Atezolizumab免疫療法後の膀胱がん患者の新たな生存予測モデル

要約には抄録にない最新データを掲載

専門家の見解

「免疫療法の進歩は過去10年間で急速に進み、以前は治療が困難であった膀胱がんなどの多くのがんの治療に素晴らしい成功を収めています。しかし、免疫治療法に対し長期的な治療効果が得られるのは少数の患者であり、現在、これらの患者を同定する方法もありません。本研究により、予後モデルは最も高い治療効果を得る可能性がある患者に免疫療法を適用するのに有用であることが示唆されました」と本日のPresscastの司会でもあり、米国臨床腫瘍学会(ASCO)エキスパートのSumanta K. Pal医師は述べた。

研究者らは、免疫チェックポイント阻害剤atezolizumabで治療された進行性尿路上皮がん患者の全生存期間を予測するモデルを開発した。このモデルは、6つの臨床学的因子に基づいており、これらの患者に対しatezolizumabの使用に関する治療方針決定のための情報を提供できる可能性がある。これらの成果は、カリフォルニア州サンフランシスコで開催される2018年泌尿生殖器腫瘍シンポジウムで発表される予定である。

本研究の筆頭著者であり、カナダ、オンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター大学の准教授Gregory Pond博士は次のように述べた。「ほんのここ数年だけを見ても、米国食品医薬品局は尿路上皮がんに対して5つの新しい免疫療法を承認しています。新しい治療法の急速な拡大に伴い、これらの新薬の1つであるatezolizumabの効果が最大限に得られる患者を同定することが重要であると考えました。 我々が開発した最初の予後モデルは、大規模な研究で実証されれば、臨床医の重要な意思決定に役立つツールになるだろうと考えています」。

研究について

尿路上皮がんは主として泌尿器系に発生し、膀胱がんは尿路上皮がんの大部分を占める。 他のタイプには、尿管および腎盂がんが含まれる。米国では、2018年に推定される膀胱がんの新規症例数は81190人、同疾患による死亡数は17240人としている1 2017年、膀胱がんは米国で6番目に多いがんであった2

予後モデルを開発するために、研究者らは、膀胱がんの標準治療であるシスプラチン化学療法後に増悪した進行性尿路上皮がんを有する患者におけるPD-L1阻害剤atezolizumabの2つの臨床試験のデータを解析した。このモデルは、第2相IMvigor210試験に参加した310人の患者データに基づいて開発され、その後、第1相試験(PCD4989g試験)の95人の患者データに基づいて検証された。

主な知見

研究者らは、化学療法を受けている進行性膀胱がん患者の予後予測因子として知られている様々な臨床学的因子を検討した。これらには、パフォーマンスステータス(患者の日常生活での活動能力)、原発腫瘍の部位および転移部位、診断時の病期、さまざまな血液検査結果、喫煙状況、および前治療などが含まれる。さらに、atezolizumabの治療効果を示す指標である免疫細胞のPD-L1発現状況を解析した。

全生存期間の最適予後モデルには以下の6つの因子が最終的に検討された。

•ECOGのパフォーマンスステータス(日常生活で患者がどの程度の活動能力があるかを評価する)

•肝臓への転移

•血小板数の上昇

•好中球-リンパ球比の増加(炎症が存在するかを示す指標)

•乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇(組織損傷の指標)

•貧血

研究者らは、患者の生存は患者個々が有する予後予測因子の数と関連していることを見出した。 Imvigor210試験では、全生存期間の中央値は、予後因子0-1の場合は19.6カ月、予後因子2-3の場合は5.9カ月、予後因子4以上の場合は2.6カ月であった。

次のステップ

「他の因子も全生存期間に影響しますが、このデータセットでは他の因子は統計的に有意であるとは認められませんでした」とPond博士は述べるとともに、「我々はこの予後モデルで認識された因子が異なるデータセットを通じて一貫しているかを検証するため、今後も解析をおこなって検証する必要があります」と語った。

著者らはまた、特定の特徴を有する患者が他の患者よりもatezolizumab免疫療法による高い効果を得られるかどうかを断定するために、いくつかの部分集団解析を実施したいと考えている。この予後モデルが他の患者集団または他の免疫療法に適用できるかどうかを確認するために、更なる研究も必要である。

本研究のデータはGenentechより提供された。

1American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2018. Atlanta: American Cancer Society; 2018.
2PDQ Adult Treatment Editorial Board. “Bladder Cancer Treatment (PDQ®).” National Center for Biotechnology Information, U.S. National Library of Medicine; 18 Jan. 2018.

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読者のために:

翻訳担当者 小熊未来

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

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