患者特異的HLAクラスI遺伝子型は免疫CP阻害薬に対する反応に影響

特定の生殖細胞系列HLA遺伝子型と治療成績との関連性

患者特異的ヒト白血球抗原(HLA)クラスI遺伝子型が抗PD-1または抗CTLA-4抗体に対する反応にどの程度影響するかを明らかにするために、米国の研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬で治療した進行がん患者1,535人のHLAクラスI遺伝子型を決定した。この結果は、免疫チェックポイント阻害療法に対する応答の予測および新抗原ベースの治療用ワクチンのデザインに重要な意味を持つ。

今日まで免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有効性を予測する試験の大半は、腫瘍の免疫表現型、体細胞ゲノムの特徴、または腸のマイクロバイオーム(腸内細菌叢)に焦点を当てているが、宿主の生殖細胞系の遺伝子が反応にどのように影響するかは不明であると試験背景に記している。

HLAクラスI遺伝子型は、感染、炎症状態、および自己免疫疾患に対する異なる免疫応答と関連している。免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍活性は、CD8陽性T細胞、HLAクラスI依存性免疫活性に依存することが示されている。

この研究チームは、免疫チェックポイント阻害薬で治療されたがん患者の2つのコホートを調査した。コホート1は、抗CTLA-4または抗PD-1療法で治療された患者369人からなり、エクソームシーケンシング(配列決定)および臨床データが得られた。コホート1では、269人が進行メラノーマ(悪性黒色腫)、そして100人が進行非小細胞肺癌(NSCLC)であった。NSCLC患者は、主に抗PD-1単剤療法で治療された。コホート2は、メラノーマおよびNSCLCを含む異なるがん種を有する患者1166人からなり、それらの腫瘍について、ターゲット次世代シーケンシングが実施された。これらの患者は、スローンケタリング記念がんセンターでCTLA-4、PD-1/PD-L1、またはその両方を標的とする薬剤で治療された。両コホートの全患者について、研究者らはDNAシーケンシングデータまたは臨床的に立証されたHLAタイピングアッセイ(LabCorp社)を用いて、正常DNAから高分解能HLAクラスI遺伝子型タイピングを実施した。

研究者らは、HLAクラスI遺伝子座における最大のヘテロ接合性が、少なくとも1つのHLA遺伝子座についてホモ接合である患者と比較して、免疫チェックポイント阻害薬投与後の全生存を改善することを見出した。

臨床的意義を探るために、研究者らはその後、同様のペプチド結合特性に基づいて各HLAクラスI対立遺伝子を特異的上位型に分類した。

2つの独立したメラノーマコホートにおいて、HLA-B44上位型の患者は生存期間が延長したが、HLA-B62上位型(HLA-B*15:01を含む)またはHLAクラスIにおける体細胞性のヘテロ接合性消失は不良な治療成績と関連した。HLA-B*15:01の分子動力学シミュレーションにより、新抗原のCD8陽性T細胞認識を損なう可能性のある独特なエレメントが明らかになった。

著者らは、これらの発見から、HLAクラスI遺伝子が免疫チェックポイント阻害薬に対する患者の生存に影響を及ぼすことが明らかになると結論づけた。患者の特異的HLAクラスI遺伝子型および腫瘍の体細胞変化は、免疫チェックポイント阻害療法に対する臨床転帰に影響を及ぼし、これらの因子が今後の臨床試験のデザインにおいて考慮されうることを示唆している。B44が長期全生存と関連するという観察は、メラノーマによって発現される免疫優性HLA-B44拘束性新生抗原を標的とする可能性のある治療用ワクチンの開発の機会を提供するかもしれない。

Science誌に発表された発見は、HLAクラスIホモ接合性とヘテロ接合性消失が、効果的な免疫療法に対する遺伝的障壁を表し、免疫系を利用する代替方法が、臨床的利益を最大化するために必要であるかもしれないことを示している。

翻訳担当者 中野駿介

監修 小宮武文(腫瘍内科/トゥーレーン大学)

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