血中循環腫瘍DNAが、最も頻度の高いタイプのリンパ腫(DLBCL)の再発を予測できる可能性

米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース

原文掲載日 :2015年4月1日

血中循環腫瘍DNA (ctDNA)の測定が、治癒可能なタイプのがんであるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の再発を検出するのに有用な可能性がある。現在、疾患の標準的評価法はコンピュータ断層撮影(CT)検査であるが、本試験ではctDNAの測定により、CT検査で検出される前の顕微鏡的疾患を大半の患者で検出することが出来た。

血液検査で再発をモニタリングすることで、放射線への曝露量の増加と医療費増大につながる多数回にわたるCT検査の必要性を減少させる可能性がある。また、より早期に再発をモニタリングする能力が向上することで、再発診断時の治療効果の向上も期待出来る。本研究は、米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)で実施され、2015年4月2日付のLancet Oncology誌に掲載された。

DLBCLは通常、治癒可能であるが、治療が奏効しなかった場合の長期予後は不良である。現在、治療中と治療後のモニタリングには、CTまたはポジトロン放出断層撮影(PET)による中間検査での画像検査が利用されているが、結果は不明確な場合が多い。また、繰り返し放射線に曝露されるため健康リスクの可能性もあり、検査が経済的負担にもなる。DLBCLの再発は、画像検査で検出されるレベルに満たない遺残病変が原因で起こる可能性が最も高く、再発の可能性をより正確に評価することが求められた。

NCIがん研究センターのWyndham Wilson 医学博士を筆頭とした試験責任医師は、126人のDLBCL患者を対象にctDNA 検出を目的とした血清分析を実施した。血清中のctDNA検出には、高度なシークエンシング法により遺伝子断片を評価する定量法が用いられた。

対象となった全患者が1993年5月から2013年6月の間に実施された臨床試験において生物学的製剤リツキシマブの併用または非併用下で、EPOCH療法(エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン)を受けた。血清検体は、治療開始前、治療期間中、および治療終了後何年にもわたり採取された。また、血液検査と同時にCT検査も標準的な再発モニタリングの一貫として実施された。試験治療終了後、中央値11年間に渡り患者に追跡調査が行われた。

本試験の結果、完全寛解を得た患者107人の内、モニタリング中に検出可能なctDNAを有した患者が疾患進行を認める確率は、検出可能なctDNAを認めなかった患者と比較して200倍以上であった。また、ctDNAの測定により、疾患の臨床的なエビデンスを得る中央値3.5カ月前にがんの再発を検出することが可能であったことも判明した。

さらにctDNAの測定により、治療に反応しないであろう患者を治療途中に予測するといういわゆる中間モニタリングという手法として、第2サイクルという早い時点で予測することが出来た。Wilson医師は次のように述べた。「試験の結果から、中間測定で検出されるctDNAは、治療に反応しない可能性の高い患者を特定するための有望なバイオマーカーであると言えます」。

リンパ腫は感染防御細胞の産生が行われるリンパ系に発生するがんの1つであり、DLBCLは、そのリンパ腫の最も頻度の高いタイプのがんである。DLBCLを有する患者のほとんどは、初期治療後に病変が検出されなくなるが、再発の可能性があるため、現行では最初に寛解を得てから最長で5年間CTによる画像検査が定期的に行われている。しかしながら、40%に及ぶ患者が再発する。一旦再発すると、特に早期進行を認めたり、血中に有意な水準の腫瘍細胞を有した患者の場合、疾患は難治性である場合が多い。

「本試験では1人につき中央値11回のCTによる画像検査を実施しましたが、それほど検査を頻繁に行っても、早期の疾患検出は不十分な結果でした。実際、最近実施された試験でCT検査による調査の有用性は、患者の最新の病歴や身体的診察によるものと差がない可能性があることが示されており、より効果的なモニタリング技術の必要性を裏づけています」とWilson医師は述べた。

本試験ではPETは実施されなかったが、本試験の研究者は、今後の臨床試験でctDNAの中間モニタリングとPETの結果の比較を行うことに興味を示している。また、新たに診断されたDLBCL患者に対するctDNAによる早期の疾患検出は、分子レベルで治療への反応をモニタリングしながら新規分子標的薬の検証を行うためのバイオマーカーとして利用できる可能性があることも示唆された。

原文

翻訳担当者 三枝紅音 

監修 吉原哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)

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