第3相BELLE-2試験においてbuparlisibが無増悪生存期間の主要エンドポイントを達成

12月8日~12日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム2015にて発表されたデータによると、血液中にPIK3CA変異が認められたホルモン療法抵抗性のホルモン受容体陽性局所進行または転移性乳がん女性において、フルベストラント試験段階のPI3K阻害剤であるブパルリシブ[buparlisib]の併用療法が有用性を示した。

「BELLE-2試験は、アロマターゼ阻害剤抵抗性の乳がん患者において、フルベストラントとの併用で試験段階のPI3K阻害剤であるブパルリシブの有効性を評価したランダム化第3相臨床試験です」とニューヨークにあるスローンケタリング記念がんセンター医長でchief medical officerであるJosé Baselga医学博士は述べた。

PI3K経路と呼ばれる細胞シグナル経路の活性化は、PIK3CA遺伝子の変異により引き起こされる場合があり、アロマターゼ阻害剤などを用いた内分泌療法に対する抵抗性の促進に重要な役割を果たすことが幅広い前臨床研究データから示されている、と米国がん学会会長でもあるBaselga氏は説明した。「PI3K経路を阻害することで、内分泌療法抵抗性乳がん患者における治療効果が改善するかどうかを私たちは評価したかったのです」とBaselga氏は述べた。

「本試験にて主要評価項目を達成したことを発表できて嬉しく思います。ブパルリシブとフルベストラントの併用は試験の患者集団全体で有用性を示しましたが、主な転帰は腫瘍にPIK3CA変異を有する患者集団で目覚ましく、また無増悪生存期間の中央値はブパルリシブ+フルベストラント投与を受けた患者集団では7カ月、プラセボ+フルベストラント投与では3.2カ月でした」とBaselga氏は付け加えた。

本試験では、化学療法1剤以下または未治療のホルモン受容体陽性の進行または転移性乳がん患者1,147人に14日間フルベストラント500 mgを投与(*監修 者注:14日後のフルベストラント2回目の投与からbuparlisibを併用したという意味)し、その後、100 mg/日のブパルリシブまたはプラセボの経口投与どちらかに1:1の割合でランダムに割り付けた。フルベストラント500 mgの投与は全患者で継続した。ランダム化割付ではPI3K経路の状態により層別化し、587人の患者において、試験参加時に血中循環腫瘍DNA(ctDNA)中のPIK3CA変異の状態が評価された。

試験の患者集団全体において、フルベストラント単独群の無増悪生存期間は5カ月であり、ブパルリシブ+フルベストラント群では6.9カ月であった(HR 0.78; P値 <0.001)。ctDNA中にPIK3CA変異を認める患者集団では、フルベストラント単独投与を受けた患者と比較して、ブパルリシブ+フルベストラント投与を受けた患者の転帰ははるかに良好であり、フルベストラント単独の無増悪生存期間は3.2カ月、ブパルリシブ+フルベストラントは7カ月であった(HR 0.56; P値 <0.001)。

「私たちはPI3K経路の阻害が内分泌療法抵抗性乳がん患者に対する有望な治療選択肢になることを初めて示しました」とBaselga氏は述べた。

Baselga氏によると、ブパルリシブを投与された患者の最大25%で、高血糖、肝障害マーカーの増加などの重篤な有害事象が見られた。「PI3Kは細胞が正常に機能のために重要な経路であるので、当然予想されるように、ブパルリシブの副作用は多くなります」と彼は述べた。

本試験はNovartis社より資金提供を受けた。Baselga氏は利益相反がないことを公表している。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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