ALK陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)にセリチニブが高い効果

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治験薬ceritinib[セリチニブ](LDK378)はALK陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に高い効果を示すという試験結果が、New England Journal of Medicine誌に発表された。

肺癌は、米国および世界で癌の死因の第一位である。NSCLCの7%までが未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子の異常を有する。この異常を有する肺癌は、一般的には非喫煙者で生じる。この異常な遺伝子は癌細胞の発生や増殖に関与している。

クリゾチニブ(ザーコリ)はALK遺伝子によって産生されたタンパク質を阻害する経口分子標的薬であり、変異遺伝子によって産生された酵素と結合し、その作用を阻害することによって効果を示す。クリゾチニブは、ALK陽性の進行NSCLCに対する標準治療となっているが、大多数の患者に耐性が生じ、その場合は治療の選択肢はほとんど残されていない。

セリチニブは、初期の臨床試験で有望視されている高選択性ALK阻害剤であり、実際に、クリゾチニブよりも高い抗腫瘍効果を示している。セリチニブはまだ、臨床試験以外の治療においてはFDAの承認を受けていない。

研究者らは二段階からなる第1相試験を実施した。第1段階は用量漸増を試みる段階であり、最大耐用量を決定するためにNSCLC患者59人を組み入れ、50~750 mgの用量範囲でセリチニブを毎日投与した。

この試験では引き続き患者数を増やす段階に進み、さらに71人の患者を組み入れた(合計130人)。大多数の患者(122人)はALK陽性のNSCLCであり、クリゾチニブに耐性を示す患者やクリゾチニブ未投与患者も一部含まれた。安全性と有効性を明らかにするために患者に最大耐用量を投与した。

試験に参加した大多数の患者からはセリチニブに対する臨床効果が得られた。ALK陽性NSCLC患者の奏効率は58%であり、無増悪生存期間の中央値は7カ月であった。患者は、400 mgから最大耐用量である750 mgの用量範囲で投与を受けた。

最も頻繁にみられた有害事象は、悪心(82%)、下痢(75%)、嘔吐(65%)、疲労(47%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(35%)であった。治験薬と関連性のある重症度が3~4の主な有害事象は、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(21%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値上昇(11%)、下痢(7%)、リパーゼ値上昇(7%)であったが、これらはすべて投与の中止により回復した。この試験から得られた予備的結果は2013年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で最初に発表された。さらなるデータを蓄積するため、この試験は進行中である。

この試験結果は、今年予定されている米国食品医薬品局(FDA)へのセリチニブ承認申請のための基礎資料として用いられる。FDAはセリチニブをBreakthrough Therapy(画期的治療薬)として指定した。この制度は、臨床上重要な1つ以上の評価項目について既存薬よりも大幅な改善が証明されていれば、重篤または生命を脅かす状態を治療する薬の開発および審査を迅速に進めることを目的としている。

参考文献
Shaw AT, Kim DW, Mehra R, et al: Ceritinib in ALK-rearranged non–small-cell lung cancer. New England Journal of Medicine. 2014; 370: 1189-1197.


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翻訳担当者 清水美緒子

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)

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