新たな抗癌剤TAS-102は進行性大腸癌患者の生存期間を延長する

キャンサーコンサルタンツ

新たな配合剤TAS-102は、標準治療が奏効しない転移性大腸癌患者において、全生存期間を延長するという研究結果がこのほど報告された。この研究結果は先日、スペインのバルセロナで開催された欧州腫瘍学会(ESMO)第16回世界消化器癌会議で報告された。

アメリカ癌協会の推定によると、米国では2013年に10万2千人以上が新たに大腸癌と診断され、約4万人が新たに直腸癌と診断されている。また、5万人以上がこれらの病気が原因で死亡した。しかしながら、米国内の大腸癌に関して明るいニュースもある。大腸癌による死亡率は過去15年間下がっており、検診、予防および治療の技術が継続的に進歩しているということである。残念ながら、初期治療が奏効せず、転移性の癌へ進行してしまう患者が多数いる。転移性大腸癌の転帰の改善には、薬剤の継続的開発が必要である。

TAS-102はトリフルリジン(FTD)とチピラシル塩酸塩(TPI)を成分とする新しい抗癌剤である。TAS-102の有効成分であるFTDは、癌DNAへ直接取り込まれ、DNAの機能障害を引き起こす。しかしながら、FTDは経口摂取すると、大部分が不活性な形に分解されてしまう。TPIはこのFTD分解を防ぐ。すでに報告されているTAS-102第2相臨床試験では、治療が奏効しない転移性大腸癌の日本人患者において全生存期間の延長が認められている。

今回のRECOURSE試験は、13か国で実施された国際共同第3相臨床試験である。試験は、KRAS野生型腫瘍など、あらゆる標準治療が奏効しない転移性大腸癌患者を対象とした。患者はTAS-102(534人)、プラセボ(266人)のいずれかによる治療を受け、直接比較をした。

研究の結果、全生存期間中央値はTAS-102投与群7.1カ月、プラセボ投与群5.3カ月であり、TAS-102により全生存期間が延長したことがわかった。TAS-102は、無増悪生存期間も延長した。もっとも多い副作用は好中球減少症であったが、おおむね忍容性は良好であった。

参考文献:
1. Yoshino T, Mayer R, Falcone A, et al. Results of a multicenter, randomised, double-blind, phase III study of TAS-102 vs. placebo, with best supportive care (BSC), in patients with metastatic colorectal cancer (mCRC) refractory to standard therapies (RECOURSE). Ann Oncol 2014 Jun; 25(Suppl 2):1-117.
2. Cancer Facts and Figures http://www.cancer.org/acs/groups/content/@epidemiologysurveilance/documents/document/acspc-036845.pdf Accessed March 2014.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 木水友子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望の画像

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望

研究者らは、TP53遺伝子に変異があるがん細胞を選択的に殺す薬剤組み合わせを特定した。その遺伝子変異は、大半の大腸がんや膵臓がんなど、あらゆるがん種の半数以上にみられる。

NCIが一部資...
大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連の画像

大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連

フレッドハッチンソンがん研究センターNature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に...
大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性の画像

大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ転移が始まった大腸がんに対する手術の後、多くの人はそのまま化学療法を受ける。この術後(アジュバント)治療の背景にある考え方は、がんが体内の他...
認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足の画像

認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足

オハイオ州立大学総合がんセンター仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増...