子宮体がん手術後の放射線治療に関するガイドラインを承認

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の子宮体がん手術後の放射線治療に関する診療ガイドラインを承認したことを発表した。

ASTROとASCOが合意した治療方法は、現時点でもっとも有効なエビデンスに基づいており、子宮体がん患者の標準とすべき内容である。このガイドラインはまた、患者の治療方針を決定するために、より詳細な研究が必要な分野を明確にしている。

「子宮体がんは、米国においてもっとも一般的な婦人科系がんであるにも関わらず、最善の治療法については多くの議論の余地があります」と、本ガイドラインを承認したASCOの専門委員会の共同代表である公衆衛生学修士で、米国産科婦人科学会のフェローでもあるLarissa A. Meyer医師は述べた。「われわれはこの承認が治療の標準化を促進し、多くの女性が最善の治療を受けられることを望んでいます」。

事前研究では、子宮体がんには多くの治療法が存在することが示された。事実、患者は、地域が違えば、異なる治療を受けるというケースが多くみられる。ASTROのガイドラインでは、術後どのタイミングでどのように放射線治療を行うかについての情報を明確にしている。

「このガイドラインの目標は、再発リスクが高く、治療が必要な患者に対する放射線療法と化学療法の併用治療の機会を拡大する一方で、再発リスクが低い患者に対して不要で、有害である可能性がある治療を減らすことである」と本ガイドラインを承認したASCOの専門委員会の共同代表であるAlexi A. Wright医師・公衆衛生学修士は述べた。「われわれは子宮体がん患者の転帰を改善しなければならない」。

ASCOの専門委員会は、ASTROのガイドラインによる推奨は明確で一貫性があり、関連する科学的なエビデンスに最大限に基づいたものであるとした。

ガイドラインの主要な推奨点:

  • 子宮筋層への浸潤がないか浸潤が50%に満たず、腫瘍がグレード1または2で、腹式子宮全摘出術を受けた患者は、リンパ節摘出の有無に関わらず放射線治療は受けないほうがいい。
  • (1)子宮筋層への浸潤が50%より多いグレード1か2の腫瘍を持つ患者、または(2)子宮筋層への浸潤が50%に満たないグレード3の腫瘍を持つ患者において、膣断端再発を防ぐために、子宮膣部内照射は骨盤部外照射と同等に有効である。
  • 現時点で入手できる最良のエビデンスによると、陽性リンパ節または子宮漿膜、卵巣・卵管、膣、膀胱、直腸浸潤のある患者に対する適切な代替治療の選択肢として、補助化学療法と同様、外照射放射線治療を含むことが示されている。

米国では出産適齢期の女性が子宮体がんと診断されるケースが増えている。この傾向は、肥満と糖尿病の有病率の増大によるものと考えられる。また、この傾向は妊娠時期が遅くなっていることと相まって、卵巣機能と妊孕性を失わせない治療の選択肢がますます注目されることにつながっている。放射線、化学療法、手術を問わず、がんの治療は妊孕性を失うことにつながり得る。ASCOが今回承認したガイドラインでは、初版では言及されていなかった妊孕性におけるがん治療の影響についても考察している。

翻訳担当者 池上 紀子

監修 河村 光栄(放射線腫瘍学・画像応用治療学/京都大学大学院医学研究科)

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