画期的な薬剤ONC201が血液がんに有望な可能性

MDアンダーソンがんセンター

最近の臨床試験結果によると、ONC201は、各種腫瘍の細胞死を誘引する抗がん剤であるが、マントル細胞リンパ腫(MCL)と急性骨髄性白血病(AML)を含む血液がんについては臨床的可能性があると考えられる。

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのMichael Andereeff医学博士が率いる研究チームは、ONC201は早期臨床試験を実施中であるが、p53遺伝子と呼ばれる極めて重要なタンパク質が突然変異するか、または完全欠失したときでも、がん細胞を死滅させることを発見した。この機能障害は半分以上の悪性腫瘍に生じて、がんの特徴だけでなく通常の化学療法への耐性も促進可能で、新しく優れた治療の解決策が急務となっている。

本試験結果は、2月16日付けScience Signaling誌電子版に掲載されている。

ONC21は、Oncoceutics Inc社とMDアンダーソンがんセンターが2015年1月に結んだ提携に基き、臨床開発した画期的な薬剤である。本薬剤は、正常細胞に損傷を与えずにがん細胞を死滅させる能力がある点が興味深い。Anderseeff医学博士らは 、以前、広範囲なONC201の前臨床試験を行っている。

「血液悪性腫瘍においてp53異常に起因する臨床上の課題は、標準の化学療法とは別の治療方針が必要だということです。私どもは、ONC201が、リンパ腫と急性白血病患者の細胞株で、p53非依存性の細胞死および細胞周期停止を誘導することを発見した」とAndfeeff医学博士は語った。

患者のサンプルには、予後不良にリンクした遺伝子異常、またはリンパ腫や多発性骨髄腫の患者に一般に使用される薬剤のイブルチニブとボルテゾミブに耐性を持つようになった細胞も含まれていた。さらに、マウス試験によって、ONC201は、ANLおよび白血病肝細胞に細胞死を引き起こすが、正常な骨髄細胞は壊さないと思われる事実が明らかにされた。

ONC201は、ストレス信号によって誘発されたタンパク質ATF4の翻訳を高めた。このストレス信号は、ストレス応答(UPR)や積算したストレス応答(ISR)と呼ばれる細胞応答が引き起こす信号に類似である。全ての細胞タンパク質は、細胞が生き続けるために正確にフォールディングされる必要がある。UPRは、フォールディングされていないタンパク質に対する主な反応であるが、UCRが長期または過剰になれば結局細胞死を引き起こす。同様なメカニズムによって栄養遮断とウイルス感染がISRを引き起こす可能性がある。ATF4は、上記の反応の過程およびONC201治療によって誘発するのが一般的である。ATFは、特定の遺伝指令のオン・オフ機能を有している。

「こうして、ONC201処理をした造血細胞中のATF4は増加して細胞死を促進しました。しかし、UPRやISRとは異なり、ONC201処理をした細胞中で活性化されたATF4の増加は、標準の分子シグナルを通じては制御できず、p53の状態にかかわらずがん細胞にストレスを与えて細胞死を引き起こす新規なメカニズムを示しています。ONC201には、血液腫瘍において臨床的可能性が明白に存在します。最近、MDアンダーソンがんセンターでは、白血病とリンパ腫患者の臨床試験が始まっています」とAndreeff医学博士は語っている。

Ishizawa医学博士を筆頭に、他のMDアンダーソンがんセンターの著者は以下のとおりである:
MD Anderson research team members included Jo Ishizawa, M.D., Ph.D., Kensuke Kojima, M.D., Ph.D., Dhruv Chachad, Peter Ruvolo, Ph.D., Vivian Ruvolo, Rodrigo Jacamo, Ph.D., Gautam Borthakur, M.D., Hong Mu, Ph.D., Zhihong Zeng, Ph.D., Yoko Tabe, M.D., Ph.D., Marina Konopleva, M.D., Ph.D., and Hagop Kantarjian, M.D., all of Leukemia; Zhiqiang Wang, Ph.D., Wencai Ma, Ph.D., Hans Lee, M.D., Robert Orlowski, M.D., Ph.D., Sattva Neelapu, M.D., Michael Wang, M.D., and Eric Davis, M.D., all of Lymphoma/Myeloma; Dos Sarbassov, Ph.D., Molecular and Cellular Oncology; Philip Lorenzi, Ph.D., Bioinformatics and Computational Biology; Xuelin Huang, Ph.D., Biostatistics; and Timothy McDonnell, M.D., Ph.D. and Roberto Miranda, M.D., Hematopathlogy.

その他の参加研究機関は以下の通りである:順天堂大学医学部 (東京都 )、およびOncoceutics Inc. (Hummelstown, Pa)

本試験は、以下の研究機関の助成を受けた:米国国立衛生研究所(CA49639, CA100632, CA136 および CA16672)、テキサス州立がん予防研究所(RPI130397)、(独立行政法人)日本学術振興会、文科省、(公益財団法人) 高松宮妃癌研究基金(14-24610)、大阪癌研究会、およびPaul and Mary Haas Chair in Genetics社。Andreeff医学博士はOncoceutics, Inc社の株主かつ化学諮問委員会のメンバーである。

翻訳担当者 大木勝弥 

監修 北尾章人(血液・腫瘍内科/神戸大学大学院医学研究科)

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