腫瘍ボード会議への腫瘍医の参加は肺癌または大腸癌患者の予後改善と関連がある可能性

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

最近行われた患者約5,000人と腫瘍医約1,600人による地域住民対象の研究で、週1回定例の腫瘍ボード(Tumor Board)会議への医師の参加は、ステージIV大腸癌およびステージIV・進展型小細胞肺癌(その他の癌のサブタイプおよびステージは含まれない)患者の生存率の改善と関連性があることが判明した。さらに、担当医師が週1回定例の腫瘍ボード会議に参加している患者は、腫瘍ボード会議に参加する回数がより少ない医師の患者と比べて臨床試験に登録する割合が高く、また、医師が週1回定例の腫瘍ボード会議に参加している早期の非小細胞肺癌患者は根治目的の手術を受ける割合が高かった。これらの結果はまだ予備的な段階である一方、腫瘍ボード会議の重要性を強調し、今後の研究への重要な基盤となるものである。

腫瘍ボードは、医師(外科医、腫瘍医、および放射線腫瘍医)と癌医療を提供するその他の医療従事者との間の会議である。腫瘍ボードは、一般に、困難な症例について討論し、また各患者ごとの治療計画を容易にするという役割を果たす。腫瘍ボードは出席者への教育セッションとしてのみ行われることもある。腫瘍ボードは一般化しているが、本研究以前には、様々な医療提供体系において腫瘍ボードがどのような構造をなしているかについてほとんど研究がなされていなかった。

「医師の腫瘍ボードへの出席と予後の改善との間に関連性があることが本研究で判明した疾患のサブタイプを有する患者は、ご自身の症例が複数の診療科医が参加する会議でレビューされるかどうかを担当医師に尋ねてみてもよいでしょう」と本研究の主著者でヒューストンにあるテキサス大学MDアンダーソン・がんセンターの癌医療部門の研究員であるKenneth L. Kehl医師は述べた。「しかし、本研究はランダム化研究ではなく、また、全体の腫瘍ボードと患者の生存率との間では関連性はほとんどなかったため、われわれの結果は、腫瘍ボードへの医師の参加が患者の予後に直接影響を与えるということを決定的に証明できるものではありません」。

研究者らは、4,620人の肺癌または大腸癌の患者およびその医師について調査を行った。本研究に参加した1,601人の医師は、単一医師診療からグループ診療まで、地域病院から大学病院までなど、様々な医療システム体系において従事していた。調査で医師に質問した内容は、腫瘍ボード会議に参加しているか、またその頻度、ならびに会議の目的と適用範囲であった。患者には、医療提供者との間のコミュニケーションについて質問した。患者の医療記録を精査して、腫瘍ボードと患者の臨床試験への登録との関連性、根治目的の治療を受けたか、患者から報告された診療の質、また生存率を評価した。

全体的に、腫瘍ボードの参加率は高かった。癌医療提供者の96%が定期的に、54%が週1回、何らかの腫瘍ボード会議に参加していた。ほとんど(82%)の腫瘍ボード会議は、治療前の治療計画を立てる機能を果たし、教育セッションとして行われる場合は12%のみであった。腫瘍ボード会議の大多数(87%)は、概して様々な癌種を検討していたが、半数以上(59%)は困難な症例のみを検討していた。

本研究において、患者の予後と各腫瘍ボードの特徴や会議の頻度との間にあるいくつかの関連性を特定した。医師が少なくとも週1回の定例腫瘍ボード会議に参加している場合、それより頻度が少ない場合と比べ、進展型小細胞肺癌の患者およびステージIV大腸癌の患者の生存率がより良好であった。反対に、担当医師が教育セッションとしてのみ機能する腫瘍ボードに参加している小細胞肺癌の患者は、生存率がわずかに悪化した。

他の医師や患者の特性とで調整を図った後、担当医師が週1回定例の腫瘍ボード会議に参加している患者は、頻度がそれ以下や全く参加していない医師の患者に比べて、臨床試験に登録する確立が推定60%高かった。
このことは、臨床試験に適した患者の特定が腫瘍ボードの重要な機能となる可能性を示唆している。

腫瘍ボードへの医師の参加は、ガイドラインに遵守した治療を患者が受けることとも関連性があった。
ステージIまたはステージIIの非小細胞肺癌患者については、担当医師が週1回定例の腫瘍ボード会議に参加し、またその会議内容に治療方針決定の検討が含まれている場合、根治目的の手術を受ける割合が高かった一方、担当医師が腫瘍ボードで様々な部位の癌を検討している場合、根治目的の手術を受ける割合がより低かった。

翻訳担当者 星野 恭子

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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