程度のリスクが10年以上持続したことも示された。ホルモン補充療法の使用期間が1年未満の場合にはリスク増加はほとんどみられなかったが、1~4年ではリスク増加との間に明確な関連が認められ、それ以上の期間の使用では期間が長くなるほど高いリスクが認められた。

使用期間を一定とすると、現在の閉経期ホルモン補充療法(MHT)使用者はエストロゲン受容体(ER)陽性腫瘍のリスク増加がER陰性腫瘍より高かった。 また、エストロゲン+プロゲスターゲン(黄体ホルモン作用物質)の使用はエストロゲン単独に比べてリスクが高く、この傾向はプロゲスターゲンを間欠的でなく毎日使用している場合に顕著であった。エストロゲンの成分や投与経路(経口投与もしくは経皮投与)の間でリスクの大きな違いは認められなかった。ただし、局所用膣エストロゲンの投与では全身の曝露が限られるため、リスクはほとんど認められなかった。エストロゲン+プロゲスターゲン併用について、プロゲスターゲンの成分(微粒子化した天然プロゲスターゲンなど)の間で全般的にリスクの違いは認められなかったが、ジドロゲステロンを含む併用ではリスクが若干低かった。50歳から10年間使用している場合のリスクは倍増 する。これらの研究結果は2019年8月29日のLancet誌電子版に掲載された。

Collaborative Groupは研究の背景について、1997年に公表されたエビデンスを用いた以前のメタ解析で、現在および最近の閉経期ホルモン補助療法使用者の乳がんリスクが高いことが示されたが、閉経期ホルモン補助療法の種類による効果の違いや、使用中止後の長期リスクに関する情報がほとんどなかった、と説明している。

その後、ランダム化試験の結果など、新たな情報が多く入手できるようになっている。これらの試験結果から、エストロゲン+プロゲスターゲンを含有する製剤による治療はエストロゲンのみを含有する製剤に比べて乳がんリスクが高いことが全般的に示されているが、過去に使用した場合の長期的な影響に関する文献情報は依然として少ない。

閉経期ホルモン補助療法は主に西洋諸国で使用されており、1970年以降、計約6億人年の女性が使用している。その使用者数は1990年代において急増し、2000年代はじめに急減し、2010年代で横ばいとなり、現在の使用者は約1,200万人である。女性は閉経期にホルモン補充療法の使用を開始する傾向があり、数年継続することが多い。

西洋諸国では乳がんはこの年齢(閉経期)において最も一般的ながんであり、女性の約3%は50代のうちに乳がんと診断されている。欧州および米国の規制当局は閉経期ホルモン補充療法の使用について必要最低限の短期間に抑えることを推奨しているものの、臨床でのガイドラインでは閉経期ホルモン補充療法の処方制限の緩和を推奨しているものもある。

本研究では、疫学的エビデンスを公表・未公表を問わず収集し、関連するランダム化試験のエビデンスをレビューした。主解析では、閉経期ホルモン補充療法使用の種類と時期に関する情報について検証したあらゆる適格な前向き研究から得た参加者個人データを使用し、そのうち主要解析では、上記の情報が完全にそろっている個人データを対象とした。1992年から2018年までに公式・非公式を問わずに情報源を定期的に検索し、解析対象とする研究を特定した。現在の閉経期ホルモン補助療法使用者として、最後に報告した閉経期ホルモン補助療法使用から最長5年(平均1.4年)までの使用者を解析に含めた。ロジスティック回帰を用いて、特定の閉経期ホルモン補助療法使用者の群と非使用者の群の比較における補正リスク比(RR)を算出した。

前向き研究のフォローアップ期間中、108,647人の閉経後女性が、平均年齢65歳で乳がんを発症し、うち55,575人(51%)に閉経期ホルモン補助療法使用歴があった。完全な情報のある女性におけるホルモン補充療法の平均使用期間は、現在の使用者で10年、以前の使用者で7年であり、閉経時の平均年齢は50歳であり、閉経期ホルモン補充療法使用開始時の平均年齢も50歳であった。

膣エストロゲンを除き、あらゆる種類の閉経期ホルモン補助療法(MHT)が乳がんのリスク増加と関連があり、使用期間が長くなるほどリスクが上昇し、エストロゲン-プロゲスターゲンはエストロゲン単独に比べてリスクが高かった。現在の使用者では、これらの乳がんのリスク増加はMHT使用期間が1~4年でも明確に認められ(エストロゲン+プロゲスターゲンのRR:1.60、エストロゲン単独のRR:1.17)、使用期間が5~14年ではその2倍(エストロゲン+プロゲスターゲンのRR:2.08、エストロゲン単独のRR:1.33)であった。エストロゲン+プロゲスターゲンの使用期間5~14年におけるリスクは、毎日使用している場合、それより使用頻度が少ない場合に比べて高かった(毎日使用している場合のRR:2.30、使用頻度が少ない場合のRR:1.93、異質性検定p < 0.0001)。

閉経期ホルモン補充療法の種類を一定とすると、現在のホルモン補充療法使用者の使用期間5~14年におけるRRは、ER陽性腫瘍がER陰性腫瘍より明らかに高く、ホルモン補充療法の使用開始年齢が40~44歳、45~49歳、50~54歳、55~59歳の女性でほぼ同じであり、60歳以降に使用開始した女性または肥満の女性では低下した(肥満女性ではエストロゲン単独の使用によるリスクは低かった)。

閉経期ホルモン補助療法の使用を中止した後も、ある程度のリスク増加が10年以上持続した。その程度は以前の使用期間によって異なり、閉経期ホルモン補充療法の使用期間が1年未満の場合はリスク増加が認められなかった。

本研究の著者は、これらの因果関係が概ね認められるのであれば、先進国の平均体重の女性は、閉経期ホルモン補充療法を50歳から5年使用すると50~69歳における乳がんリスクが上昇し、その発症率はエストロゲン+毎日のプロゲスターゲン使用で50人に1人、エストロゲン+間欠的なプロゲスターゲン使用で70人に1人、エストロゲン単独使用で200人に1人の割合となる、と結論づけた。閉経期ホルモン補充療法の使用期間10年におけるリスクは倍増する。

本研究の中央機関データの収集、確認、解析、および原稿作成において、Cancer Research UKのCancer Epidemiology UnitおよびMedical Research Council(英国医学研究会議)の助成を受けている。

翻訳瀧井希純

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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