ソラフェニブのFDA承認

商標名:Nexaver®

甲状腺癌への承認(2013/11/22)
肝臓癌への承認(2007/11/16)
腎臓癌への承認(2005/12/20)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

甲状腺癌
米国食品医薬品局(FDA)は、2013年11月22日、放射性ヨード療法に抵抗性の進行期分化型甲状腺癌(DTC)の局所再発または転移の治療に対して、ソラフェニブ(ネクサバール錠、Bayer Healthcare Pharmaceuticals Inc.社製およびOnyx社共同販売)を承認しました。ソラフェニブはすでに腎細胞癌(2005年)および肝細胞癌(2007年)の治療薬として承認されています。

現在の承認は、417名の放射性ヨード療法に抵抗性の進行期DTCの局所再発または転移をともなった患者において実施された、多施設共同二重盲検プラセボ対照試験の結果に基づいています。患者の内訳は乳頭癌(57%)濾胞癌(25%)未分化癌(10%)である。96%の患者に転移が認められました。(肺86%、リンパ節51%、および骨27%)

約半分の患者が男性で、平均年齢63歳、68%が放射性ヨード(RAI)を取り込みませんでした。そして34%は少なくとも600mCiの蓄積量のRAIを受けました。試験開始前に投与された蓄積RAI活性の中央値は400mCiでした。

患者はソラフェニブ400㎎1日2回経口投与または同用法のプラセボを無作為に割り付けられました(1対1)。試験は盲検化で独立した放射線医学の報告によって評価されたことから、無増悪生存期間(PFS)における延長を実証しました。PFSの中央値は、ソラフェニブの投与を受けた患者は10.8カ月、プラセボの投与を受けた患者は5.8カ月でした。[HR 0.59(95% CI: 0.46, 0.76, p<0.001)]奏効率は、ソラフェニブの投与を受けた患者が12%だったのに対して、プラセボの投与を受けた患者が1%でした。完全奏効の患者はみられませんでした。試験責任医師による疾患進行の診断にしたがって、次のように、157人(75%)の患者がプラセボとオープンラベルのソラフェニブの交差投与を無作為に割り付けられました。33%の患者が亡くなった後で実施した解析で、プラセボ投与を受けた患者と比較して、ソラフェニブの投与を受けた患者の全生存期間は統計学的に有意ではありませんでした。[HR 0.88 (95 % CI: 0.63, 1.24, p=0.47)]

66%のソラフェニブの投与を受けた患者は有害事象のために中断し、そのうち64%は減量しました。有害事象のための治療中止は14%のソラフェニブの投与を受けた患者と1.4%のプラセボの投与を受けた患者で報告されています。

もっとも多くみられた(10%以上)有害事象は手足皮膚反応、下痢、脱毛、体重減少、高血圧、発疹、食欲不振、胃炎、悪心、掻痒感、腹痛が含まれる。その他重大な有害事象には皮膚扁平上皮癌(3%)および低カルシウム血症(36%)が含まれます。

適切な甲状腺機能の抑制状態[99%のベースラインの甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが0.5 mU/L未満]にある患者の中で、0.5 mU/Lより高いTSHレベルの上昇が、プラセボの投与を受けた患者16%と比較して、ソラフェニブの投与を受けた患者41%で観察されました。適切な甲状腺機能の抑制状態が維持できなくなるまでの時間の中央値は、ソラフェニブ治療群(範囲、1~12カ月)で4.6カ月でした。甲状腺代替療法中にTSH値の上昇が起こった場合は、再度甲状腺機能の抑制が必要でした。不十分なTSHの抑制は甲状腺癌を進行させる可能性がある為、THS値は毎月モニターし、甲状腺代替療法は調整されるべきです。

ソラフェニブの推奨用法と用量は400㎎(200㎎錠2錠)を空腹時(少なくとも食事1時間前または食後2時間後)で1日2回投与です。

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木水友子 訳
高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)監修 
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肝臓癌への承認
2007年11月16日、FDAは肝臓癌の一種である切除不能な肝細胞癌(HCC)患者に対する治療として、RafキナーゼおよびVEGF受容体キナーゼを阻害する分子標的薬、ソラフェニブトシル酸塩(ネクサバール錠®、バイエル薬品株式会社製造)を承認しました。

今回の承認は、生検で診断されている切除不能肝細胞癌を有する患者に対して国際的に多施設共同で行われたランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果に基づくものでした。主要評価項目は全生存期間でした。合計602人の患者を無作為化し、ソラフェニブ群(400mg、1日2回)に299人、対応するプラセボ群に303人を割り当てました。

被験者背景およびベースラインの疾患特性は、ソラフェニブ群とプラセボ群のいずれも同様でした。前治療は、外科切除(20%)、局所治療(ラジオ波焼灼術、経皮的エタノール注入療法、肝動脈塞栓療法など40%)、放射線療法(5%)、全身治療(4%)などでした。

試験は、事前に定められた第2回中間解析で、ソラフェニブ群において統計学的に有意な生存期間の延長が認められたため有効中止となりました[中央値10.7対7.9カ月、HR:0.69(95%CI:0.55、0.87)、p=0.00058]。第三者画像判定で得られた腫瘍増悪までの期間(無増悪期間:TTP)の最終解析が時期を早めて行われ、ソラフェニブ群で統計学的に有意にTTPの改善が示されました[中央値5.5対2.8カ月、HR:0.58(95%CI:0.45、0.74)、p=0.000007]。

