経口避妊薬の服用歴は卵巣がん患者の生存期間に影響

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ロズウェルパークがん研究所(Roswell Park Cancer Institute :RPCI)の研究によれば、卵巣がんと診断された患者のうち、経口避妊薬の服用歴があり、子どもを1人以上出産したことのある患者は、生存期間が約3年間長かった。この結果がこのほど、International Journal of Gynecological Cancer誌上の出版に先立ち、電子版で公表された。

「卵巣がんは女性の死因第5位である。早期発見や分子標的療法の明らかな進歩にもかかわらず、卵巣がん患者の大半は依然として進行がんとして診断され、結局はがんにより死亡するだろう」と話すKirsten Moysich博士は、本臨床研究の第一著者であり、ロズウェルパークのがん予防管理部腫瘍学教授である。「本研究から、卵巣がん患者のうち、経口避妊薬の服用歴と、1回の生児出産経験がある患者は全生存期間が長いことがわかった」。

RPCIで1982年1月から1998年12月の間に卵巣がんと診断された女性387人において、生存期間は経口避妊薬の服用歴がない患者で46カ月であったのに対して、服用歴がある患者では81カ月であり、35カ月の改善がみられた。こうした服用歴と生存期間の関連性は、診断時の年齢、病期、卵巣がんの組織型で調整した場合、さらに明確になった。さらに、子どもを1人出産している患者は子どもを出産したことがない患者と比べて、生存期間が4年半以上長かった。しかしながら、生児出産による延命効果に関しては、経口避妊薬服用歴の有無によって有意な差はみられなかった。評価に用いた情報は、RPCI腫瘍データベースに登録された患者における治療の種類、腫瘍の進行期とグレードおよび組織型を含んでいた。さらに、これらの情報を診断時に行われていた疫学調査結果と照合した。

筆頭著者の一人であり、RPCIの婦人科腫瘍学フェローであるJ. Brian Szender医師は以下のように補足した。

「以前から経口避妊薬の服用が卵巣がんのリスクを減らす効果は実証されていたが、本研究結果はさらに経口避妊薬服用の重要性を明確にした。今後は生殖性因子と疾患発症や増悪の間にある相互作用機序を解明するように努力が向けられるべきである」。

本研究は、タイトル「Oral Contraceptive Use and Reproductive Characteristics Affect Survival in Patients With Epithelial Ovarian Cancer: A Cohort Study(上皮性卵巣がん患者における経口避妊薬の服用歴および生殖的特徴が生存期間に及ぼす影響:コホート研究)」で、journals.lww.com.から入手可能である。

本研究は米国国立がん研究所(NCI) のP30CA016056 および5T32CA108456基金からサポートを受けている。著者らの間で報告すべき利害衝突はない。


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翻訳担当者 石川寛和

監修 喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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