FDAが特定の乳がんおよび胃がんの治療に初のバイオシミラーを承認

米国食品医薬品局(FDA)は本日、腫瘍内でHER2遺伝子が過剰発現する(HER2陽性)乳がんまたは転移性胃がん(胃または胃食道接合部腺がん)の治療薬トラスツズマブ(ハーセプチン)のバイオシミラー、trastuzumab-dkst [トラスツズマブ-dkst](Ogivri)を承認した。トラスツズマブ-dkstは、乳がんまたは胃がんの治療に米国で初めて承認されたバイオシミラーであり、がん治療薬のバイオシミラーとしても2番目である。

どのような治療に用いる場合でも、承認された使用法の詳細について、医療従事者はラベルに記載の処方情報をよく読む必要がある。

「FDAはバイオシミラーの承認数を増やして競争を促進し、医療費を削減しようとしています。がんのように費用面で患者負担が大きい疾患に対しては、特にこういった競争が重要になります。バイオシミラーの使用をさらに進め、バイオ医薬品の競争を促進するような新たな対策をたてていくことは私たちの使命です」と、FDA長官のScott Gottlieb医学博士は述べている。

バイオ医薬品とは生物由来の製品のことで、原料はヒト、動物、微生物または酵母などと多様である。バイオシミラーは、FDAによって既に承認されているバイオ医薬品と高い類似性を持ち、安全性、純度および効力(すなわち、安全性および有効性)の面で臨床的に大きな差がないことを示すデータに基づき承認される。さらに法律で定められているその他の基準を満たしていることが必要である。

トラスツズマブ-dkstのFDA承認はエビデンスの審査に基づいており、広範な構造的および機能的特性、動物試験のデータ、ヒトでの薬物動態および薬力学データ、臨床免疫原性データ、ならびにその他の臨床的安全性および有効性データなどにより、トラスツズマブ-dkstがハーセプチンのバイオシミラーであることが示されている。トラスツズマブ-dkstは互換性のある製品としてではなく、バイオシミラーとして承認された。

一般的に予想されるトラスツズマブ-dkstの副作用として、HER2陽性乳がんの治療においては、頭痛、下痢、悪心、悪寒、発熱、感染、うっ血性心不全、睡眠傷害(不眠症)、咳や発疹などがある。HER2陽性転移性胃がんの治療においては、特定の白血球数低値(好中球減少症)、下痢、疲労、赤血球数低値(貧血)、口の炎症(口内炎)、体重減少、上気道感染、発熱、血小板数低値(血小板減少症)、粘膜の腫脹(粘膜炎)、風邪(鼻咽頭炎)および味覚異常(味覚不全)などがある。予想されるトラスツズマブ-dkstの重篤な副作用としては、化学療法による好中球減少症の悪化などがある

トラスツズマブ-dkstの添付文書にある枠組み警告では、ハーセプチンと同様に、心臓病(心筋症)、注入に伴う反応、肺損傷(肺毒性)、発達中の胎児への害(胎児毒性)のリスク増加について、医療従事者や患者に対して警告がなされている。心筋症、生命を脅かすアレルギー反応(アナフィラキシー)、皮下腫脹(血管浮腫)、肺の炎症(間質性肺臓炎)または肺水貯留(急性呼吸窮迫症候群)が発生した場合、患者はトラスツズマブ-dkstの使用を中止するべきである。胎児への潜在的なリスクや有効な避妊薬の使用についても、患者は助言を受けるべきである。

FDAはMylan GmbH社に対し、正式にトラスツズマブ-dkstを承認した。ハーセプチンは1998年9月に承認され、Genentech社により製造されている。

翻訳担当者 岡部師才

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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