ソラフェニブに伴うとみられる副作用でもっとも頻度が高かったもの(20%以上)は、疲労、体重減少、発疹/落屑、手足の皮膚反応、脱毛症、下痢、食欲不振、悪心、腹痛でした。下痢は、ソラフェニブ群患者の55%で報告されました(10%がグレード3)。また,ソラフェニブに伴う皮膚有害反応でもっとも頻度の高かったものは、手足症候群(全体で21%、グレード3が8%)および発疹(全体で19%、グレード3が1%)でした。

ソラフェニブ群患者の2.7%に心筋虚血または心筋梗塞が報告されました(プラセボ群は1.3%)。治療中に発現した高血圧はソラフェニブ群患者の9%で報告されました(プラセボ群4%)。グレード3の高血圧は、ソラフェニブ群患者の4%に報告されました(プラセボ群1%)。血清リパーゼ値の上昇がソラフェニブ群患者の40%にみられ(プラセボ群37%)、低リン血症がソラフェニブ群患者の35%に認められました(プラセボ群11%)。

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Snowberry 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修 
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腎臓癌への承認
2005年12月20日、米国食品医薬品局は、腎臓癌の一種である進行性腎細胞癌(RCC)患者の治療としてソラフェニブを承認しました。

この適応症は、大規模、多国籍、無作為プラセボ比較二重盲検第3相試験と補助的な第2相試験において、無増悪生存期間(PFS)の改善が証明されたことを基にしています。第3相試験の全生存の結果は、現段階では予備的なものです。

そのソラフェニブ第3相試験は、1種類の全身療法後の進行(切除不能または転移がある)腎細胞癌の患者を対象に実施されました。試験の適格者は、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group、米国東海岸癌臨床試験グループ)スケールの一般状態(PS)が、0または1であり、MSKCC(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、メモリアル・スローンケタリング癌センター)が基準とするRCC予後のリスク・カテゴリーが低いかまたは中等度の患者でした。

脳転移のある患者や、MSKCCのリスク・スコアが高度である患者、あるいは重症の心疾患のある患者は試験から除外されました。試験のエンドポイントは、全生存期間、無増悪生存期間と奏効率でした。

無作為化された769人中、年齢の中央値は59歳で70パーセントが男性でした。PSとMSKCC予後のリスク・カテゴリーに関しては、両群においてほぼ同じ患者数でした。投与前の患者の背景と病態特徴は程良くバランスが取れていました。前治療に関して、93パーセントは腎摘出歴があり、99パーセントはインターロイキン-2(44パーセント)とインターフェロン(68パーセント)を含む全身療法の治療歴がありました。

PFS(無作為化時点から増悪まで、または何らかの原因による死亡まで)、増悪および奏効率は、独立の盲検化された放射線学的検討を経て判断されました。PFSの中央値は、ソラフェニブ群で167日であったのに対し、プラセボ対照群では84日でした(HR 0.44、HRの95%CI:0.35 – 0.55, logrank p < 0.000001)。結果は、MSKCC予後のリスク・カテゴリー、ECOG PS、年齢、あるいは前治療に関係なく同様でした。

増悪までの期間も、同様に改善されました。抗腫瘍効果は、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、固形癌の治療効果判定のための基準)基準により独立の盲検化された放射線学的検討により判断されました。全体として、抗腫瘍効果が評価可能であった672人中、ソラフェニブ群で7人(2パーセント)、プラセボ群で0人(0パーセント)において部分奏効が認められました。

ソラフェニブの毒性としては(アップデートされた902人の第3相試験データベースに基づく)、40パーセントで可逆的な皮疹、30パーセントで手足皮膚反応等が見られました。43パーセントで下痢、17パーセントで治療中に生じた高血圧、13パーセントで感覚神経障害の報告がありました。

ソラフェニブ群では脱毛、口内炎と出血がより多く報告されました。治療中に生じた心虚血/心筋梗塞のイベントの発現率は、プラセボ群(0.4パーセント)と比較してソラフェニブ群(2.9パーセント)でより高率でした。グレード3とグレード4の副作用の報告はまれで、ソラフェニブ群で5パーセント以上の頻度で手足皮膚反応が発現したのみでした。

臨床検査値に関しては、無症候性低リン酸血症がソラフェニブ群で45パーセントに認められたのに対し、プラセボ群では12パーセントに認められました。血清リパーゼ上昇がソラフェニブ群で41パーセントに認められたのに対し、プラセボ群では30パーセントに認められました。ソラフェニブ群で2人のグレード4の膵炎の報告がありましたが、2人ともその後ソラフェニブを再開し、1人では全量投与できました。

特にソラフェニブ投与開始から6週間の間、頻回に血圧をモニタリングし管理することの重要性と、ソラフェニブ療法による臨床検査値の異常変化を医師は意識する必要があります。

推奨投与量は、400mg(200mg錠を2錠)一日2回、食事の1時間前または食事の2時間後に服用します。有害事象は、投与の一時中止、一日1回400mgへの減量または一日400mgの隔日投与により対処可能でした。

ソラフェニブは、CYP3A4とUGT1A9経路を経て主に肝臓で代謝されます。ソラフェニブはUGT1A1の阻害剤です。

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湖月みき 訳
島村義樹(薬学)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

原文掲載日 

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