配偶者の心的状態はがんサバイバーの健康QOLに影響を与える可能性がある

サバイバーシッププログラムへの配偶者ケアの組み入れが転帰を向上させる可能性がある

 フィラデルフィア-米国がん学会誌のCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに発表された研究によると、配偶者が抑うつ状態を報告したがんサバイバーは、約1年後に抑うつ状態となる可能性が高い。 一方で、配偶者が良好な『健康関連の生活の質(HRQoL:health-related quality of life )』(以下、健康関連QOL)を報告したがんサバイバーは、約1年後に抑うつ状態になる可能性が低い。

 「米国のがんサバイバーは1,450万人と推定されます。 家族、特に配偶者は、病院受診時の付き添い、介助、経済的責任の共有など、多様な支援を施すことが多いです。
がんサバイバーとその家族が互いにどのように影響し合うかを理解することにより、がんサバイバーが受けるすべての医療ケア、そして健康と幸福感という観点でのそれらの転帰を向上させるための方向性を見いだすことができます」と、メリーランド州ベセスダにある国立がん研究所(NCI)行動研究プログラムのがん予防特別研究員、Kristin Litzelman博士は述べた。

これまでの研究では、がんサバイバーの抑うつ状態は、治療遵守の低下、若年死などの健康における転帰不良と関連性があることが示されている」とLitzelmanは説明した。

 Litzelmanらは、Medical Expenditures Panel Surveyより、910人のがん患者とその配偶者のデータを用いた。また、統計モデルを用いて、ある時点におけるがんサバイバーの配偶者の生活の質、あるいは抑うつ状態と、約11カ月後、その配偶者であるがんサバイバーが抑うつ状態を呈するリスクとの関連性を調べた。さらに、がんのカップルにみられた関連性が、がんに罹患していない一般集団には見られずがんを患う夫婦特有のものであることを確認するため、がん関連の健康問題が一切ない910組の対照群をも調査した。

がんサバイバーが過去に報告した心的状態、人口統計学的特性、その他の要因を考慮に入れても、配偶者が抑うつ状態を報告した場合、がんサバイバーが11カ月後に抑うつ状態を報告する可能性は4倍高いことが示された。この関連性は、特に妻ががんに罹患したカップルで強かった。配偶者が良好な健康関連QOLを報告したがんサバイバーでは、11カ月後に抑うつ状態を呈するリスクが30%減少した。

 また、がんサバイバーの心的状態は、後日配偶者が抑うつ気分を呈するリスクにそれほど影響を与えてはいなかったことを確認した。さらに、がんに関連する健康問題のないカップルには、これらの関連性が認められなかった。

 「われわれは、この研究で、配偶者ががんサバイバーに与える影響は、がんサバイバーが配偶者に与える影響よりもはるかに大きかったということに驚きました。 さらに相互関係が確認されることを期待します。この研究結果は、他の研究で裏づけられる必要性が確かにあるものの、がんサバイバーの転帰における家族の幸福感の重要性を強調するものです」。

 「われわれの研究では、配偶者が自身の利益のためだけでなく、がんサバイバーの利益のためにも、自身を大切にする必要があることを強調します」とLitzelmanは述べた。 「またわれわれの研究結果は、臨床医ががんサバイバーを治療する際に、配偶者の介護者の幸福感についても評価したくなる可能性を示唆するものです。今後の調査でがん治療後ケアプランに介護者を含めるか否かを検証ができれば、介護者とがんサバイバー双方の転帰向上に役立つかもしれない」とLitzelmanは述べた。

 本研究は、NCIのがん予防フェローシッププログラムから資金提供を受けた。この報告での調査結果や結論は、著者らのものであり、NCIの公的見解を示すものではない。
Litzelmanは利益相反がないことを宣言する。

翻訳担当者 近藤あゆ美

監修 太田真弓(精神科、児童精神科/さいとうクリニック院長)

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