早期のミスマッチ修復欠損大腸がんに二ボ・イピ免疫療法が著効

 [ESMO 2018プレスリリース]

ニボルマブ(免疫チェックポイント阻害剤)+イピリムマブ(免疫チェックポイント阻害剤)の術前併用療法がミスマッチ修復欠損を呈する早期大腸がん患者において100%の割合で病理学的な著効を示したことが、ESMO 2018(1)で報告された。本結果は第2相試験によるものだが、当該のニボルマブ+イピリムマブ術前併用療法を検証する初の第2相試験となる。

「ニボルマブやイピリムマブを利用してがん細胞に対抗する患者の免疫応答を回復させる」という治療法は、複数の腫瘍タイプにおいて確立した治療法となっている。ニボルマブやイピリムマブはミスマッチ修復欠損(dMMR)腫瘍の治療において特に関心を集めている。これは、dMMR腫瘍の変異量と免疫チェックポイントの発現増加が高いためである。

これまでにチェックポイント阻害剤は遠隔転移を有する大腸がんの治療において持続的な奏効を示している。このために、今回の新規試験では早期のdMMR大腸がんに対する術前補助療法が臨床的に意義のある奏効率につながるかどうかという点を検証した。

今回の探索的な臨床試験では早期の大腸がん患者14名を対象とし、ニボルマブ(免疫チェックポイント阻害剤、用量:1日目と15日目に3mg/kgの2回投与)+イピリムマブ(免疫チェックポイント阻害剤、用量:1日目に1mg/kgの1回投与)による治療を行った。  両剤の免疫応答を回復する作用機序は異なり、イピリムマブは細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)を阻害し、ニボルマブはプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)を阻害する。

ESMO 2018で報告された結果によると、dMMR大腸がん患者の100%(7人中7人)で病理学的な著効(残存腫瘍細胞が5%未満と定義)が認められた。この7人の患者のうち4人(57%)では完全奏効が認められた。

これに対し、pMMR腫瘍では病理学的著効は認めらなかった。しかし、T細胞の浸潤が大幅に増加していた。

この免疫療法の忍容性は良好であり、全患者に対し、外科手術において根治術を即時に実行できた。

「今回の試験は、早期大腸腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害剤の初の試験です。dMMR大腸がんに対する術前免疫療法に関し、さらに研究する必要があります。又、この免疫療法により標準療法が変わる可能性があることが今回の研究データから示唆されます」、と筆頭著者であり、オランダがん研究所(アムステルダム、オランダ)のMyriam Chalabi博士は述べた。また、Chalabi博士は次のようにコメントした:「今回確認された反応は転移病変で認められるものより顕著なものでした。こんなに効果があるとは我々も予想していませんでした」。

「MMR 欠損腫瘍に関して言えば、今回の結果は驚くべき結果です。今のところ、短期治療期間(通常、4週間)の間、患者の100%で完全奏効、あるいは完全奏効に近い状態が確認されています」とChalabi博士は続けた。「今回の知見により将来の臨床診療における意義が示されたと思います。今の段階では、“治療方針の変更”に至る結果と呼ぶには早すぎますが、より大規模な試験で同様の結果が確認されたらそうなるかもしれません」。

ESMOの当研究結果に関し、ギュスタフ・ルーシーがん研究所(ヴィルジュイフ、フランス)のがん免疫療法プログラム臨床ディレクターであるAurélien Marabelle博士は以下のようにコメントした:

「今回の研究結果から、局所疾患を呈する患者に対し、免疫治療がより早期の段階で行われる可能性が示唆されています。また、興味深いことですが、術後治療ではなく術前での治療が行われるかもしれません。いまのところ、術前治療はメラノーマ(悪性黒色腫)と非小細胞肺がんにおいて承認されています」。

Marabelle博士は、本試験の規模は小規模でランダム化試験ではなく、対照群の患者に対して免疫療法が施行されていない、という点に注意を喚起し、次のように述べた:「既存のデータは限られていますが、術前においてこの免疫療法が病理学的完全奏効につながれば、この治療戦略がdMMR大腸がん標準治療となる可能性があります」。また、Marabelle博士は、dMMR腫瘍は遠隔転移を有するステージ(患者の5%以下)よりも局所がん(15%以下)において頻度が高いことについても言及した。

翻訳担当者 三浦恵子

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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