予防的対側乳房切除術の考慮に影響を与えている要因が調査により明らかに

乳癌の予防、検診、治療における発展ー2014年乳癌シンポジウム主要研究ハイライト
(折畳記事)

*この要約には抄録にない最新データが記載されています

専門家の見解:
「生存率は同等であるにもかかわらず、乳房温存手術+放射線治療よりも両胸の乳房切断手術を選択するケースが新たに乳癌と診断された患者の間で増加傾向にあるのです」当シンポジウムのニュース計画チームのメンバーであるJulie Margenthaler 医師はこのように述べた。

「患者さんがこの深刻な決定に至る原因の多くは不安度が高いことや再発を心配することにあります。これらはもっともな不安要素ですが、私たちは腫瘍専門の医師として、患者一人ひとりの将来のリスクと向き合い、ベストな選択肢を導いていく必要があるのです」。

新たに乳癌と診断された患者150人を対象とした調査によると、癌の影響のない方を含めた両側乳房を切除する手術である予防的対側乳房切除術(CPM)を受けることが患者の選択肢の間で高い影響力をもたらしてきていることが明らかになっている。この調査は患者が手術の手続きを踏む前に、先を見越して彼女たちの選択に目を向けた初めての試みの中の一環である。調査結果によると不安度の高い患者や乳癌の再発や生存に対して知識の少ない患者ほど予防的対側乳房切除術を選択しやすい傾向にあることが示されている。

「簡単に患者を刺激しうる乳癌についての情報が多く溢れています。医者として、われわれは患者一人ひとりの知識レベルを知り彼女たちの抱く懸念点や心配事に気を配る必要があります」と、NorthShore大学Evanston校、Illinois校、乳癌手術プログラムの指揮官であり、シカゴ大学、pritzker school of medicineの特任教授であるKatharine A. Yao医師は述べた。

「そしてわれわれは、反対の乳房に癌が転移する可能性は実際には低いことや、どのタイプの手術を受けたからといって体のどの場所にも癌が再発する可能性のあることを患者に示していく必要があります」。

2大病院でどの手術(乳腺腫瘤摘出術、片側乳房切断術または予防的対側乳房切除術を受けるか決断済みの患者150人を対象としたアンケートが実際の手術の手続き前に実施された。質問項目は乳癌の生存や再発に対する知識、一般的な不安度や憂鬱度、手術の選択方法などを診断する55項目で構成されている。

概して、患者の59%が乳房温存術を、32%が片側乳房切断術を、9%が予防的対側乳房切除術を選択した。意思決定期間中に24%の患者が両側乳房切除術の選択を好まない、または考慮しないとし、11%が選択肢から除外をしていたが、いずれの群に属する患者も実際に予防的対側乳房切除術を選択しなかった。83人(58%)が予防的対側乳房切除術を受けることを考慮しており、このうちの12人(21%)が実際に予防的対側乳房切除術を選択した。

とりわけ予防的対側乳房切除術を選択した患者は乳癌に対する知識が少なく、予防的対側乳房切除術の選択を好まない、または考慮しないとした患者の47%と比較して、68%もの患者が予防的対側乳房切除術は再発のリスクを軽減できるだろうという誤った考え方をしていた。

さらに予防的対側乳房切除術を考慮した患者は、自分たちの乳癌リスクは平均よりも高いと感じており(24%対12%)、他箇所への転移をひどく心配する傾向にあり(43%対11%)、また配偶者やパートナーが手術後の自身の身体の変貌に対してどう感じるかをとてもあるいはひどく心配する傾向にある(19%対0%)ということが報告された。

調査結果によると、他の興味深い視点として、58人(39%)が乳癌と診断される前から自らの手術の選択肢を決定していたという。手続き後6カ月間は患者の身体及び精神の回復、不安の度合い、そして手術の決断に対する満足度を診断するためのフォロー調査が計画されている。また研究者たちは、双方向の意思決定補助や乳癌手術に関する心配事や選択肢について医師に相談できるようにする教育資材を開発中である。

本リサーチはNorthShore大学Evanston校およびGlenbrook校の補助機関によるBreast and Ovarian Research Pilot Award fundedの支援による。

翻訳担当者 佐藤公美

監修 原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター)

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