タンパク質阻害剤INCB039110は骨髄線維症に有効である可能性

キャンサーコンサルタンツ

ヤヌスキナーゼ(JAK)1阻害剤であるINCB039110は骨髄線維症患者の症状を改善すると思われることが、第2相臨床試験の早期分析で明らかになった。この知見は、2014年12月6~9日カリフォルニア州サンフランシスコで開催された第56回米国血液学会年次総会で発表された。

骨髄線維症は、骨髄増殖性腫瘍として知られる血液がんの一種である。血球を生成する骨髄細胞の形成異常と機能異常を伴い、骨髄内で瘢痕組織を形成する。骨髄線維症は貧血、脾臓や肝臓の肥大、疲労などの問題を引き起こしうる。骨髄線維症患者の中には、急性骨髄性白血病に進行する人もいる。

JAK1やJAK2として知られるタンパク質は、異常な数の血球を生成させることによって、骨髄線維症を含む骨髄増殖性腫瘍(MPN)の発生に関与するとみられる。JAK1やJAK2を抑制する薬剤は、これらの疾患に伴う異常な血球数を減らすことでさまざまなMPNの治療に使用される。しかし、JAK1/JAK2阻害剤は、骨髄の血球産生の過度な抑制、すなわち骨髄抑制につながることがあり、患者の健康と生活の質に悪影響を及ぼしかねない。

臨床試験薬INCB039110は、(JAK1/JAK2両方ではなく)JAK1のみを標的として抑制する。JAK1を単独で抑制する目的は、骨髄抑制を抑えて骨髄線維症の症状を改善することにある。

INCB039110の第2相臨床試験の研究者らはこのほど、3カ月分析および6カ月分析結果を発表した。その試験は、骨髄線維症を含むさまざまな種類のMPN患者を対象とした。

参加者は毎日、骨髄線維症の症状の程度を評価する用紙に記入した。MPNの疾患活動性の指標となる脾臓の大きさを試験開始時、3カ月後、6カ月後に測定した。試験開始から3カ月後のチェックポイントまでにおける症状(寝汗、かゆみ、腹部不快感、左肋骨痛、早期満腹、骨・筋肉痛など)の50%以上軽減を主要評価項目とした。6カ月時点での症状軽減ならびにINCB039110の安全性についても観察した。

87人の試験参加者は、それぞれ異なる用量のINCB039110を服用する以下の3群に分けられた。100 mgを1日2回(10人)、200 mgを1日2回(45人)、600 mgを1日1回(32人)で服用する3群である。

症状は全般的に、200 mg群と600 mg群で同じように改善した。脾臓の大きさもこれら2群でやや縮小した。

6カ月後、過度の骨髄抑制傾向はなかった。ヘモグロビン(酸素を運搬する赤血球中のタンパク質)の値は、輸血を必要としない200 mg群と600 mg群の患者でそれぞれ5.6%、8.6%上昇した。

最もよくみられる血液関連でない有害事象は、軽度から中等度の傾向にあり、疲労、悪心、上気道感染、便秘、下痢、咳が含まれていた。患者の33%で貧血が新たに発症または悪化し、24%で中等度の血小板減少症(血小板数の低下)が発症した。

今回の知見によると、JAK1阻害剤INCB039110による治療は、骨髄線維症患者の症状を改善するとともに、脾臓の大きさを適度に縮小できる。INCB039110はまた、6カ月間にわたって過剰レベルの骨髄抑制を生じさせることなく奏効するとみられる。これらの結果は、JAK1阻害剤がJAK1/JAK2阻害剤に関連した合併症である骨髄抑制なしに骨髄線維症の症状を治療できる可能性を示している。

参考文献:
Mascarenhas JO, Talpaz M, Gupta V, et al. Primary Analysis Results from an Open-Label Phase II Study of INCB039110, a Selective JAK1 Inhibitor, in Patients with Myelofibrosis. Program and Abstracts of the 56th American Hematological Society Annual Meeting and Exposition; December 6–9, 2014; San Francisco, California. Abstract 714.Breast Cancer Symposium, December 9-13, 2014. San Antonio, Texas. Abstract S1-09.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 林 正樹 (血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

その他の血液腫瘍に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
FDAが造血器腫瘍における好中球回復期間の短縮と感染症の低減にomidubicelを承認の画像

FDAが造血器腫瘍における好中球回復期間の短縮と感染症の低減にomidubicelを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年4月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、骨髄破壊的前処置後に臍帯血移植が予定されている造血器腫瘍の成人および小児患者(12歳以上)に対して、好中球...
固形腫瘍の化学療法後にまれな血液腫瘍の発症リスクが上昇の画像

固形腫瘍の化学療法後にまれな血液腫瘍の発症リスクが上昇

NCIプレスリリース 2000~2014年の間に化学療法を受けたほぼ全種の固形腫瘍患者は、治療関連骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病(tMDS/AML)を発症するリスクが上昇した、と米国国立がん研究所(NCI)の研究者らは新研究の知見で示し
FDAが血球貪食性リンパ組織球症にemapalumabを承認の画像

FDAが血球貪食性リンパ組織球症にemapalumabを承認

2018年11月20日、米国食品医薬品局(FDA)は、成人および小児(新生児以上)の原発性血球貪食性リンパ組織球症(HLH)患者で難治性、再発、もしくは進行性の疾患を有する患者、または従来のHLH治療法に不耐性を示す患者に対してemapal