子宮頸がんの新ガイドライン発表ー世界各地の医療事情に即した実践的内容

プレスリリース

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、浸潤子宮頸がんに関するASCO初の臨床実践ガイドラインを発表した。この医療資源レベル別ガイドラインは、ASCOがこの種の指針としては初めて、利用可能な医療資源に応じた推奨治療を提言している。

子宮頸がん患者が受けられる治療内容は、世界の国や地域によって、さらに同一国内でも地域によって異なる。医療資源レベルが低い環境では、子宮頸がん検診プログラムが限定的であるか、まったくないことが多い。そのため、診断がついた時には子宮頸がんが進行していることが多く、こうした地域では進行子宮頸がんに必要な治療がすぐには受けられないこともある。

「子宮頸がんはおおむね予防可能ですが、毎年世界で約25万人の女性が子宮頸がんで死亡します。死亡者数の大半は、東南アジア、西太平洋、インド、アフリカなど発展途上地域での数字です」と話すのは、今回のガイドラインを作成したASCO専門家委員会の共同議長であり、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai、ニューヨーク州ニューヨーク)の婦人科腫瘍専門医、産婦人科・生殖科学教授であるLinus Chuang医師(理学修士)である。「こうした地域では、病理検査、熟練した外科医による手術、放射線機器、小線源治療、化学療法、緩和ケアを受ける機会が非常に限られていると考えられます」。

今回のガイドラインでは、医療資源レベルを基礎、限定、高度、最高度の4段階に分けてエビデンスに基づく推奨内容を提示している。ガイドラインは、それぞれの環境および子宮頸がんのステージに応じて最適な治療および緩和ケアを推奨している。

「どのような医療資源環境であっても、医療従事者は、すべての子宮頸がん患者に最高水準のケアを提供するよう常に努力しなければなりません」。ガイドラインを作成したASCO専門家委員会の共同議長であり、スタンフォード大学医科大学院(Stanford University School of Medicine、カリフォルニア州スタンフォード)の産婦人科・婦人科腫瘍学教授、同学部長であるJonathan S. Berek医師(医学修士)は言う。「このガイドラインを出発点として、この分野で議論が活発になり、切望される研究が進むことを期待しています」。

ガイドライン推奨内容は、婦人科腫瘍・腫瘍内科・放射線腫瘍学、医療経済学、産婦人科学、緩和ケアといったがん治療にかかわる多方面の専門家による学際的専門委員会が作成した。委員会には、がんサバイバーのほか、米国、スペイン、メキシコ、トルコ、カナダ、アルゼンチン、ザンビア、ウガンダ、韓国、中国、インドの専門家が名を連ねた。

委員会は、1966年から2015年に発表された医学文献を系統的に見直すとともに、既存のガイドラインと費用対効果分析を再検討した。文献からのエビデンスや委員会の専門知識に基づいて推奨内容が策定された。推奨内容はすべて、専門家による正式な総意を反映したものである。

主要なガイドライン推奨内容:

・患者が放射線治療を受けられない基礎環境においては、筋膜外子宮摘出術のみ、あるいは術前化学療法後の筋膜外子宮摘出術がステージIA1からIVAの子宮頸がん患者の治療選択肢として推奨される。

・高度、最高度環境においては、放射線治療と化学療法の併用がステージIBからIVAの子宮頸がん患者に対する標準治療である。委員会は、放射線治療期間中の低用量化学療法の併用を強く勧めるが、限定環境で化学療法が利用できない場合には、そのために放射線療法を遅らせることがないようにする。

・小線源治療が実施できない限定資源環境では、同時化学放射線療法および追加照射から2、3カ月後に腫瘍が残存している患者に対して筋膜外子宮摘出術あるいはその改変法をASCO専門家委員会は推奨する。

・医療資源が利用可能であっても患者が治癒目標の治療を受けることができない場合は、症状緩和放射線療法を行い、痛みや出血といった症状を緩和するべきである。

・医療資源に制約がある場合、持続的症状あるいは反復症状に適していれば、再治療と合わせて単回または短期間の放射線療法を行うことができる。

・基礎環境では、ステージIVまたは再発子宮頸がん患者に対して単剤化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン)が推奨される。

・高度、最高度環境では、ステージIBからIVAの子宮頸がん患者に対して放射線療法と化学療法の併用と、それに続く小線源治療が標準治療である。

「子宮頸がんで死亡する人の少なくとも3分の2は、定期的に検診を受けていなかった人々です。世界中で検診とHPVワクチン接種の状況を改善すれば、子宮頸がん死亡率をかなり下げることができると思います」と、Berek医師は話す。ASCOは、今年中に発行される2種類の医療資源レベル別ガイドラインで子宮がん予防と検診を取り上げる。

ガイドライン「浸潤子宮頸がん女性の管理とケア:米国臨床腫瘍学会 医療資源レベル別臨床実践ガイドライン」は、本日、Journal of Global Oncologyで公開され、www.asco.org/rs-cervical-cancer-treatment-guidelineから補足資料とともに閲覧できる。

このガイドラインは、婦人科腫瘍学会(Society of Gynecologic Oncology)および婦人科がんインターグループ(Gynecologic Cancer Intergroup)の推薦を受けている。

関連するASCO資料は以下のとおり:

米国臨床腫瘍学会による声明:がん予防のためのヒトパピローマウイルスワクチン接種
子宮頸がんの手引き
がん治療についての意思決定

がん専門医、開業医、患者からのASCOガイドラインに対するフィードバックは、ASCO Guidelines Wiki (www.asco.org/guidelineswiki)まで。

翻訳担当者 山田登志子

監修 原野謙一(乳腺・婦人科腫瘍内科/国立がん研究センター東病院)

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原文掲載日 

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